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森林大火災とドミノ倒し

 自然保護地区に指定されたことにより、その自然公園の森林は伐採が禁止された。人々が入るには許可がいり、稀に発生する自然火災は直ぐに鎮火される。

 結果として、豊かな動植物の生活の場としてそこは機能していた。

 ところがだ。

 ある時に大火災が発生してしまった。

 

 ――何たる悲劇!

 

 折角、保護していた自然が破壊されてしまったのだ。

 人間社会はその悲劇を大事件として報道した。どうしてこのような事が起こってしまったのか。この森林だけの問題ならば、特例で済まされたかもしれない。しかし、近年に入り大規模な森林火災は頻発している。ならば、何か特別な原因があると観るべきではないのだろうか?

 様々な説が飛び交った。或いは、地球の温暖化が影響しているのかもしれない。気温が上がったことで、火災が起こり易くなってしまったのだ。

 確かにその要因はあるのかもしれない。

 だけど、もう少し冷静になって、慎重に考えてみるべき話もある。

 果たして、少しの火災でもすぐに消されてしまうという状態は、果たして森林にとって“自然”と言えるのだろうか?

 

 例えば、松ぼっくり。

 松ぼっくりは、松が火災を利用して種をまきちらす為に実らせる。つまり、松にとって火災は“自然な現象”で、生活のサイクルの一部になっているのだ。

 それを聞いて、それがどうした?と君は言うかもしれない。

 それは自然火災に適応したに過ぎない。火災が発生するから、仕方なく、それに合わせているだけじゃないのか?

 そうかもしれない。

 だが、それならばユーカリはどうだろう?

 実はユーカリは非常に燃えやすい特性を持っている。そして、樹皮だけを燃やし、根に栄養を蓄え、芽を息吹かせる。ユーカリは初期の生育が非常に早いことでも知られている。

 こんな条件を聞くと、まるで火災を望んでいるように思えるじゃないか。

 これを聞いても、まだ君は納得しないかもしれない。

 そんなのは特異な植物の特異なケースじゃないか。一般の植物にまで敷衍するのは無理がある。

 

 そうかもしれない。

 

 だけど、少しこんな想像をしてみて欲しい。

 ドミノ倒しのドミノがあるとする。それがたくさん横になっている。そして、そのドミノは少しずつ自動的に起きがって来るんだ。

 だけど、ごくまれに勝手に倒れてしまう。近くにあるドミノを巻き込んで。

 それが極一部だけ起きがっているのなら、当たり前だけど、ドミノが倒れるのは極一部だけだ。

 ちょっと倒れてそれでお終い。

 それが頻繁に起こるから、小規模なドミノ倒ししか起こらない。

 ――だけど、勝手に倒れるドミノを途中で食い止めてしまったならどうだろう?

 ドミノはどんどん起きがって来る。あちらこちらでいくつもいくつも。広大な地域にドミノが立って並んでいる。

 やがてそれは臨界点を迎える。たくさんのドミノが起き上がり、その空間にいっぱいになってしまった状態。

 そこで、突然、どこかでドミノが倒れるんだ。

 すると、今までのようにちょっとじゃ済まない。あまりに大量のドミノが倒れるから、それは食い止め切れない。

 ドミノは連鎖的に倒れていき、大倒壊を引き起こす。

 

 森の木々は、成長していけばやがて老木になる。老木は水分が少なく燃えやすい。では、その老木だらけになってしまった森のどこかで火災が発生したならどうだろう?

 ドミノ倒しと同じだ。

 それは大倒壊を…… つまりは、森林大火災を引き起こす。

 

 つまり、保護している森林で大火災が発生するのは、実は“保護している”ことこそが原因なのかもしれないのだ。

 小規模な火災を放置すれば、大火災は起きないのかもしれない。

 或いは、老木は伐採してしまう、とかね。

 

 何をもって“自然保護”と呼ぶべきなのか、これはとても難しい問題だ。


参考文献:歴史は「べき乗則」で動く マーク・ブキャナン ハヤカワ文庫

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