第七話 集められた子供達
「迷った・・・」
ロストは薄暗い砦の中を歩き回る。途中途中に魔ロウソクの光が怪しげに揺らぐ。
「どこへ向かえばいいか聞いておけば良かった・・・」
ロストは絶賛迷子中なのである。一体どこへ行けばいいのやら。今は自分の勘のみがコンパスだ。
「広すぎるだろう・・・」
彼はさらに歩き回る。どこへ行けばいいのか分からないがとにかく進む。そしてそこから5分ほど歩き続けると、とても大きな扉があった。
「ここ、なのかなぁ」
ロストは不安に思いながらも他に行く宛もなくしょうがなくこの扉に手を置くことを決める。
「ふっ」
扉は見た目ほど大きな力を必要とせず苦もなく開いた。しかし開いていく様はこの扉の大きさに相応しくゆっくりと威厳を覗かせながら開く。
「ここで合ってるのかな・・・」
そしてこの大広間に入った時だった。
「ん?」
「え?」
「新しい人かな!?」
「何事?」
「誰か来たのか?」
「ムグムグ?」
「ひっ」
「・・・」
大広間には8人の少年少女がいた。
「え、えっと・・・」
ロストはいきなり8人もの少年少女達に一斉に見られ少し戸惑う。こういう時、なんて言えばいいのか・・・久しく他人との会話なんてしたことがなかった。6歳になってからの日常の内容が濃すぎた為に他人との接し方を忘れている。だが自己紹介という最も基本な行為は忘れておらずとにかく最初は自己紹介をすることにする。
「は、初めまして。ロストといいます」
違和感はなかっただろうか?そんな不安を胸に秘めながら視線を前に向ける。
「へ~。お前、ロストって言うのか。俺はトール。よろしくな!ロスト!」
「よ、よろしくお願いします」
トールと名乗った少年は髪の毛が黄色、瞳の色も同じ黄色で身長は子供にしては長身。体つきもすごい。
「おいおい、お前何歳だよ?」
「ろ、6歳です」
「なんだ、俺は8歳。2年しか違わないじゃないか。敬語なんていらねぇよ。タメでいいぜ!」
「う、うん」
トールはどうやらとても豪快な性格のようだ。きっといい兄貴分なのだろう。頼りになりそうだ。そして目線を右にずらすと・・・
「?ああ、初めまして。アルテミスよ」
アルテミスと名乗った女の子はセミロングの綺麗な水色の髪の毛をし、瞳の色はまるで血を思わせる赤。身長は自分より少し小さいか?という程度。しかし将来は間違いなく美人になる事を容易に想像させるほどの可愛い子だった。
「よ、よろしくお願いします」
「私も敬語はいいわ。疲れるもの」
「わ、分かったよ」
綺麗な子に目を向けられ少しドギマギしながらも頷く。そしてまた目線をずらそうとした所で・・・
「初めまして!あたしヘスティア!ティアでいいよ!よろしくね、ロスト!」
いきなり挨拶され、少し驚くロスト。
「う、うん。こちらこそよろしく」
元気に自己紹介してくれた少女は自身をティアと名乗り、自ら積極的に仲良くしようとしてくれている。少し短めに切り揃えられた燃えるような赤髪。瞳は茶色をし、肌も少し焼けている。ここに来る前は余程元気に外で遊び回ったのだろうか・・・とにかくこの子とは仲良くやれそうかな、そう考えて視線を更に別の方に向ける。
「初めまして、ロストといいます」
「初めまして、ですわね。私レアと申します。以後お見知りおきを」
「は、はい」
レアと名乗った少女はどこかのお嬢様なのだろうか?そう思わせるほど高飛車なところがある。しかし見た目は金色の髪を腰まで伸ばし、瞳は碧色。身長は小さいがそれもまた彼女の可愛さのプラスに働いている。彼女も絶世の美女になるだろう。そしてまた別の人に声をかける。
「初めまして、ロストといいます」
「ああ。知ってる。俺はアレス。よろしく頼む」
アレスと名乗った少年は黒髪を短く切り揃え、瞳も黒色。身長は大きすぎず、小さすぎず。そして腰には少し変わった形をした剣をつけている。彼はこの辺出身ではないのだろうか・・・?そう疑問を持ちつつ次の人へ質問を移す。
「ムシャムシャ・・・ゴクン」
「えっと、初めまして。ロストです」
「うん?ああ、初めまして。ハデスだ。よろしく~」
そんな軽い自己紹介を残し、また果物を食べる。さっきからハデスは果物ばかり食べていたがそんなに好きなのだろうか?彼は身長が高め、髪はアレスと同じ黒。体はあんなに食べているのに太くない。不思議に思いながらもまた別の人に質問をすることにする。
「ひっ」
「あ・・・」
自己紹介をしようとしたらすぐに後ろの柱へ逃げられてしまった。一応柱に近寄って自己紹介だけはしておくことにする。
「ロストです。よろしくお願いします」
「・・・・・・・タナトス」
蚊の鳴くような声で名前を告げられる。しかししっかりと聞こえた。
「うん。よろしくね、タナトス」
「・・・・・・」
柱から頷く気配が伝わってきたので大丈夫なのだろう。そして最後の一人に声をかけることにする。
「ロストです。よろしく」
「・・・・」
大分会話に慣れてきたロストだったが彼は一行に相手にすることなく名前まで名乗ってくれずにただ沈黙する。ロストはこれは意味がないか、と早々に踵を返す。これで全員に挨拶はできたので手持ち無沙汰になる。ロストはまたトール達と会話しようとトールがいる方へ歩を進めようとした時だった。
「ほぉ、これが今期の有望株か」
全身黒一色の服装をした男が扉の前に立っていた。
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