IF たった一つの行動で
実は密かに考えていたもう一つの物語。
「どういう事ですか!」
適性検査が終わった後、自分の父親であるロード・アーサーにセレナは詰め寄る。
「何のことだ?」
「とぼけないでください!ルークの事です!!」
「ああ、あの無能者の事か。セレナ、あいつのことは忘れろ」
ロードはセレナに命令する。
「お父様!」
「話はそれだけか?ならば私は行かせてもらう」
「待ってください!」
そのままロードは扉の奥に去る。
「・・・・ルークッ!」
セレナは我慢できず城を飛び出し、ランスロット家の屋敷を目指し駆け出す。
「貴方は私が守る!絶対に、守って見せるから!!」
駆けながらセレナの中に虫の知らせ、というべき一つの考えが頭の中を駆け巡った。
あのアーサー家の当主が今私がランスロット家に向かっているという事を考えていない訳がないのではないか?
「っ!!」
全力で足を止め、今の考えを頭の中で組み立てる。そして考えれば考える程にあのロード・アーサーが自分の考えを呼んでいるという説が真実味を帯びていく。
「ならどうやってもお父様に察知されない方法で向かうしかない・・・・」
考えろ、考えろ、考えろ・・・・頭の中のもう一人の自分がひたすら声をかけてくる。
「私自身が外に出ては駄目だ、確実に使い魔、もしくは家の者が玄関を見張ってる。直ぐに情報が向こうに回ってしまう。じゃあ姿を隠しつつ外に出る・・・・」
ひたすらに頭を回す。自分の半身とも言える大事な人の運命がかかっている。チャンスは一度、失敗は絶対に許されない。今までの日常から、訓練から、戦闘から、何か鍵を探す。身を隠せて、常に外に出ているもの。
「・・・・ゴミ」
天啓としか言い様のない案が思い浮かぶ。常に自分の屋敷から外へ出ていて、身を隠せる代物。
「食堂!」
自分の屋敷の中で食事をする場所。その奥にある厨房、料理で使った材料のいらない部分をダストシュートに捨てていた。そこから外へ抜け出そう。
「風よ、我が身を包み姿を隠せ」
念を入れて気配と姿を消す魔法を行使する。
「急がなきゃ」
食堂に忍び込み体勢を低く這うようにダストシュートに近づく。
「今の内に行かなきゃ!」
周りに誰もいない事を目と気配で確認しダストシュートに飛び込む。
ドスンッ!
「ったたた・・・・」
想像以上の衝撃と痛みに若干涙目になりながらもセレナは無事外に出れた事を確認する。
「良し、後はランスロット家の方に・・・・駄目か、必ずそっちも家の関係者が見張ってる。どうにかしてルークを見つけないと・・・・」
どうすればいい・・・・外に出られたのに目的の人物を見つけられないのでは意味がない。
「・・・?」
ポッ・・・・ポッ・・・・
「雨?」
ザアアアア
途端土砂降りが降り始めた。
「ここは・・・・路地裏?」
辺りを見渡せばこの場が路地裏であることが伺えた。
「・・・・うっううううう」
「?」
土砂降りの中、一つの嗚咽が路地裏に木霊した。
「・・・・」
セレナは声の主の元に急ぐ。
「う・・・・」
「ルーク!!」
「え?」
倒れ伏していたロストにセレナは駆け寄る。
「大丈夫!?」
「何で、セレナが・・・・」
「そんな事、どうでもいいわ」
セレナは断言する。
「どうでもいいって・・・・家はどうするんだ!」
「あんな場所、居たくないわ」
「でもっ」
「貴方が存在しないのなら私の生きる意味は無いに等しいわ」
「っ、それでも僕は魔力が無いし、魔法も剣術もまともに出来ない」
「それでも、よ。私は貴方といたいの」
そのままセレナは微笑みながら一つの提案をする。
「一緒にこの国を出ましょう」
「え?」
「遠い、遠い国で。誰も付いてこられない様な場所で暮らしましょう」
「いいの?」
「勿論。貴方といられるのなら他に何もいらないわ」
「セレナ・・・・」
二人は手を重ね、立ち上がる。
「行きましょ!」
そのまま二人は歩き出す。
雨は既に止み、日が出て二人の道筋を照らし出していた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
前書きの通り思い付きはしていたものの書くかどうか悩んでいたのですが・・・・IFってあるし本編には関係ないしで・・・・いい、ですよね?ただこのルートだともう一人の少女は永遠に・・・・。パラレルワールドってやつですかね。作品の空気は壊さなかったと思うのでこんなIFもお許しください!m(__)m
一応これで「有無の騎士」は本当に終わりです。もう書きたいネタも無くなりましたから。
実はこの話は筆者のウォーミングアップだったり・・・・という無意味なフラグ建ててみたり。新作投稿するかは・・・・気分、モチベ、プロットが揃ったらですかねぇ。一応プロット制作には取り掛かる・・・・はず、そう、きっと・・・。期待しないで待っててください。