第六十九話 入国
大変長らくお待たせしました。ただ書きたかったこと、話を書きなぐりました。
さあ、復讐編終了まで突っ走りましょう!!
大国アヴァロン。その正門に一人の青年が現れる。白のローブを被り、不気味な骸骨を模した面を付け、素顔は隠れている。
「止まれ!」
「何か?」
「入国には旅券がいる。見せてもらおうか」
「あー、そうだったな・・・そんなの必要だったか」
「なんだ、失くしたのか?」
「あー・・・うん」
「金で代替えすることも出来るぞ」
「あ、そうなのか。じゃあそれで頼むわ」
「金貨二枚だ」
「うへぇ・・・結構するな」
「ないなら入国させることは出来ん」
青年は嫌そうな顔をしながら懐から金貨を二枚差し出す。
「確かに、安心しろ。帰国時に返してやる」
「へぇ、そういう制度」
「返してやるから名前、教えて貰えるか」
「ああ、ロスト。ロストだ」
「ロスト、ね。入国の目的は?」
「ん~・・・ちょっくら知り合いに会いに、かな?」
「了解だ。存分にアヴァロンを楽しんでいけ」
「ああ、楽しんでいくよ」
正門にロストは足を踏み入れ息を一つ。
「ああ・・・遂に来た」
正門を通ればアヴァロン一活気に溢れる大通りに出る。食材屋、武器屋、防具屋、飲食店、冒険者ギルド、商会ギルド。全てが揃いいくつもの店が並び立つ。
「すんげえ活気溢れてる街並みだこと」
そのまま歩きながらお腹を摩る。
「・・・腹減ったな」
飲食店に足を踏み入れる。飲食店の中から元気なウェイトレスが出てくる。
「いらっしゃいませ!」
「ああ、空いてる席あるか?」
「何名様ですか?」
「一人だ」
「一名様ですね!丁度席がお一つ空いているので、そちらでどうぞ!」
「ありがとう」
そのまま案内される席へと座る。
「メニューをどうぞ!」
「ああ、ありがとう。今日のおすすめは?」
「こちらの中の三種類からお選びください!」
「肉系、野菜系、魚系の三種類、か」
「シエスタちゃん!別のお客様の会計お願い!」
「あ、はい!ではごゆっくり!」
「ああ、ご苦労様」
メニューを見て全てを確かめるように見回す。
「ふーむ、何にするかな・・・気分的には・・・肉か」
ロストは肉料理を食べることを決め注文を頼む。
「すいません、この暴れ牛のハンバーグください」
「分かりました、少々お待ちください」
店員は忙しそうに厨房に引っ込む。この店は比較的繁盛している飲食店のようだ。
「お待たせしました!暴れ牛のハンバーグです」
「どうも」
非常に美味しそうなハンバーグが運ばれてくる。
「さて、食うか。しかし、エルの奴遊び心満載だな。ご丁寧に口元開くのかよ」
ハンバーグを食べ進める。
「・・・・」
黙々と食べ進め食べ終える。
「ご馳走様、会計を頼む」
「はーい」
「あ、さっきの」
「あ、骸骨のお面を付けてた人!」
「そっちは・・・シエスタ、だったか?」
「はい!どうでした!?うちの店」
「ああ・・・・美味しかったよ」
「もし良ければまたうちに食べに来てくださいね!」
「・・・・ああ」
そのまま店を後にする。そしてロストは大通りを回り路地裏を見つけそこに駆け込むように入る。
カシュッ
面を外しすぐにその場で蹲る。
「・・・うっ、うおええええええ」
蹲りすぐに嘔吐する。食べた物を少しでも体内に入れるのを拒むかのように嘔吐を続ける。
「ハァ・・・ハァ・・・うっ」
その後まるで体内に入れた物全てを吐き出すように暫く嘔吐き続けた。
「やっぱ、ダメだな。この国の何かを食べたら精神的に拒絶反応が出ちまう。早く殺しに行こう」
そのまま面を付け直し路地裏を出る。
「くくっ、待ってろよ。もうすぐ虐殺の時間だ」
「おい、止まれ!」
「・・・」
「ここから先は貴族街だ。許可がないと入れる訳にはいかん」
「あ?」
「分からなかったか?この門より先は貴族の招待状、もしくは口添えがなければ通す訳にはいかないんだ」
「行かなきゃいけない用があるんだ。通してくれ」
「ダメだ」
「・・・こいつ」
ロストは貴族街の門にて足止めをくらっていた。
「許可や紹介がないなら帰れ」
「・・・ころ」
す、と言いかけた時、その場に美しい声がかかった。
「ごめんなさい、私の友人なの」
「こ、これはセレナ様!!」
「ッ!!」
「彼は私の友人なの。通してくれるかしら?」
「セレナ様のご友人とは露知らず、本当に申し訳ありませんでした!!」
「いいのよ。お勤めご苦労様。さぁ、行きましょう」
そのままセレナに先導されてロストは歩く。
「何故俺を助けた?」
「困ってる人を見つけたら助けるようにしてるのよ。それにしても随分と変わった面を付けてるのね」
