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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界恋愛系 作品いろいろ

絶世の美女オフィーリア、復讐する

作者: 四季

「お前との婚約は破棄する。そしてお前の妹と新たに婚約するのだ。俺はもう親の言いなりでいることはできない。だから……さらばだ、オフィーリア」


 オフィーリア・アンブレラは絶世の美女だった。


 しかし婚約者であるスベールは彼女を愛さなかった。


 二人の婚約、それは、互いの親が話し合って決めたこと。それでも、オフィーリアは婚約者を好んでいた。幸せな家庭を築くことへの憧れを持っていたオフィーリアは、温かい家庭を作ろうと、いつも努力していたのだ。


 だが婚約者は違っていて。


 彼は「今あるもので素晴らしい未来を作り出そう」と考え努力するたちではなかったのだ。


 スベールが惚れていたのは、オフィーリアの三つ年下の妹。名をコルネリアというが、オフィーリアと違って『愛らしい』という言葉の似合う娘で。スベールは、大人びた品のある美女オフィーリアより、撫でたくなるような愛らしさのコルネリアを気に入っていた。


 そしてスベールは理不尽に婚約破棄を突きつけた。


 オフィーリアは仕方なく婚約破棄を受け入れたが、その晩、寝巻きのまま湖のほとりで一人泣いていたという。

 そして、その目撃情報を最後に、彼女は消えた。

 自殺するため森の奥へ進んでいってしまったのでは、とか、不審者に誘拐されたかも、とか、獣に襲われ食い殺されたのかもしれない、とか。暫しいろんな噂が飛び交った。が、噂が人々の心を揺さぶったのも一時で。いつしか皆そのことは話さなくなった。


 数ヶ月後、スベールは改めてコルネリアと婚約する。


 二人は両想い。幸せな甘い時間を過ごしていた。二人の間に割って入ることができる者などいない。それほどに、二人は愛し合っていた。というのも、実は、オフィーリアと婚約していた頃から二人は定期的に会っていたのだ。だから既に心は通い合っている。


 式を挙げ、正式に夫婦となり、コルネリアはやがて子どもを宿す。


 二人の愛のために犠牲になったオフィーリアのことなど、誰もが自然に忘れていっていた。周囲も、その多くが、スベールとコルネリアの夫婦暮らしを温かく見守っていた。


 だが転機が訪れる。


 ある夜のこと、スベール夫婦が暮らす村に魔物の群れが出現。村人たちは冷静に対処することはできなかった。ただ狼狽えることしかできないまま、数人が犠牲になる。

 スベールとコルネリアは運良く無事だった。しかし、ショックが大き過ぎて体調を壊したコルネリアは、流産してしまう。夫婦を悲しみが包んだ。それでも、今は生きているだけで幸せ、と思い込むようにして。二人は心を保とうとする。


 数日後、再び魔物の群れが現れた。


 今度は二人も襲われた。

 前回は運良く助かったが、今回もそのように、とはいかず。魔物の爪に喉を掻っ切られて、スベールは絶命する。それも、コルネリアの目の前で。


 コルネリアはまたしても運良く助かった。しかし、生き延びたことが彼女にとって幸せなことだったかというと、そうではない。スベールが落命することとなったのはコルネリアを守ろうとしたせい、その事実がコルネリアを苦しめ続ける。


 コルネリアは心を病んだ。


 数日後にはコルネリアの両親が魔物の襲撃に遭い死亡。その場に偶々同席していたスベールの父親も、巻き込まれて傷を負う。結局それが致命傷となり、スベールの父親も数日以内に落命。残されたスベールの母親と弟は、ここにいては危険だと考え、引っ越していった。


 コルネリアは施設に保護され、そこで暮らすようになる。

 しかし彼女の心が正常に戻ることはなかった。



 ◆



 それから数年。

 コルネリアは衰弱し、一日のほとんどを施設内のベッドの上で過ごすようになっていた。


 数ヶ月前には不治の病と呼ばれる病を患っていることが判明。それでも施設に残っていたのは、精神状態のこともあって彼女を引き取ってくれる病院がなかったからだ。彼女は屍のようになりながらも、一日中天井を見つめて何とか生きていた。


 そんなある夜のこと。

 コルネリアの枕もとに、一人の女性が現れる。


「久しぶりね、コルネリア」


 その女性はオフィーリアの姿をしていた。

 この世のものとは到底思えぬような美女。


「元気かしら。いえ、元気ではなさそうね。随分弱っているわね」

「……おねえ……さ、ま……? ……しに、がみ……?」

「でもいいわ、それで。すべてを失ったのよね。私の痛み、少しは分かってもらえたかしら」

「……わた、し……死ぬ、の……?」

「そうよ。貴女は死ぬ。でも安心なさい、最期は苦しめないわ」 



 ◆



 翌朝、コルネリアは息を引き取っていた。

 見回りに来た係の者が発見したのだった。



◆終わり◆

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