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有無の騎士  作者: 七咲衣
青年の過去
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第四十話 過去編 結末2

今回はちょっと変な感じで終わります。

「皆、用意はいいかい?」

「大丈夫だ」

「俺も大丈夫!」


僕は様々な人に自分の銃を渡す。


「最初に説明した通り狙うのは相手の隊長格だ。隊長格を狙撃できれば相手の指揮系統に多少なりとも影響を及ぼす事が出来るだろう。だから隊長格の狙撃、この一点に集中してくれ!」


僕が新しく作成した銃は遠距離からの狙撃に特化したものだ。多少の魔法の衝撃程度なら簡単に貫く威力を誇っている自慢の逸品だ。更にこの銃に遠距離でもよく見えるスコープを取り付ける事によって長距離からの狙撃が可能な状態だ。それにこれだけじゃない、まだ秘密兵器はある。


「まだ焦ることはない。よし!攻撃開始!」


僕は遠くに沈む夕日を見ながら攻撃を指示する。もうすぐ日が暮れる。これは好奇だ。これからは世界・・が僕達の味方をする。


「自然の力、馬鹿にしたらやられる事を教えてやる・・・」






「全軍!相手は遠距離から弓のような兵器を使用してくる!魔法障壁の展開を怠るな!」


12魔騎士の軍は相手が弓のような武器を使ってくることを聞いた瞬間自らがやる事を瞬時に理解し、魔法による障壁を展開する。


「ふぅ・・・我々は戦争の精鋭、そう簡単に突破できると思うなよ・・・」


彼はこの軍に参加して40年は経つベテランの隊長だった。これまで経験してきた戦争で弓を使ってきた国を相手に何度も何度も戦ってきている。故に所詮弓の威力を少し上げた武器を使ってきているだけ、とタカを括っていた。


「ふん、この程度で突破できると思われるとは・・・12魔騎士も馬鹿にされたものっ」


数多の戦争を経験してきた隊長格の男の頭が喋っている途中で頭が消し飛んだ。


「なんだ!?」

「隊長がやられたぞ!?」

「何を使った!?」







「呑気に立ち止まってくれるなんて、絶好の的だよ」


僕は先程狙撃を終えた銃のボルトを引き排莢を終えもう一度狙いを定め引き金を引く。


ドンッ!


僕が作ったリボルバーとは違う重い音を響かせながら僕のスナイパーライフルが殺意を宿した鉛玉を吐き出し的に向かい的の頭を砕く。


「2人目・・・次の的はどいつだ・・・」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


僕以外の重い銃声が僕の耳朶を打つ。


「あいつら、動揺しているな」

「未知の攻撃はあの12魔騎士も有効か」


町の人たちの嬉しそうな声がする。


「油断をしてはいけません。冷静に狙いをつけていきましょう」

「おう!」

「完全に日が暮れる・・・皆さん!暗視スコープを!」


第二の秘密兵器、暗視ゴーグルだ。世界は一時の暗闇に覆われる。今日は月も出ていない。向こうは火を灯して明かりを作るしかないだろう。だがこちらは火を灯さなくても見える。つまり相手は自分の位置を示さなければいけない。


「ゴーグルの調子はどうです?」

「すごい!暗闇なのにくっきりと見える!」

「よく狙えますよ!」

「火を灯しているところに間違いなく敵がいます。そこにスコープを合わせて隊長格を狙撃してください」

「分かった!」

「あとここに特別性の弾丸を置いていきます。敵が密集しているところに容赦なく撃ち込んでください」


第三秘密兵器、ロロナの無属性魔法で火、水、氷、風、雷、土、毒、麻痺、睡眠、空間、闇、光の12属性を付与したとっておきの弾丸だ。


「僕はまた新しい兵器の開発に戻ります。何かあった場合連絡をお願いします」


次は何を作るか・・・案はいくらでもある。すぐに取り掛かろう。

夜は更けてゆく・・・





「やつらめ・・・隊長格を殺しこちらの指揮系統を乱す気だな・・・」

「どうしますか?こちらの隊長が次々と殺されています。それにそれだけでなく我らの兵が密集したところに火属性魔法の爆発エクス・プロージョンが発動しています・・・しかし相手に魔法の発動する兆しは一つも見えません・・・」

