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ジェフパラディース~少女の形をした人形の物語~  作者: ロミオ 浜茄子
人形達の楽園ジェフパラディース
4/6

楽園に起きた悲劇。

 私が目覚めてから三ヵ月が過ぎた。

 あれから色々な物を食べたけど、結構なんでも食べれる事が分かった!

 ただ、大きな木は固くて食べれないし、虫もちょっと苦手かな?


 ベックとは毎日会うけど、ジャックとラタには一週間に一度くらいしか顔を合わせる事が無かった。

 きっとお仕事が忙しいんだろうけど、ちょっと寂しいかな?

 でも、花壇の水やりも一人で出来る様になったし、そろそろこの生活にも慣れたと思う。

 私が皆のお仕事を手伝える様になったら楽になると思うし、ベックにあの事を聞いて見る事にした。

 

 「ベック、そろそろ私も生活になれて来たし、秘密を教えて欲しいんだけど、駄目かな?」

 「……そうだな。 本当はあまり見せたくないのだが、いずれ知る事にもなる。 ついて来るんだ」


 始めてベックの悲しそうな顔を見た。

 本当は見せたく無い……か。

 良い知らせって事は無いよね……?

 目が覚めてからずっと楽しい事ばかりだったけど、ちゃんと覚悟をしてみようと思う。


 ベックの向かった先は、いつもなら危ないから行っては駄目だと言われている方角。

 なんとなく、そうなんだろうなって思ってたけど、やっぱりこの先に何かあるんだ。


 薄暗い獣道の先へ進む……

 雰囲気は他と変わらない、いつもの森の中。

 でも、ベックが黙っているせいか、いつもより静かに感じる。

 薄暗い森の先には光が照らされた場所が見える!

 あそこは泉と同じように、開けた場所なのかな?


 強い光に慣れて無くて少し眩しい……


 光の射す場所に辿り着くと、そこには大きな岩があった。

 その岩の前には、沢山の……人形達? 

 大きな岩には何か書かれている……


 ジェフとロザリーの魂が眠る場所?

 誰の事だろう?

 それに、この人形達は……


 「ここは……俺達の墓だ」

 「お墓? じゃあこの人形達は……」


 「ああ、ここで死んでいった俺達と同じ人形達だ」

 「レメディウム!」


 「無駄だ。 魂を失った者達はもうここへは帰って来ない」

 「どうして皆死んじゃったの?」


 「……仲間割れだ」


 ベックはここで起こった悲劇を一から説明してくれた。

 

 最初は私を含めずに、ぴったり百人の人形達が居た。

 その人形達は皆個性豊かな人達で、いつも楽しくこのジェフパラディースで遊んで暮らしていた。

 でも、事件は突然やって来た。


 弱い魔物と戦っていた一人が腕を引き千切られてしまった。

 それだけならレメディウムで簡単に治せたんだけど、千切れた腕を拾った別の人形が、その腕から生命エネルギが漏れているのに気が付き、それを食べてしまった。


 その日は何事も無く、腕もちゃんと治して皆、無事だったんだけど、夜が明けると一人の人形が動かなくなっていた。

 その人形は何をしてもいつも通り動く事は無くなってしまい、皆がそれを悲しんだ。


 それと同時に、本来なら強力な魔物を寄せ付けない結界が張ってあったのに、それが失われてしまった。

 後の調べで、百人全員が生存している事でその結界が生み出されている事をベック達は知ったみたいだけど、その時は外から強力な魔物が入ってきて、仲間がやられたんだと思っていたみたい。


 次の日になるとまた動かなくなってしまった人形が現れた。

 ベック達はこのままではやられてしまうと思い、魔物狩りを始めた。

 強力な魔物達と戦い、仲間がどんどん殺されていき、みんな夜が来るのを恐怖する様になった。


 このままでは皆がやられてしまい、姫である私も危険な状況に陥ってしまう。

 そう考えた人の中から、統率者を名乗り出た人がいた。

 王冠を被った大きな身体の鷲の人形ロジャース。


 彼は仲間の腕から生命エネルギーを食べた人物だったけど、その時には誰もその事を知らなかった。

 ロジャースは皆を率いて勇敢に魔物と戦った。

 その姿から皆が彼の事を崇拝し、英雄と称した。


 しかし、夜が来ると必ず誰か一人が動かなくなっているのは変わらない。

 

