5話
数分かけて静かに対岸に移動した俺は壮絶な戦いをしている5人の男たちを視界に入れた。
緑色のローブを着た男性は灰色がかった髭と深く刻まれた皺が印象的な魔術師風の老爺だった。長身であり身体つきはローブではっきりしないが身長ほどもある杖を持っている。彼を中心に3体の剣と鎧を着けたスケルトンが動いている。その守りを崩そうと3人の男が剣や魔法で技を出している。
一定の距離を保って最後の一人は各人に指示と付与魔法を掛けている。おそらく奴らのリーダーなのだろう。
緑フードの老爺は全身に切り傷があるのか血が滲んできており、特に右腕はぶらんとして力が入っていない様子だ。
ルカは息を潜めて様子を伺う。
(左手で長い杖を掲げているが特に何も起きない。魔法を打てないでいるようだ。いや今度は黒い魔法をスケルトンへ放っている、これは付与魔法か。3,4割の魔法は発動しているのか?)
妨害系統の魔法や無詠唱での魔法を見事に操り灰色ローブの男たちを牽制できている。
だが、灰色ローブのリーダーもかなりの手練れの様ですぐさま対抗魔法を放ち持久戦に持ち込み負傷している緑フードの魔術師を削り取る構えのようだ。
ルカは木陰を移動しながら20秒ほど戦闘を観察し、自身が均衡を崩し得る手を考える。
「くっ、手を変え品を変えそんな補助魔術も使えんのかよ。流石は偉大な魔導士さんだなぁ!!」
「お主の魔封術もなかなかのものだ・・・、封じている術は30では利かんだろう。しかも状況に合わせて切り替えていると見える。初撃で殺り切れなかったのは失敗だったな。わしをまともに殺す唯一の機会だっただろうにな、ははは」
「それだけ、満身創痍で何言っていやがる。お前の命運もあと少しだぜ。お前らギアを上げるぞ。」
「おう!」「はっ!」
灰色のリーダーが相当量の魔力を込めて詠唱を始めたのをみて、ルカは賭けではあるがここで仕掛ける。
「ウォーターボール!ウィンドカッター!」
「その身に力と輝きを与えん!纏え!闘気かい!!!!?んっ冷たっ!!ふん!」
初撃は命中し詠唱を中断させることに成功したが、ウィンドカッターは無詠唱のマジックシールドで防がれそよ風が吹き抜けるのみとなった、そして反撃の詠唱が始まる。