「ちっ・・・ロロナめ・・・奴らにほだされたか?」

「ロロナ様ですか?」

「ああ、恐らくそれはロロナの無属性魔法の付与で何かに爆発エクス・プロージョンをつけてこちらに撃ち込んできているのだろう」

「ユウェル。どうする?このままでは暗闇なのもあってこちらが圧倒的に不利だ」

「ああ。だがあの遠距離攻撃は我々12魔騎士当主で対処しよう」

「俺達で兵達に魔法障壁を張るのか?」

「ああ。相手のあれだけの威力を誇る攻撃を防げるのは12魔騎士当主の障壁ぐらいだろう」

「分かった。すぐにかけよう」

「そういうわけだ。すぐに兵士を固めてくれ。向こうの攻撃で被害が恐らく出るだろう。それでも集めてくれ、障壁を張る」

「了解しました!」


夜が更けてゆく・・・





「相手の兵士が固まり始めたぞ!」

「よっしゃ!魔法が付与されたあの弾丸を使うぞ!」


町の住人達は傍にあった箱から特別な弾薬を取り出す。


「よっしゃ、吹き飛ばすぜ!」

「おー!」



「うわっ!?」

「ぎゃああ!!」


12魔騎士の軍は飛んできた弾に対応するまもなく被弾し、爆発に巻き込まれてゆく。


「どうする!?」

「もうだめか!!」


アヴァロンの兵士達がもうダメかと思っていたとき、唐突にそれは発動した。


「騒ぐな、この程度の衝撃なら俺達で防ぐ事は可能だ。お前たちは攻撃に気を使え」

「ユウェル様!」

「それに・・・もうすぐだろう・・・」

「もうすぐ・・・?っ!そうですね!」

「分かったら持ち場に戻れ。そして作戦を伝えろ。一度撤退だ」

「了解しました!」




「おい!12魔騎士達が撤退していってるぞ!!」

「やった・・・のか・・・?」

「やったぞ!!」

「俺達は勝ったんだ!」

『うおおお!!やった!!!』




「ふぅ・・・」

「お疲れ様」

「ああ、ロロナ」


僕は敵の撤退を見届けていた。しかし分かっている、アヴァロンに喧嘩を売ってしまった。これがどういう事か。


「なあ、ロロナ。これって大分マズいことしたよな・・・」

「そうね・・・なんていったってアヴァロンに喧嘩売っちゃったんだし」

「でも、撤退させることが出来た・・・」

「でも向こうはこの程度であきらめるかしら?」

「分からない・・・でも、やるしかない。そのために僕が出来ることは少しでも強い武器を編み出すことだけだ」

「勿論、私も手伝うわよ」

「ありがとう、ロロナ」


僕は作業の手を少し止めてロロナを抱き寄せ口づけをする。


「もうっ・・・」


ロロナは頬を染めながら嬉しそうに笑う。


「へへっ・・・」


僕も嬉しくなって笑う。この笑顔を守れるよう、頑張らないといけない。

空が白み始めていた。







「遂に、空が白み始めたか」


ユウェル・ガウェインは明るくなってきた空を見て笑みを深める。


「奴らに見せてやる、ガウェインの名は日が昇っている時こそ真価を発揮することを!」







「さて、次はどんな武器を作ろうか」


僕が次に作ると有利になる武器を思案していた時だった。


「エルッ!!」

「うわっ!?いきなりどうしたんだい?ロロナ、そんなに顔を青くして・・・」

「また攻めてきたの!12魔騎士が!」

「何だって!?」


急いで外に飛び出る。見れば一つの旗を持った軍団が先頭になって進んできていた。


「何だ・・・あれ・・・」


そして僕は驚愕していた。確かに奴らは強い、僕達よりずっと。それは認めよう。しかしそれは新たな武器で、作戦で乗り切ろうとしていた。なのに何だ?あの威圧感は・・・夜の時とは別人じゃないか・・・あんなのにどうやって打ち勝てって言うんだよ・・・


