生命エネルギーの味。
森の中は真っ暗になって、火の無い所だと何も見えなくなっちゃった。
綺麗に敷かれた石畳の上で、ベックと一緒に焚火を囲み座って待ってると、二人がやって来た。
リスの人形のラタは兎さんと同じくらいの大きさのリスで凄く可愛い!
兵隊人形のジャックは銀色の甲冑を着た兵士で、兜を取ると無精髭が生えた頼りなさそうなおじさんだった。
「おお、姫。 ついに目覚めてくれたんだね! 僕はジャック。 花壇はもう見てくれたかい? 気に入って貰えると嬉しいんだが……」
「あの花壇はジャックが作ってくれたの? 素敵! 明日からは私も花壇の手入れをするから宜しくね!」
「おいらはラタだよ」
「うん、宜しくね! ラタ!」
可愛いのでフワフワしているラタの頭を撫でると、ラタは「イーヒッヒ」と言う笑い声をあげる。
二人がどんなお仕事をしているのかを尋ねてみると、突然三人は黙り込んでしまった……
「三人共どうしちゃったの?」
「そ……そうだねぇ……」
ジャックはチラリとベックとラタの方を見る。
何か言い辛い事でもあるみたいに……
「イーッヒッヒ、どっちにしろ遅かれ早かれって奴さ! それなら――」
「まだだ。 ミラには今の生活に慣れて貰おう」
ラタの口を押えてベックが割って入った。
明らかに何か隠しているみたい……私は目覚めて間もないけど、聞くだけ聞いてみて、それでも三人が何かを黙っておくって決めたんだったらそれでいいかな?
「ベック? 何かあるんだったら聞いて置きたいんだけど、駄目なの?」
「ミラにはまだ早い。 ここの生活に慣れてきたら教えよう」
「分かった。 それじゃあその時が来るのを待ってるね!」
私にはまだ早い……か。
結局二人のお仕事も秘密にされたままだけど、それならここの生活に早く慣れちゃえばいいだけだもんね!
その後、焚火を囲んでジャックが歌を歌ってくれた。
それに合わせてベックとラタも手を叩いたり踊ったりしてくれたのがとても楽しくて、あっという間に時間が過ぎていってしまった。
◇
あれ? 焚火を囲んでウトウトしてたらいつの間にかベッドの上で横になっている。
ここは……私の為に作ってくれた小屋の中? 屋根が付いていて日差しを遮ってくれている。
窓の方を見るとベックが覗き込んでこっちを見ていた。
「おはようベック!」
「おはようミラ。 ちゃんと眠れた様だな」
「うん! ベック達もちゃんと眠れた?」
「ああ、しっかりと睡眠は取れた。 お腹は空いていないか?」
お腹は……あんまり空いているって感じはしないけど……ううん。
考えたらお腹が空いて来ちゃった。
「お腹空いているみたい。 また兎さんから生命エネルギーを分けて貰うの?」
「それでもいいが、折角だ。 魚を釣って頂くとしよう」
「うん!」
釣りは楽しみ! だけど、先に花壇にお水を上げないと!
ベックと一緒に壺いっぱいに水を入れて、荷車に壺を乗せていく。
重い荷車をベックが引いて行ってくれて私はその後ろを着いて行くだけ。
手伝いたいけど、私が後ろから押しても大した力にはなれないから見ているだけになっちゃった。
花壇に辿り着くと、二人で水やりをする。
壺を運んで、花の下にある土の上に水を撒いて行く。
ただ水を撒くだけだけど、大変なお仕事だ。
結局殆ど水を撒いたのはベックになっちゃったけど、私も慣れればもう少し多く撒ける様になるかな?
荷車を引いて元の場所まで戻り、ベックが釣竿や道具を持ってきてくれる。
釣りをする場所は、泉の方へ出っ張った岩の上。
「糸は頑丈で針は太い。 引きがあったら力いっぱい泉の外へ魚を放り投げる様に釣り上げるんだ」
「わかった! エサはこの白い虫を使うの?」
「そうだ、気持ち悪いなら俺がつけてやる」
「大丈夫!」
この白い虫はたぶん、蛆虫だ。
見た目は気持ち悪いけど、牙とか見えないし怖くない! 全然平気!
早速釣り針に蛆虫を刺して泉に投げ入れる。
水が澄んでいて、お魚さんが寄ってきているのがはっきり見える。
パクっとエサに喰いついたから思い切り竿を立てた!
んんっ! 重い! 体を後ろに倒して思い切り竿を引くと、急に軽くなってすっぽ抜けた感じになり、尻餅をついてしまった。
お魚さんは何処へいったんだろう?
「上手いじゃないか。 あそこを見てみるんだ」
ベックの指し示した方を見ると、お魚さんが打ち上げられていた!
急に軽くなったのは投げ飛ばしちゃったからなんだ……ちょっと悪い気がするけど、生命エネルギーを分けて貰ってすぐに泉の中へ帰してあげよう。
あれ? 兎さんとは少し違う感じがする。
生命エネルギーにも味みたいに違いがあるんだ。
「兎と魚。 ミラはどっちの味が好きだ?」
「うーん……どっちも嫌いじゃないよ!」
「そうか、俺は兎の方が好きだが、ジャックは魚の方が好きらしい。 ラタはどんぐりが好きだと言っていたな」
「植物からも生体エネルギーを貰えるんだね! それじゃあ、木からも貰えるの?」
「木は止めて置いた方が良い。 沢山あるがあれは固くて食えたものでは無い。 ジャックは葉っぱなんかもいけるらしいが俺には無理だった」
「それぞれ好みがあるのね! それじゃあ色々試してみようかな?」
「それはいい事だ。 好みのものが見つかるといいな」
「うん!」
それからベックと一緒に沢山お魚さんを釣り上げて、二人で食事を楽しみながら釣りを楽しんだ。
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