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4話 僕、ボブ

 それから十年後。集落の真ん中で放置され続けて何故か十六歳になった俺は小さな集落という環境に適応していた。一方的に挨拶を交わす友人もできたし、一日中働けば渋々雀の涙ほどの給料を払ってくれる素晴らしくホワイトな働き先も見つけた。


 俺は集落の真ん中で寝袋から起き上がると、通りがかった友人に挨拶をした。


 「おう! 今日も良い天気だな!」


 「……」


 友人は何故か俺の声がまるで聞こえなかったかのようにスルーして去って行った。


 今日もいつも通り、良い一日になりそうだ。


 俺はうんと背伸びをすると、日課であるお祈りをした。寝袋の隣にある祭壇に昆布を捧げ、ケヒャヒャと嗤い声を出しながら無表情で踊る。お祈りの踊りに必要な動きは単純かつ容易なものである。まず、座った状態から勢いよく立ち上がり、首を112度回転させる。その状態で右手を股の間に通し、そのまま左耳を掴む。そして、左手で右足の小指を突きながら飛び込み前転をする。ただし、その途中で物理法則を捻じ曲げてはいけない。物理法則は意識しないと簡単にねじ曲がってしまうから注意ダゾ☆

 踊りを終えると、春の麗らかな日差しが祭壇を包み込むように照らし出した。何だかまるで祝福されているみたい! 春って素晴らしいNE☆


 そうしていると、また別の友人が近くを通りがかった。


 「よう! お前もお祈りしてくか?」


 「――僕、久保ボブ。僕、久保ボブ。僕、久保ボブ。僕、久保ボブ――」


 うわ、何こいつやべぇ。しかもこいつの名前スティーブンだし。


 「おい、ボブ!」


 「僕の名前は何ボブ?」


 こいつ語尾がボブなのか……。そういやいつもボブボブ言ってたな。十年間過ごしてきて初めて気が付いた。


 「スティーブンだろ? jk」


 「まじうぜぇボブ」


 「そうボブか」


 こんな感じで集落の人たちとのコミュニケーションも良好。十年前にはできなかった会話のキャッチボールが今はこんなにもきちんとできるようになったんだ! 昆布男に圧倒的感謝!


 「今日も昆布がこんなにも素晴らしい……っ!」

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