謎の「水上目標」探知
訓練にいそしむ「かつらぎ」でしたがある日、、
「かつらぎ」は横須賀を母港とする第1航空船隊 所属となり、24機のF6F、数機のTBM、(後にS51ヘリコプターを追加)を搭載して訓練に邁進した。すでに朝鮮戦争も峠を越えたとは言え、まだまだ緊張した国際情勢にある。
「かつらぎ」の前方には、アメリカから貸与されて間もない、第1船隊のPF4隻が展開、対潜警戒に当たっている。なんと言っても空母より遥かに小さな艦艇ばかりであり、進路前方に展開、かつらぎ搭載のTBMが探知した不明目標を確認する形をとることが多かった。
そして、その過程で「謎の水上目標」を発見したのである。
小笠原諸島の大戸島付近での航行中、前方哨戒中のTBMより「艦隊進路前方に不明水上目標あり」との連絡あり、かつらぎ座乗の第1船隊群司令は確認のため、PF「くす」を派遣したが、彼らの見たものは、、、。
「船長、あれは何でしょう?」
「わからん!まるで巨大な背鰭のようにも見えるが?」
レーダーに反応していたのは巨大な背鰭とそれに続く長い尻尾のようなものであった。
それは水平線の上にしばらく姿を見せたのちにあたかも潜水艦が急速潜航するかのごとく姿を消した。
まだソナーの有効探知距離の遥かに向こうであり、不明目標が潜航したあたりに着いた頃には、哨戒機も燃料の都合で帰艦したばかりでありそれ以上の追及はなされなかった。
というのも、どうみても共産軍の新型潜水艦には見えない代物であったし、なんとか撮れた写真をみるとどうやら長さ60メートルくらいの「生物」にも見える。「鯨の誤認だろ」との意見もあったが捕鯨船の経験者から、「こんな背鰭の鯨類はいない!」と断言されるに至り、本部には「大戸島近海にて水上不明目標を探知するも、10分後に潜航、失探する」とだけ報告した。
本部もこのよくわからん件には戸惑い、「当該海域を迂回して帰還せよ」との指示にとどめ、海上保安庁にも周辺海域への警戒を促すよう連絡して今回の対応を終えたのである。
この数年後、この海域に現れた巨大な怪物が大戸島を蹂躙、さらには東京に上陸してきたことからようやく正体が判明したときは、かつらぎは定期検査及び改装中、航空隊は機種改変中で迎撃には参加できなかったのであった。
どうやら本格的に遭遇しなくて良かったようです