第四話 捨てられた無
「失礼します」
「来たか・・・」
ランスロット家当主のレウス・ランスロットが自分を迎える。しかし目は息子に向ける視線ではない。もはや路上の邪魔な石を見るような目でこちらを見てくる。
「さて、お前をここに呼んだ理由だが・・・」
「なんでしょうか」
「貴様は今、即刻この家を出て行け」
「・・・え?」
ルークは言われている意味が分からなかった。今のは聞き間違いだろうか?そう思い問尋ねる
「お父様、今・・なんと?」
「俺を父と呼ぶな!このランスロット家の恥が!!!」
ガスッ!
「うっ!!」
レウスの腰にあった鞘付きの剣に殴り飛ばされる。当然6歳児の子供だ。戦場で鍛え抜かれた父の腕力に勝るはずもなく簡単に吹き飛ばされる。
「ゲホッゲホッ、ウッ」
「オエエエ」
胃液がせり上がってきて嘔吐してしまう。当然だろう。そして今彼の肋骨にヒビも入っただろう。それほどの力をぶつけたれたのだ。
「分かったか?もう一度言う。ここを去れ。今のはせめてもの情けだ。それと・・・」
ヒュッ
なにかがルークの前に投げられた物があった。それは・・・短剣だった。そしてそれはルークにも見覚えがある。いや、見覚えがあるどころではない。これは儀式の後の彼に唯一優しくしてくれた人物の所持物だ。いつも肌身離さず持っていた。それが・・・何故ここに?そう思う。
「こ、これ・・・」
「それと、それの持ち主からの手紙だ」
一枚の紙を渡される。それにはこう書いてあった。
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私の親愛なる息子、×××へ。これを読んでいるころ私は恐らく殺されているのでしょう。私はあなたを才能のある息子に産んであげられなかった。私はどうやら無能の息子を生んだランスロット家の悪魔、ということで処刑されるようです。しかし遺品を一つだけ渡していいそうなので短剣を渡すことにしました。あなたに剣を渡しても意味がないのかもしれませんが、その短剣があなたの命を守ってくれると信じて渡しておきます。私があなたに言えることはただ一つ
強くなりなさい、私はあなたには何か別の才能があると確信しています。
最後の言葉になりますが、私はあなたを愛しています。生きてください。
××××より
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「お前の名前はもはやない。お前がルーク・ランスロットを名乗ってみろ。殺してやる、今処刑した忌まわしき母のようにな」
12魔騎士は巨大だ。当然当主は何人もの愛人を作り子を成す。血筋を途絶えさせぬように。
「・・・母を、殺したのですか?」
「当然だな。あんな女と体を交わらせたなど、穢れ以外なんでもない。まったく、魔力が多かったのと容姿だけで決めたのは失敗だった」
「そんな、そんな下らないことのために母を殺したのか?」
「なんだ?その口調は。それに下らないだと?我が家では大きな問題だ。無能は死んで償わなければならない」
「ふ・・ふざけんなああああ!!!!」
ルークは殴りかかる。敵う敵わない関係なく怒りに任せて殴りかかる。当然そんな攻撃は当主が喰らうはずもなく・・・
「ふんっ」
鼻を鳴らしてパンチを避け、それどころか
ガスッ!バキッ! パリンッ!
腹を思いっきり蹴りつけさらに鞘付きの剣で思いっきり押し、2階のこの部屋の窓からルークを投げ捨てた。
「セバス!」
「なんでしょうか?旦那様」
呼び鈴をならしこの家の執事を呼ぶ。
「今玄関に落としたゴミを捨ててこい。早急に、だ」
「かしこまりました」
そして正面玄関から数々の彼の兄弟がズラズラと顔を出し、あるものは嘲笑し、あるものは笑い転げる。そして皆に呼びかけた者がいた。ルーク・ランスロットだ。
「お兄様、お姉様方。それに俺の弟達、妹達よ」
「うん?どうしたんだい?ルーク」
「どうしたの?」
「どうしたんですか?兄様」
皆耳を傾ける。当然だろう。彼は今この家の新星だ。上の兄、姉には可愛がられ、弟や妹には尊敬されている。
「あいつ、今日追い出されるようなんですが、最後のお別れをしませんか?」
「ルークは優しいなぁ」
「本当にね。それに才能もセレナに負けず劣らず、だものねぇ。こんな立派な弟を持てて姉さん嬉しいわ」
「それで、兄ちゃん」
「お別れってなにするんですの?」
数々の兄妹に問い詰められる。
「今から見せますよ。俺達を忘れないようなお別れにするんです。こんな風に!」
そしてルークは3歩程前に出て、こうした。
「我、求めるは風をもって敵を切り裂く無数の刃、風の刃!」
ズパパッ!
「ぐあああ!!」
ルークに向かい無数の風の刃が向かい切り裂く。
「そういうことか。ルークは頭がいいなぁ。ここは俺も兄として魔法のお手本を見せるか!」
「そうね。私も姉の威厳を見せてあげようかしら!」
そして二人共も魔法の詠唱に入る。
「我、求めるは熱をもって我が敵を貫く、火の槍!」
「我、求めるは氷をもって我が敵を射抜く、氷の矢!」
「うぎゃああ!!」
絶妙な魔力をもって生かさず殺さずをする兄妹達。
「すごいや兄様達!」
「うん、私達も!」
彼の下の兄妹もこぞって魔法を使う。
「我、求めるは火の球、火球!」
「我、求めるは火の球、火球!」
「う・・・ああ・・・」
もはや彼は悲鳴すら上げれぬほど衰弱してしまっていた。彼は今指一本すら動かせない。
ポタッ、ポタッ・・・ザアアアアアア
雨が降ってきた。それも相当に強い。
「うわっ!雨だ。濡れないうちに屋敷に入ろう!」
そう言って彼の兄妹達は屋敷に入っていった。
「では、さようなら」
そう言ってセバスは彼を正門から捨てた。
「う・・・」
やはり激痛は消えない。それにこの雨だ。しかし、とても小さくだが彼は這いずり動き始めた・・・
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