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有無の騎士  作者: 七咲衣
青年の過去
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第三十九話 過去編 結末1

長そうなので分割することにしました

「徹底抗戦してやろう」


ロロナを守るために僕は徹底抗戦を訴える。


「王様、よろしいですか?」

「むぅ・・・」


王様は難しそうな顔で悩んでいる。しかしこの王様は優しい。

通常こんなの考えるまでもなくロロナを12魔騎士に引き渡すことにするだろう。なのにこの王様は悩んでくれている。それだけでこの王様がどれだけ優しい王様かがよく分かる。


「勝算はあるのか?」


ま、当然聞いてくるよね。


「あります」

「どんな勝算だ?」


戦争初心者だらけの小国が戦争熟練者の精鋭達に勝つ勝算?そんなの一つしかない。


「銃を使います」

「お主が作ったあの銃か?」

「はい」


正直勝算と言えるほど大した物じゃない。でもこれしかないんだ。戦争慣れをしている連中を倒すためには連中が全く知らない未知の武力でかかるしか方法はない。


「正直向こうは戦争のプロフェッショナルの集まりです。勝つためには銃のようなプロフェッショナルも知らない未知の武器を使うしか思いつきません」

「ふむ・・・」

「それに、銃がいくら未知とはいえ恐らく向こうは1時間もすればこちらが使う未知の武器とはこのようなものだ、という推測くらいは建てられ2時間経つ頃にはあっさりと対策を施してくるでしょう。しかし、こちらが向こうより早く新しい未知の武器を作れば大丈夫だと思いませんか?」

「それはつまりどういう事なんだ?」

「銃撃を行って稼いだ時間内に僕が新しい兵器を考えます。そしてその作った発明品でまた相手に時間を稼ぎ、また新しいものを作る。これを繰り返せば敵は全滅させられます」

「何をいっておる!仮にその作戦の新兵器が上手く作動しなかったらどうするのだ!我が国は崩壊するぞ!」

「失敗はしません!!」


僕は広場全体に広がるくらいの大声で宣言する。


「失敗すればロロナを失うことになるのに、失敗なんてする訳ないじゃないですか。僕は絶対に成功させます」

「む・・・」


僕のやけに強気な言葉が王様を唸らせる。


「お願いします。僕からロロナを奪わないでください・・・」


僕は心の底から王に懇願する。


「むむむ・・・しかし・・・」


やはり王にとって国を左右する決断だ。そう易々と決断できる問題ではないだろう。しかしここで僕でさえ予想していなかった事態が発生した。


「やろうぜ!王様!」

「え?」


僕とロロナと王様の周りに集まっていた群衆の中の一人が言った。


「エルとロロナは俺たち国民の希望だ。エルの発明品で大変だった土木作業がどれだけ楽になったか」


ああ、そういえば町を探索してたら煉瓦やら石やらを手で一つ一つ運んでてすごく大変そうだったから手押し車っていう発明品を作ったんだけっけな。


「そうだ!いつも二人を見ているとこっちまで嬉しくなってくる!そんな希望の二人を引き裂くなんて、俺には出来ない!」


ああ、彼は確か僕とロロナが森へ行く時にゴブリンに襲われてて助けたんだったかな。


「そうだ」

「ええ、二人を引き裂くなんて考えられないわね」

「やろう!王様!」

「徹底抗戦だ!」

「そうだ!ロロナちゃんをあんな奴らに渡すな!」


群衆の皆は徹底抗戦の姿勢を出し始める。そしてそれを見ていた他の人達にも話が伝わり同じく徹底抗戦を唱え始める。噂はこの小国に瞬く間に広がり国民全員が口々に言い始める。


『徹底抗戦だ』

『二人を引き裂くな』

『自分たちなら倒せる』


そんな言葉が広がり王様に皆言う。そして・・・


「・・・・・・・・・・分かった」

「我が国はロロナ・ガウェインの引き渡しを拒否し!12魔騎士を迎撃する!!」



『ワアアアアアアアア!!!』


広場どころか国中が盛り上がる。


「エル・・・」


ロロナは目に涙を溜めて嬉しそうに言う。


「ああ、言ったでしょ?この国の人達は皆いい人なんだ。僕達ならやれるよ」

「うん」


方針は決まった。あとはやるだけだ。



やるかやらないかじゃない、唯やるんだ。



「皆!作戦を建てるよ!12魔騎士にはまだロロナを捜索中と言って時間を稼ぐ!」


こうして僕達の反撃が始まる。






「遅い・・・」


ガウェイン家当主、ユウェル・ガウェインは苛立ちに任せて辺りに魔力を散らし始める。ユウェルにとっては唯の苛立っているだけだったが周りの兵士たちは違う。ユウェルは12魔騎士、ガウェイン家当主の肩書きに恥じない魔力を持っている。そのため兵士たちは猛獣を前にした兎のように顔を青くして震えていた。


「まあそう苛立つなよ、ユウェル」

「ザイ・・・」


ランスロット家現当主、ザイ・ランスロット。ガウェイン家は12魔騎士の中でも上位の中の上位の家、そんな家の当主を宥められるのは必然的に同じ位かそれ以上の位を持つランスロット家程度だった。


「あまり苛立ってもいいことはないぞ?少しは落ち着け」

「しかし・・・」

「なに、もし何か向こうがしでかしたら滅ぼせばいいだけのことだ」

「そうだな・・・」

「今は待とう」


そして時は流れていく・・・







「皆、準備はいいかい?」

『おう!』


僕は精一杯時間を稼いだ。これ以上の引き伸ばしは向こうが待ってくれないだろう。本当はもっともっと時間が欲しかったがしょうがない・・・


「行くぞ・・・」


僕はロロナを守る、その言葉を胸に手に持つ銃に力を入れる。


「まずは最初の作戦だ・・・」


僕達は事前に決めた人数で城壁に上る。城壁に上った人々の手の中には僕が開発した銃をとにかく集めた。そして一斉に城壁の外へ向ける。


「さあ、戦争の始まりだ!」


一斉に僕達は銃の引き金を引く。そして何十、何百と集められた銃が一斉に火を噴いた。



ババババババババババンッ!!!!!!!



