1話
「ルカーそろそろ起きてご飯食べなさい、今日も森に入るんでしょ」
母さんの声が聞こえる。目が覚めてきた。いつもより2時間近く早い朝である
「うーん、、、分かってるよすぐ行くー」返事をして俺は頭を掻きながらのそのそと動きだした。
着替えながら今日の予定を思い起こしていた。朝食を食べたら軽く柔軟をして朝の稽古、
そのあと村の自警団のみんなと森に入り一昨日から現れたというスケルトンの魔物について調査だ。
ここはアピット山脈の東寄りに位置するリヨンの村、その周辺の森はクマやタヌキなどの野生動物に加えてゴブリン、パワーエイプなどの魔物が多数生息しているが一昨日猟師のスピークさんが森の中で剣を装備したスケルトンを発見したのだ。
そこで昨日は自警団の15人ほどが集まって墓地や森の浅い所を捜索したのだ。村長が言うには森の中にダンジョンでも発生していたならば手に負えない。また不確定要素ばかりではボーズの街へ調査依頼を出すことも難しいので、数日は村で調査・対処することになった。
最もスケルトンが基本魔法3,4発で倒せる魔物であることも大きい。スピークさんも無事に倒したらしい
そんなことを考えながら朝食を食べた俺は父さんに剣の稽古をつけてもらうため庭先へ出てきた。この村では子供のうちは遊びで駆けっこやその辺の枝でチャンバラをするのは当たり前だし10才程度になると親や近所の兄ちゃん達から剣や槍弓の練習をする。
おおよそ半年に一度は魔物が村の柵まで来る事がある。狩人の一家が得物を狩るついでに時々退治するだけでなく、月に2回は自警団で森に入り魔物の間引きをしているが魔物はやってくるのである。
リヨンの自警団へは13、4才ごろから参加でき基本魔法が使える事と1つは武器の心得があることが条件だ。
村の周囲に出る魔物は数は多いが自警団員4,5人の集団になって倒すので危険はそこまで大きくない。また、自警団では村の門や柵の管理も行っている。
俺とお父さんはそれぞれ木剣構え3メートルほど距離を保って集中力を高めていく。
「ルカ。それじゃあ今日も始めるか!さぁこい!!!」
余裕の様子で木剣の先を斜めに外し隙を見せる。
俺は父の目線や動きを確認しつつ、細かいフェイントを入れながら距離を詰め、剣を胴体へめがけて下から振り上げ踏みこむ。しかしその一撃は、ガッチリと父の木剣が受け止める。
「今日は俺も森に入るからな。ラスカル爺さんから直接頼まれちゃ断れないからな」
父ルドルフは3年ほど前まで自警団長を務めていた。
団長は持ち回り制であるとは言え村有数の剣の使い手なのだった。
「今日は俺の入ったパーティが再来月の分まで魔物の間引きをしてやるさ。やっかいな調査なんぞはパリス団長サマに任せておけばいいのさ。はっはっはっは」
とか、調子の良い事を言っている。その間にも俺の剣は十数合打ち合った後、弾かれ寸止めを喰らっていた。
父曰く、ルカは魔法もいくつも使えるため総合力で言えば悪くないが決定力が欠けているので、そこを伸ばすため打ち込み、踏み込み、瞬発力などを指導されている。
毎朝の稽古でも最初に模擬戦をした後は反省とトレーニングを30分から一時間ほど行うことが多い。
稽古が終わった俺は僅かばかりの悔しさと父の強さを改めて実感しながら。森へ入る準備を行うのだった。