「趣味だ」
「面白い趣味ね」
セレナは誰もが見惚れる花のような笑みを零す。
「今日ここには何をしに?」
「悲願を果たしに」
「悲願?」
「ああ。本当に会いたかった人達がここにいるんだ」
「会いたかった人、か。ねえ、少しそこで一緒にお茶でもどう?」
「・・・いただこう」
そのまま近くの喫茶店に入る。
「いらっしゃいませ・・・これはセレナ様」
「いつもの席といつもの紅茶を二つ、お願いできるかしら?」
「分かりました。少々お待ちください」
店内の静かな雰囲気の中だがセレナが現れたことで少々ざわつく。
「この喫茶店はね、あんまり騒がれないから私気に入って何度も来てるの」
「へぇ」
店内の奥にあるテラス。そこには白色のテーブルとイスがセットで置かれている。
「そっちに座って」
「ああ」
二人で席につき紅茶が来るのを待つ。
「不思議ね、あなたは私の事をどうこう言わないのね」
「どうこう?」
「一応私、ここの国を治める立場なんだけど・・・色々騒がれるのよ」
「王族だからか?」
「多分そうなんだけれど・・・貴方は私が王族って言ったのに全然態度も変わらないのね」
「ふん」
「うふふ。それでここに誘った理由なんだけれど、貴方と少しお話したいなって思って誘ったの」
「話し?」
「ええ。まあちょっとした昔話なのだけれど・・・」
「昔話?」
「ずっと昔にね、凄く好きな人がいたの。ううん、今でも好きね。でも彼、途中でいなくなったの」
「何故?」
「・・・少し、理由があってね」
その時のセレナはとても憂いを帯びた表情をしていた。
「なあ」
「セレナでいいわ」
ロストは少し面食らったように驚くがすぐに立て直す。
「セレナはその時、どう思った?」
「・・・すごく悲しくて、辛くて、でもなにより悔しかった」
「悔しい?」
「うん。その人が凄く苦しいときに、何もしてあげられなかった。それがどれだけ悔しかったか・・・」
「そうか・・・よっぽど好きだったんだな、その人の事」
「うん、今でも好き」
「国は?」
「え?」
「・・・この国は好きか?」
その時のロストは一つの真理を求めるようにセレナに問を出す。
「・・・うん」
「もしその好きな国に仇なす存在が出てきたら、どうする?」
「その時は私の全力を持ってその存在を消し去ります。この国の国民まで泣かせる訳にはいかないから」
「・・・いい人だな、セレナは」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
「そんなセレナに俺からささやかな贈り物をしよう」
そう言ってロストは懐から一本の矢がテーブルの上に置かれる。
「これは確実に君の願いを叶えてくれる矢だ。いざという時に使うといい」
「いざという時?」
「ああ、いざというときだ。それじゃ、俺はここでおいとまさせてもらうよ」
「え、でもまだ紅茶が」
「急用が出来たのさ」
「さっき言ってた悲願?」
「ああ。どうやらその悲願が叶いそうなんでな。行かせてもらう」
「そう・・・残念ね。もう少しお話したかったのだけれど、しょうがないわね」
「またな」
「またね」
そう言ってロストは喫茶店を出る。
ロストは思った。
ああ、どれだけこの時を待ちわびただろう。母を殺され、名を奪われ、存在を奪われた。かつての自分は何も出来ないただの子供だった。でも今は違う。今日この日のために力を得た。痛みに耐え、様々な化物を相手にしてきた。何度心が折れそうになっても、復讐心が自分を支えた。絶対に妥協しない、許さない。
十二魔騎士は一族郎党皆殺しだ、躊躇も甘さも必要ない。今自分の心を満たすのは暗く、熱い憎悪の炎だけ。身を焦がされる勢いで憎悪の炎は際限なく燃え上がる。だがこの炎を抑える必要はない。
この者達のせいでかつて幸せになるべき二人は引き剥がされた。
この者達のせいで何の罪もない一人の女性の命が奪われた。
ああ、もう我慢する必要はない。存分に殺そう、存分に滅ぼそう。
「・・・さぁ、復讐劇の幕開けだ」
そのまま十二魔騎士が住む国の中心部に歩を進めた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
皆様、約2カ月、本当にお待たせしました。ええ、復讐編を書き上げました。
これから前書き、あとがきは使いません。
そしてこれだけは言わせてください。
ここまでお待たせして本当に申し訳ありませんでした。
それでも応援をくださった方々、失踪していないことを信じてくださった方々。
本当に、ありがとうございました!!!