鬼さんの筋肉マッチョな善行昔話
この作品は長岡更紗様主催「肉の日マッスルフェスティバル」企画参加作品です。
此処は鬼ヶ島。
そう、あの有名な「桃太郎」に出てくる鬼ヶ島です。
この間、その桃太郎たちにコテンパンにしてやられた鬼さんたち。
意気消沈して、鬼さんたちはしばらく落ち込んでいました。
自分たちは鬼なのになんて弱かったんだろう。
そして、悪行を反省して今度は良い鬼になろうとみんなが思っていました。
そんなある日。
「おい、お前らよーく聞け!」
鬼の頭がこう、鬼たちに声をかけたのです。
「お前ら、このままじゃあ鬼ヶ島の鬼が廃る。それは分かっているな?」
「だが、どうしたらいいんだ?」
赤鬼が頭の鬼に聞き返します。
「ワシらかて、このままじゃあイケナイとは思ってるぞ」
黄鬼も言います。
「もう悪さはしないと誓ったしなー」
緑の鬼も、金棒を隅へと置きながらそう言いました。
「そこでだ! 俺らの自慢といやあ何だと思う。この立派な力持ちの体じゃあないか」
頭は自慢の筋肉と力こぶを見せつけました。
おおー、とその筋肉美に歓声と拍手が鳴ります。
頭は、一番強かったからですからね。
「お前ら、だから体を鍛えろ! そして立派な筋肉の体になって桃太郎にリベンジしてやろうじゃあないか! 今度こそ良い鬼になってやるぞ!」
「成る程! いいじゃあないか!」
「桃太郎にリベンジだ!」
「やってやろうじゃあないか!」
鬼たちがすっかり頭の言葉に感心して、その場で拳を突き上げます。
「……それって全く反省してないよな」
張り切って筋トレを始める鬼たちを横目に、心優しいことでいじられている青鬼がボソッと呟きました。
それから、毎日毎日、鬼たちは頭の指示のもと走り込みをし、スクワットをし、縄跳びをして腹筋をする筋トレメニューをこなしました。
金棒は、素振りの棒に変化しました。
そんなこんなで鬼たちの体はムッキムキになって大変マッチョな鬼へとなっていきました。
暦は二月九日。
鬼たちは勇んでこの日、鬼ヶ島から船を出し、桃太郎の住む田舎へと意気揚々と向かいました。
桃太郎の住む山へと向かう道のことでした。
「た、助けてくれー」
鬼たちの耳にそんな微かな声が聞こえました。
青鬼が先頭になって、声の方に駆け付けると。
「土砂崩れで道が塞がっているぞ!」
昨日の雨の影響でしょうか、山からの土砂崩れで大きな道が塞がっていたのです。そんな道の向こうから、困った人たちの声が聞こえます。
「仕方ない。お前ら土砂や岩を退かすぞ」
鬼たちはせっせと大きな岩や土砂を手で退かしました。
筋肉が付いたムッキムキな鍛えた体には、何のこともありませんでした。
道がすっかり綺麗になると、最初はマッチョな鬼たちにびっくらこいた人々でしたがその善行に感心し、次々にお礼を口にしました。
鬼にたちは何だかひどく心がこしょばゆい気持ちになりました。
「助けてくれー!」
今度は川の方から声がしました。
またも青鬼が先頭になって声の方に駆け付けると。
川の下流に居て漁をしていた村人たちが上流を見て叫んでいます。
鉄砲水です!
泥で濁った水が勢いよく流れてくるではありませんか!
「頭!」
「分かった、やるぞ!」
鬼たちは協力して、大きな岩を川の中へと次々に放り込みます。
岩で鉄砲水の勢いを弱めるのです。
ざっばーん‼
鉄砲水の水は、岩へとぶつかり勢いを分裂させました。そして脇を流れてゆきます。
「ふー」
「助かったべ……」
「ありがとうや鬼さん、あんたたちは命の恩人じゃ」
鬼たちはまたも照れて、お互いに顔を見合わせて笑いました。
「誰か来てくれ!」
また、誰かが助けを求めているみたいです。
鬼たちは急いで声の方に駆け付けます。
「木を切り倒したのはいいんだが、運べなくて困っているんじゃ」
「どうか、力持ちそうな鬼さん。協力してけんろ」
「分かった!」
鬼たちは、もう桃太郎にリベンジするのを忘れていました。
こうして、その日から鬼たちは人々の助けをし、善行を積み重ねていったのです。
もう悪い鬼ではありません。
悪さをするなんて言わせません。
マッチョな筋肉の鬼たちはみんなの新たなヒーローでした。
お読み下さり本当にありがとうございました!
挿し絵は茂木 多弥様が描いてくれました。