 日を追うごとに仲間は減り、強い魔物と戦う戦力も失ってしまった。

 そして、最後に残ったのは、ロジャースとベック、ジャックとラタの四人だけになり、その日の夜はみんなで同じ場所に固まって夜を明かそうとした。


 ラタは怖くて眠れなかった。

 だから見てしまった。

 ロジャースが夜中に立ち上がり、武器を手にした所を……


 ラタが大声を上げて皆を目覚めさせた。

 その時にロジャースは全て白状し、罪を認めた。

 だけど、観念したわけじゃなかった。


 ロジャースは三人を相手に戦おうとした。

 仲間の生命エネルギーを蓄えたロジャースは三人掛かりでもまるで歯が立たない程強かった。


 それでも三人は、最後に私を守ろうとした。

 その姿を見て何を思ったのかは分からないけど、急にロジャースは森の方へ走って逃げてしまった。


 それがここで起こった悲劇……

 そして、この岩に刻まれているジェフとロザリーは私達を生み出してくれた人の名前。


 きっとここから皆の事を見守ってくれているのだと、当時はそんな風に話していたみたい。

 だけど、今は死んでしまった皆のお墓になってしまった。

 よく見ると、岩の側面や色々な場所に他の人形達の名前が掘られてある。


 百人生存していた時に、二人の事を詳しく知っている人形が一人いたらしく、当時、皆で岩を運んでお墓を立てた。

 ここに二人の遺体が埋められている訳じゃないけど、死んでしまっている事は、はっきりしていると、その人は皆に伝えたんだけど、私が目覚めた時に誰かがその事を私に話さない様にと黙ってくれていた。


 犠牲者が出た事で、自分の命も危ういと悟ったその人は、皆の前でロジャースに、ジェフとロザリーの事を書き記した手紙を預けて、その手紙は今もロジャースが持っている……

 

 「きっと私はロジャースに会うべきだよね?」

 「駄目だ。 奴は危険すぎる」


 「でも、手紙の事もあるし、強い魔物がいるならここも安全じゃないんだよね?」

 「手紙の事は諦めるんだ。 そして、魔物達は俺達人形にあまり興味を持っていない。 何もしなければ敵対する事は無かった。 今は安全に暮らせている」


 「でも、私はロジャースに会ってみたいって思うよ」

 「ミラを危険に晒す訳にはいかない」


 ベックと私が言い合っていると何処からともなく「イーッヒッヒ」と言う笑い声と共に、木の上からラタが飛び降りてきて、目の前に着地した。 

 よく見ると、沢山傷がある……


 「イーヒッヒ! ベック、いいんじゃないのか? ロジャースと会っても。 おいら達はその為に強くなったじゃないか」

 「僕も同感だね。 今ならロジャース共対等に戦えるはずだよ。 僕達は強くなる方法を知った。 どの道魔物達とも戦わなければならなくなるしね」


 上から飛んで来たラタにもビックリしちゃったけど、木の影からスッと現れたジャックの登場にもビックリした!

 ジャックが言っている魔物達とも戦わなければってどういう事だろう?


 「お前達……俺はミラには戦いとは無縁の世界で欲しいと願っているんだ」

 「オイオイ、この中で一番魔物と戦って強くなった奴のセリフか?」

 「そうだよ、ミラの為に強くならなければならない。 その為に魔物と戦わなければならないんだから、どの道戦いは避けられないよ。 いっその事ミラにも強くなってもらうのがいいと僕は思うんだけど?」


 「……戦うのは俺達だけでいい」

 「ベック、私の事を大切に思ってくれているのは嬉しいんだけど、私はロジャースに会いたい。 だから、私も強くなって頑張るから、一緒に戦わせてくれないかな?」

 「おいら達はミラを守るために作られた。 だからこそ、ミラには強くなって貰いたい」

 「僕もラタと同意見です。 この森で生き抜く力は持っておいた方がいい」


 ベックは深く考え込む様な仕草をして、「分かった」と頷いてくれた。

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