異世界転生なんて5行で終わっちゃうよね。
あ
俺の名前は加藤 景一。高校3年生だ。
実はこの間夜中にコンビニ行こうとしたらトラックにはねられて死んでしまった。どうやらその死は神様のミスだったらしく異世界でもう一度生を受けられることになったのだ。
「ああ、しんど。」
ため息を付きながらレンガを運ぶ
転生させてもらったはいいもののチートとか特殊能力は特になく、ただ単に身体能力がちょっぴり高いだけのようだった。
体の年齢は前の世界と同じで18歳で、転生と言っても体を作り替えただけで、赤ちゃんスタートという訳では無いみたい。
と言っても、18の、しかもこちらの世界の事を全く知らない奴に出来ることなんて、肉体労働の他は無く、冒険者とかいう何でも屋さんに登録して朝から晩まで働いているのだ
大した金額ではないが日払いで給金は貰えているので、
今は寂れた宿屋に安くで泊めさせて貰っている(雑務を引き受けて安くしてもらったのだ)
「おう。今日も1日頑張ったなケーイチ。上がっていいぜ。」
現場監督のムキムキさん(心の中でのあだ名だ)が呼びかけてくる。
この人は昔狩り専門の冒険者として名を上げていたらしいが、腰の怪我で引退して今は当時のコネで現場監督をしているらしい。これらは宿屋のおばさん情報だ。
「了解っす。ではお先に。ム…ゴルファさんも早めに上がった方がいいですよ。今日は雨降りそうなんで。」
曇り空を一瞥してそう言う。
「がっははは!雨なんぞ天然のシャワーみたいなものだ!がっはは…」
笑い声を他所にそそくさと準備を済ませ現場をでる。
今日は俺にとっての異世界生活第1歩となる特別な日なのだ。
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宿屋に帰ってきて、店主のおばさん(名前はクレアさん)に首を傾けて挨拶する。
「おやおかえりケーイチくん。すまないけど干してある布団を入れておいてくれないかい?雨が降ってきそうだからね」
もう1度首を縦に降って了承する。無愛想に見えるかも知れないが、俺とクレアさんはそこそこ仲がいい(と思っている)ので、これで全部通じるのだ。
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雑事を終わらせて、ついに俺はあの場所へと歩を進めた。
そう。鍛冶屋さんだ。
俺はついにこの世界で自分だけの武器を手に入れるのだ。
店につく前におサライしておこう。
基本的に冒険者という職業は、主に三種類に分かれている。
化物(どこからとも無く湧くモンスター)退治や、盗賊や犯罪者を専門に行う戦闘系
商売や、ハンターに付いていき様々な情報収集を専門にしそれを売っている諜報系
王族貴族の護衛を専門とする護衛系
この三つが冒険者の主な仕事らしい。
なんでもかんでも受ける人も居るらしいが極小数らしい。(そりゃ専門にした方がコネクションも作りやすいか)
その中で俺が専門にしたいのは、やはり戦闘系だ。
もちろん戦闘経験なんて全くないしもっと言えば喧嘩もした事ない。でもさ、憧れちゃうよな
男の子だもん。
それにどうしても無理そうなら乗り換えればいい。冒険者は自由が売りなんだから。
ここで戦闘系の冒険者にならなかったら、転生して3ヶ月もの間現場で鍛えた俺の肉体と金が無駄になってしまう。
「ここか…!鍛冶屋『頑固親父の金鉱脈』…!」
なんとも怪しげな店名だが腕はピカイチとこの国の冒険者の間では有名だ。
注文したのは長剣1本と革のツナギだけだが、かなりの値段がした。
日本円で例えるなら10万ちょいくらいだろうか。
この世界の通貨や文字を覚えるのは苦労したが、人間命かかってれば2ヶ月ほどで出来るものだな。(なにか強制力を感じるけど)
「すみません。この間剣注文したケーイチです。黒髪のケーイチです。」
この世界では珍しい黒髪を出せば1発で分かるだろうと思い、付け足す。(こっちは金髪やら緑髪やらミラクルな配色だから最初は驚いた。何千年か前何かが起きてそうなったらしいが詳細は謎)
「おっー!きたきた!じーちゃん!黒髪のアイツきたよー!」
はつらつな声でそう叫んだのは店主の孫だろうか、短髪で、胸の部分だけ黒のピチっとしたビニールを巻いている元気っ娘だ。
「おお…来たか、どれ、そこに座っておけ。今持ってくる。」
店の奥(恐らく鍛冶場)からしわがれた声が聞こえてくる。弱々しい中に確かな老練さを垣間見えさせたその声の持ち主は間違いなく店主の(頑固親父の)ヴィルさんだろう。
とりあえず近くにあった椅子に座る。
「なーなー!兄ちゃんはどこ出身なんだー?私はこのトーキンで生まれてずっと暮らしてっから外のこと全然知らないんだー!教えてよー!」
困ったな、どう答えようか。
あ