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有無の騎士  作者: 七咲衣
魔神の微睡みは幾ばくか
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第四十三話 日常

新章突入です

そこでは幻想的な庭が広がっていた。辺り一面に広がるのは紅色の薔薇、少し奥を見れば石造りの噴水がありその噴水からは澄んだ水が流れている。

そんな幻想的な庭に一人の青年が立っている。銀色の髪を持ち、彼を覆うのは漆黒の外套。下に履いているのも黒一色。しかし彼を纏っている黒色は消して不快な色ではなく、寧ろ彼にとても似合っていた。そして彼の周囲はまるで辺りに冷水をばら撒いた時のような雰囲気があった。


「・・・・」


青年は無言で目を閉じて佇んでいる。そして青年の回りに突然子供の握りこぶし一つ分程の大きさの球体が高速で飛来する。


「フッ!」


バンッ!


青年の手が漆黒の外套から視認も厳しい速度で飛び出る。そして青年の手に握られた武器の引き金が躊躇いもなく引かれる。

ヒュッ!ヒュッ!

バンッ!バンッ!


「・・・」


また突然に子供の握りこぶし一つ分程の大きさの球体が無数に放たれる。


バンッ!バッ!ババッ!ババッ!


再び青年は武器の引き金を引く。


ヒュッヒュッ、ヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!


「・・・」


青年はずっと外套の内側に入れていた左腕を外側へとさらけ出す。そしてそちらの腕にも同じ武器が握られていた。そしてその武器の引き金も何度も引く。


バンッ!ババンッ!バンッ!バンッ!


「・・・・」


青年は冷静な瞳で標的ターゲットを視認し再装填リロードにかかる。そして弾丸を左腕から飛び出させる。そして視認も難しい速度で銃の空薬莢を排出し銃の中に神業に等しい正確さで装填する。当然両手は銃で埋まっているので当然空中で行った。それだけで青年が銃の扱いに長けている事がよく分かる。


バンッ!バババババンッ!


左右の銃から6発、6発、軽12発の弾丸が全て球体の真ん中を正確に射抜く。


「・・ふぅ。こんなもんか」


青年は銃を構えていた腕を下ろし息を一つ吐く。


「ロストー」

「ん?」


ロストと呼ばれた青年は自分を呼んだ声の方向に振り向く。


「ああ、クロエ」

「また鍛錬してたの?」

「うん。少しでも銃を触るのを怠ると銃の腕前が鈍るから・・・」

「それはまた、真面目なのか馬鹿なのか」

「銃を抜くのは速度が命だからさ。ちょっとでも速度が落ちてたら食堂の魔獣共に一瞬でやられるよ」


ロストはそう言って苦笑する。


「それに自己鍛錬は俺のここでの唯一の暇つぶしなんだ。他にやる事ないからね」

「え~?私とのスキンシップは~?」


そう言ってクロエと呼ばれた女性はロストに飛び込んで抱き着く。


「ちょ、クロエ!急に抱き着くな!銃持ってるから!危ないから!」

「ダメなの?私はこんなにロストのこと好きなのに・・・」


クロエは目に涙を貯めてウルウルし始め今にも雫が零れ落ちそうになっている。


「え、嫌、ダメ・・・じゃないけど」

「じゃー抱き着く~♡」

「おぉい!」


その後しばらく抱き着かれてワタワタし慌てるロストをクロエは楽しそうに眺めながら抱き着いていた。









「それで、ロスト君。義手義足、銃の使い道はどうだい?」

「ん?ああ・・・そうだな。調子いいぞ」

「それはよかった。何かアイディアなり付けてほしい機能があったら言ってくれよ。すぐに取り付けるさ」

「お前の技術者魂には頭が下がるよ」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

「褒めてるんだよ」

「も~、ご飯冷めちゃうよ。早く食べなよ~」

「へいへい」


それからロスト達は夕餉を進める。そしてそれをどこか眩しいものを見るように、クロエは目を細めていた。


「それにしても・・・」

「どうした?」

「ロスト君がこの庭園に辿り着いてどれだけ経つかな」

「うん?俺は自覚してなかったからな~・・・イマイチ覚えてないや。クロエは分かるか?」

「ロストがここに辿り着いてでしょ?うーんとね・・・」


クロエが指折り数え始める。


「えと、ロストがここに辿り着いて7年、ロストが魔神の食堂に入ってから合計9年だね~」

「もうそんなに経ったのか・・・」

「入ってきてからロスト、随分強くなったよね~」

「あはは、ありがとう」

「もう世界に出たら化物扱いだろうね~」

「いいさ。それだけの実力がないと・・・12魔騎士を力で捻り潰せないだろ?」

「・・・そうか」

「ああ」


それから夕餉が終わり食堂の庭園が夜になる。

その中でクロエとロストは同じベットの上で会話をしていた。


「ねえ、ロスト」

「何?」


二人で天窓に移る満点の星空を眺める。


「私がいなくなったら・・・どうする?」

「クロエがいなくなったら?」

「うん」

「あはは、想像した事がないな」

「それで、どうするの?」


クロエは瞳にやけに真剣味を宿してロストを見つめる。


「そうだな・・・もし、クロエがいなくなったら」



「どんなところでも迎えに行くさ。どんな手段を使っても、ね」


「そう」

「うん」


最後まで読んでくださってありがとうございます。

投稿が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

今回の話の中に何か矛盾点がありましたらご指摘よろしくお願いします。


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