「【日の者】・・・」

「【日の者】?」


ロロナは憎々しそうにその言葉を口にした。


「ガウェイン家の人間は日が上がってからは能力が上がるの。それも比べ物にならないくらい・・・」

「能力が向上するのか・・・」

「ええ。そして皮肉な事に私はこの能力が特に謙虚に現れるの。今までは危なすぎて封印してたけど、そうも言っていられない状況ね」

「ロロナにも?」

「見てて」


ロロナは目を閉じ深呼吸を行い何事かを唱えた。その瞬間ロロナの纏う空気が一変した。


「うわっ!?」

「いきましょう」


ロロナが歩き始めた瞬間に回りの風景が炎の海になった。


「なんだ!?」

「出遅れた!!向こうから仕掛けてきてる!」

「向こうから!?」






「作戦は成功ですね、ユウェル様」

「当然だ。日中間、ガウェイン家に負けはない」


ユウェルはそう言って腕を振り下ろす。その瞬間町から巨大な火柱が上がる。


「全て焼き尽くすとしよう」

「承知しました」



「向こうは間違いなく私たちを徹底的に潰す気よ!」

「くそっ!」


僕達は必死に走る。今や町の至る所から灼熱の炎が吹き溢れ、何十人の人間が燃えつくされ、何百人もの人間は体の何処かを確実に炭化して、、何千人は我先にと逃げ出す。もう作戦なんて言葉は無意味だ、僕達は・・・・


負けたのだ。



「ロロナ!!」

「エル?」


僕は立ち止まってロロナの名前を呼び足を止める。


「この戦いは・・・もう僕達の負けだ」

「・・・」

「元はといえば僕が始めたような戦いだ。ケジメはつけなきゃいけない・・・・」

「それは!」

「違わない。何も違わないよ・・・僕が始めてしまった戦争だ。なら、僕がやるべきことは一つ。少しでも町の人達が逃げるための時間を稼ぐ事。これが僕がやるべき事だ」

「エル・・・」

「直ぐに死んじゃうと思うけど、1秒くらいなら稼いでみせるさ」

「私も行く」

「ロロナ!?」

「この戦争はエルが始めたって言ってたけど、その原因は私・・・それなら、私も行かないとおかしいよ。だから私も行く」

「でも」

「ダメだなんて絶対に言わせない」

「・・・・分かった。一緒に行こう」

「ええ!」


僕とロロナは駆け出した。







正門前、門が吹き飛んだ。そしてそこに一人の男が立っていた。


「お父様・・・」

「手こずらせてくれたな?ロロナ」

「っ・・・」


紛れもなくガウェイン家現当主、ユウェル・ガウェインである。


「さて、横にいるのは今回の戦争の首謀者か?」

「・・・・ああ」

「そうか・・・貴様のせいで中々の数の兵士を持っていかれた」

「戦争なんだ、どれだけ敵の兵を持っていくかだろ」

「確かに・・・それは真理だ。しかしこちらとしてもここまで損害を出した敵を悠々見過ごす訳にもいかないだろう」

「僕をどうする気だ」

「こうしよう」


ユウェルが手を振り上げる。その瞬間辺りから灼熱の炎が蛇のように渦巻きエルを燃やし尽くそうと襲い掛かってくる。


「くっ!」

「させない!」


ロロナが結界を張りエルを守る。


「これはこれは・・・」


ユウェルは心底意外そうにロロナを見つめる。


「ロロナ、お前さてはこの男に惚れているな?」

「・・・・」


ロロナは無言で首を縦に振る。


「ははは・・・まさかあのロロナが恋とは」

「何か問題でも?」

「問題か。大有りだ」

「たとえば?」

「その男は12魔騎士の人間ではない。これが一番大きな問題だ」

「またそんな下らない問題で!」

「下らなくなどない、これはれっきとした問題だ。12魔騎士の男と子を成さねばただの弱い人間が産まれるだけだ。12魔騎士に弱い人間はいらないだろう」

「愛さえあればそんなこと、些細な問題だわ!」

「力だ。力のあるものが産まれるのなら愛など要らぬ」


僕は話を聞いていてよく分かった。12魔騎士は力に憑かれた呪われた一族だということを。力さえあれば当人同士が互いのことを好きではなかったとしても関係ないのだ。


「ん?・・・・そうか」


ユウェルは耳を抑えて何か報告を聞く仕草をする。


「貴様らに一つ悪い知らせが入ったぞ。こちらにとっては朗報になるがな」

「何?」

「今現在を持ってこの町は壊滅。住人の全てを抹消完了したそうだ。そこにいる男という例外を除けばな」

「なっ・・・」


ロロナは地面に崩れ落ちる。


「お前ええええええ!!」


僕は溢れ出てくる怒りを抑えられず手元にあったリボルバーを引き抜き発砲する。


バンッ!バンッ!


