表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
有無の騎士  作者: 七咲衣
第0院編
9/79

第九話 転移

ロストは紙に記されていた部屋へ向かう。それはどうやらこの砦の屋上らしく今は永遠に続くんじゃないかと思わせる程に長い螺旋階段を歩く。


「屋上・・・本当に長いな。どこまで続くんだろう」


そのまま歩き続ける。そして更に歩き続けたところで潔く扉にたどり着く。


「や、やっと・・ついた・・・」


もはや息も絶え絶えになりながらも屋上へたどり着く。そして扉を開ける。やはり相当な高地に建っているらしくビュウビュウと強い風が吹いていた。


「あれ・・・?」


屋上に着いたはいいが見回す限り誰もいない。


「遅れてくるのかな」


そしてとりあえず真ん中へ歩いていく。


「クシュン!ううう、寒いな。よっぽど山に建っているのか?」

「そうか。寒いのか」

「誰っ!」


いきなり後ろの方から声がした。


「驚かせるつもりはなかったんだが・・・申し訳ない」


ロストの後ろから魔術師の格好をした人が立っていた。真っ黒なローブを着ているため正確なことは分からないが声からして男ではないだろうか。


「あの・・・あなたが僕を鍛えてくれる先生ですか?」

「ふむ。まあ君を鍛える行為をする、という点では間違っていない。但し、先生というには少し違うかもしれないな」

「?」


自分を強くしてくれるのなら先生や師匠、というのが普通ではないのか?


「あの、僕を強くしてくれるんですよね?」

「まぁそうなるね」

「じゃあ先生ですよね?それとも師匠とお呼びした方いいですか?」

「そうさな・・・その呼び方は今から・・・そうだな、8年程したらそう呼んでくれ。別に師匠でも先生でも何でもいいぞ」

「?」


やはりロストはローブの男が言っている事がよく分からず首を傾げる。


「あの、からかってるならやめてください!僕は強くなるためにどんなに辛い修行でもやるって覚悟で来てるんです!」


ロストは自分の覚悟を嘲笑われたような気分になり少し不機嫌な口調でそう言う。


「あはは。そうかいそうかい。別にからかってる訳じゃないんだ。真実を言っているだけさ」

「だからそういうとこがからかってるってーー」


しかし言葉の途中でロストの言葉は遮られる。


「まぁ人の話は最後まで聞こうや」

「っ」


男から尋常ではない殺気が自分に向けて放たれる。


「いいか?今から君に行うカリキュラムは君の想像を絶する段取りになってるのさ。まず今の殺気に耐えられない時点で大分生き残る確率が少ないって分かったよ」

「・・・」


一体自分の修行はどんなことをやるのだ、そう思いながらも内心それでも強くなれるのなら、そう思ってそれでもやるって意識を込めて相手を睨みつける。


「ふむ。じゃあ一つ君に聞こうかな」

「・・・」

「君は、なんのために強くなるんだい?」


それは男としても是非聞いておきたい事柄だった。


「・・・僕は、生まれてから6年で全てを失いました」

「ほぉ?」


男は興味深そうに聞いている。


「まず最初に愛情を失いました。その次は名前、その次は友達、そして母親」

「・・・」

「挙句の果てに小さい頃に仲が良かった女の子との小さな約束事まで失いました」


ロストの眼はあまりに多くの悲しみを知った眼だった。そしてその悲しみの中に混じるとてもとても大きな憎悪。こんな目は数多の戦争を経験した者ですらお目にかかれない程のあまりに多くを失った瞳だった。きっと今述べたのはロストのほんの一部の事柄だろう。彼はもっと多くの経験をしたはずだ。


「だからこれは個人的な恨みです。自分を傷つけた兄妹が憎い。母を殺した父が憎い。名前を奪った弟が憎い。そして自分を散々傷つけてゴミクズのように捨てた家が憎い。そんなちっぽけな個人的な恨みです。だから・・・」

「だから?」

「ぶち壊すんですよ。あの家の何もかもを。何の力もないから。一般市民ですら魔力は最低限持っている。なのに僕には何もない。だからって僕を生んでくれた母親すらも悪魔なんて言って処刑する。そんなあの家を壊したくて壊したくて。だから力を求めるんですよ」

「そうか・・・」


ロストの言葉には憎悪なんて言葉じゃ足りない程の憎しみと悲しみと怒りが籠った言葉だった。そしてそんな言葉を向けられたローブの男の反応は・・・


「ふむ・・・本当に今回の子供達はどいつもこいつも危ない野望を秘めてるな」

「・・・」

「まあいいんじゃないか?力を求める理由は君の自由だ。別にどんな理由でもいいんだよ。僕は」

「ならなんでそんな質問を?」

「なんとなく、かな。まあいいや。そろそろ修行を始めようか」

「・・・お願いします」

「うんうん。これはとても厳しい修行だからね。君が・・・生き残れるといいなぁ」

「え?」


いきなりロストの足元に魔法陣を現れその魔法陣が光り始めた。


「まず第一の修行はね~」

「ちょ、ちょっと!これ、どういうことですか!!」

「生き残ること。武器はナナからもらったんでしょ?それを駆使して生き残ってね~」

「なっ・・・」

「ちなみに今から君が行く場所は「魔神の食堂」なんて言われてる物騒なところだから」

「そんなっ・・・」

「じゃ、頑張ってね~」


そしてロストは生まれて6年、本当の死地に旅立った。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

いよいよ本編開始ですね。筆が進む進む。死地へ転移したロスト。どう生き残るか、見ものですね。

誤字脱字がありましたらお手数ですが報告よろしくお願いします。

応援、感想、アドバイス、お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