「何だ!?」


町の方から突如として鳴り響いた轟音に12魔騎士は狼狽えてしまった。


「うわあああ!!」

「ぐあぁ!」


突如として辺りにうめき声と悲鳴が飛び交う。辺りには血潮の匂いが充満し、幾多の死体が転がっていた。

ユウェル・ガウェインは一瞬で何が起きたのかを把握する。


「そうか・・・小さき国が我等に刃向かうか・・・・」


ユウェル・ガウェインは淡々と呟き、その言葉は滑るように降りてきた。


「敵前方。全軍、出陣」


驚くほど静かに、しかし驚くほど冷徹な声が大きくもないのに戦場に響き渡った。








「進軍してきたな・・・」


城壁から見えるのは土煙を上げながら大人数とは思えない速度でこちらに向かってくる。それだけで向こうが唯ならぬ統率がとれていることが分かる。


「流石王国の精鋭、その辺の国なら隊ひとつで壊滅されるだろうね。でもこちらには秘密兵器がある、その辺の国とは一緒にしてほしくないな」


僕の発明品はその辺の国の兵士100人より価値があると踏んでいる。


「皆さん、ポイントAに銃を向けてください」


僕が用意した一つ目の策、それは・・・


「発射!」


僕達は地面・・に向けて一斉掃射を行う。その瞬間地面から凄まじい土煙と爆発・・が起こる。向こうは当然何が起こったのか分からず浮き足立っている。


「まあそんな簡単に見破られたら泣くかな」


僕がやったことは簡単だ。ロロナを捜索中だと告げに行ってもらった人達にまず新タイプの爆弾を持ってもらう。新兵器は地面に設置した後なんらかの衝撃を加えると爆発を起こす。それを捜索中の件を告げた後帰り際にこっそりばら撒いてきてもらう。これで準備完了だ。


「あとは爆弾がばら撒かれているであろう位置に銃を打ち込めばいいだけだ・・・」


思った通り相手は混乱して何が起こったのかしっかりと認識していないみたいだ。


「さて、そんな悠長にしている時間はないよねぇ・・・」


向こうは戦争の精鋭達だ。もう既に優秀な兵士ならこちらの攻撃がどのようなものかほんの少しはつかみ始めているだろう。


「さて、新しい武器の製作に取り組まないとね。次は・・・アレ、試してみるか」








12魔騎士、ガウェイン家当主のユウェル・ガウェインは敵の攻撃に対しておおよその推測は立っていた。


「敵は遠距離からのみの攻撃だ。ということは近距離ではあまり使えない、もしくは力を発揮出来ない武器ということなのだろう。そして先程から探ってはいるが向こうに魔力の気配が全くない、となると推測出来るのは奴らのあの攻撃手段は恐らく弓のような物。もしくは弓より早く、正確で当たればほぼ確実に殺せる武器なのかもしれん。だが弓のようなものと分かれば大したことはない」


ユウェル・ガウェインは幾多の戦場を渡り歩いてきている。故に様々な武器を相手に戦ったことが何度もあった。


「まずは敵の弾が当たらないように障壁を張っておくのがいいか・・・」


そして当然相手の武器についての推測を立てられるのはガウェイン家だけではない。この場にはガウェイン家と同じくらいの実力を持つ家があるのだ。当然推測が立てられない訳がない。


「どうやら向こうは弓のような武器を使っているようだな」


ランスロット家である。彼らも幾多の戦場を渡り歩いてきている。それなりの数の修羅場は超えてきているのだ、この程度の物で倒せるのなら12魔騎士なんて到底名乗れない。


「やはりお前もそう思うか。全軍に障壁を張るように通達しよう」

「それがいいな」


二人は近くの兵士に作戦を告げ戦場に放つ。精鋭達は自分たちの主を疑わないため何の躊躇いもなく障壁を張り始める。


「これで大丈夫か・・・」






「ま、当然すぐに対策は立てられるよな・・・」


正直こんなもので向こうは倒しきれないことは分かっていた。予想の範囲内というやつだ。


「さて、直ぐに次の武器を用意するか。これは連射は出来ないが相手の頭を潰していくには最高の銃だろう。指揮系統が乱れれば下はぐらつくだろう。通常なら直ぐに立ち直るのだろうけど、生憎とこちらは通常じゃないんでね。少しはぐらつくだろう。なるべく部下たちに信用されてる隊長格を狙撃・・するとしようかな」


エルは町の兵士たちに新たな銃を渡してゆく。


「まだまだこちらには武器がある。奴らに教えてやれ!僕たちは唯の烏合の衆じゃないってことを!」


『おお!!!!』




「まだ戦は始まったばかりだ」


最後まで読んでくださってありがとうございます。

さて、遂にクライマックス突入です。本来ならばこの話で完結させる予定でしたがちょっと長くなりそうなのでキリのいいところで分割することにしました。これで過去編が終わると思った方々には申し訳ありませんがこれからもこの作品をよろしくお願いいたします。


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