「ほぉ、それか。貴様らが使っていた玩具は」

「死ねええ!」

「死なんよ」


ボッ!


僕の視界がいきなり上下反転する。


「え?」

「え、エルーッ!!」


ロロナの悲鳴が響く。僕の視界が黒く塗りつぶされてゆく。





「死んだか・・・つまらん男だった」

「エル・・・エルぅ・・・うっ・・・」

「何を泣いているのだ。あんな下らない男のどこが」


ユウェルの顔面に炎魔法が飛んでくる。


「これ以上彼を侮辱するなッ!!」


ロロナが悪鬼羅刹の形相でユウェルを睨み付ける。


「ユウェル、娘は見つかったのか?」

「ザイか。ああ、そこで泣きじゃくっているのだ」

「ほう・・・随分と見目麗しい少女だ」

「彼女はトリスタン家に嫁入りさせる予定だ。悪くはないだろう?」

「トリスタンか・・・確かにいい所の嫁を欲しがっていたな」

「ああ。おっと、噂をすれば・・・」

「ガウェイン卿!」

「これはトリスタン卿」

「余のロロナに会えると聞いて急いで来たが、ロロナはどこに?」


彼はタブ・トリスタン。剣術、魔術の才能があることは適性検査で分かっているが本人が動くことを極端に嫌い、遊び呆けていた結果大量の贅肉と脂ぎった顔を手に入れた。


「そちらにいますよ」

「おお・・・なんと麗しき姿よ・・・益々気に入った、余の39番目の妻にしてやろう」


そしてタブは己の権力と金にものを言わせ自分が気に入った女を嫁入りさせ性行為を重ね飽きれば捨てる。そんな男だった。


「エル・・・エル・・・・」

「ユウェル卿。ロロナが抱いている物はなんだ?」

「何、ただの死体ですよ」

「ロロナの趣味は分からんのう。まあ無理矢理連れていくとしよう」


そしてタブが近づきロロナに触れようとした瞬間だった。


バンッ!バンッ!


「ブアッ!!」


タプの体から二つの弾丸が突き抜けた。


「何者!?」


ユウェルとザイは一切気配を感じていなかった。


「折角お似合いの二人だ。引き離すことはないだろう?」

『!?』


二人は驚愕していた。それは当然だろう。二人が驚愕した理由は彼の髪の色にあった。

銀色の髪の毛。それは最強の証。銀の髪を持つ者は例外なくランスロット家と関係がある。しかしユウェルどころかザイも彼を見たことが無かった。そして彼は左手で誰かを抱き抱えていた。

腰まで流れ落ちる髪の毛は何色にも染まっていない白、肌も雪のように白いのにまるで不健康さを感じさせない。顔はまるで熟練の人形職人が何十人も集まり全員の最高作品の美しさを全て集めたと言われても不思議ではない整った顔。そして瞳はこの世全ての赤色の宝石を集めてその中から厳選された真紅の宝石をはめ込んだような透き通った紅色。

この世の生き物とは思えないような絶世の美女を抱きかかえていた。


「まあ俺は所詮足止めだ。少ししたら消えるさ。俺が来た理由の一つはお前たちを足止めすることだ」

「足止めだと?」

「ああ。足止めだ。ただ一つ難点があってな」

「難点?」

「ああ。俺は昔ちょっとあってな?12魔騎士を心底潰したい思いに駆られている。だから加減間違って殺すかもしれないんだ。死んでも恨むなよ?特にランスロット家よ」

「む」

「まあゆっくりやろうや」


そして青年から圧倒的なプレッシャーと殺気が放たれる。


「ん?行ったか・・・。何分足止めすればいいやら。あいつの話だと・・・まあ30分か。これだけ止めれば十分だろう」

「調子に乗るな!」


少年とユウェル、ザイとの戦いが始まった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

さて、これで一応過去編は終わり、となりますかね。ただ相当変な終わり方してるので普通に分かるかもしれませんがちょっと最後は次回の布石みたいな感じですね。次回で再び主人公のロストに戻ります。そして作者が最も執筆を夢見た結末は次回になってしまいました。今回の話は眠い頭で書いていたので変なことになっていないか心配です。

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