2話 昆布と白滝
さっむ。
俺はとんでもなく不思議な感覚をまさに実感していた。俺の意識は先刻までこの世に存在していなかった。つまるところ、俺は唐突に誕生した。
妙だって? 妙なんてもんじゃない!
意識が発生したことを自覚できる人間が俺以外にいてたまるもんか。
あるいはこんな言い方ができるかもしれない。
“俺は前世の記憶を受け継いでいる”
俗に言う詰め替え用シャンプーが詰め替えられたときの気持ち、というやつだろうか。
前世はろくな事がなかった。実際、俺は堪えきれずに自殺したんだ。
……っていうか、さっむ。
俺は裸で雪原に横たわっている。なぜ? 知るもんか!
俺の記憶は前世のやつから引き継いだ。しかし、俺自身は多分この世界に三年ほど前から存在している。つまり俺はこの世界の俺と前世のやつのハイブリットって訳さ!
どやっ( `ー´)
……いや、んなこたどうでもいいって。とりあえず寒いさむいww
誰かぁ! 助けちくりぃぃー!!
とかね。心の中で叫んでも当然助けなんて来ないんだよ。てか、もう実際に叫ぶほどの体力とか残ってねーんすわww
ほら、まだ三歳児(爆笑)だからww
「あれ? こんなところに……三歳児?」
なんかキターww何と言うご都合主義ww
そこにやってきたのは男だった。五十六歳の男性である。五十六歳の男性とは、年齢が五十六歳の男性のことである。毛髪には白髪の代わりに白滝が混ざり、皺ひとつない昆布をまるでスーツのようにきっちりと着込んでいる。
……白滝!?
うわぁ……。昆布はまだしも白滝って……。ないわぁ。