第三十六話 過去話 5
今回は少々短め。
「グギャァ!」
「エル!そっち、行ったわよ!」
「はいよ!」
ヒュッ! バァン!!
「一丁上がり!」
僕が爆弾を開発して3年、僕とロロナが出会ってもう6年も経った。もうこの世に生まれて16年も経ったのか。いやはや、時が経つのは早いというかなんというか・・・
僕とロロナの関係は殆ど変わっちゃいない。一緒に冒険者になって、一緒に洞窟や近隣の森などを探索したりして過ごしていた。この年になって変わった事っていったら冒険者になったこと、後は遠くの町に行けるようになった。
「エル!もう一匹、コボルトが向かったわよ」
「任せとけ!」
そしてこれが一番変わった事だろう。それは・・・
「キュルルルルルゥ!」
「遅い!」
カチャッ・・・ バァン!!
「キュル・・・ルゥ・・・」
僕にも戦う手段が出来たという事だろう。
この武器は銃と名付けている。この武器は僕の発明品の中でも一、二を争うほどの価値があると僕自身は考えている。何せ取り出しから攻撃までの速度が速い、威力も相当高い、銃弾という銃に込める物の太さで威力調整が可能、シリンダーという弾を入れる場所の穴に入ればどんな銃弾でも撃てる利便性・・・上げればキリがない。この発明は僕だけに限らず魔法を使えない僕の国の兵士にも求められて支給されるほどにもなっている。他にも一般市民の人達にも護身用として出来るだけ所持してもらっている。
小国なので魔法が使える人間はやはり少数になってしまう。しかしその分銃が様々な人に銃が行き渡る。僕はこれで国民の人々の安全が少しでもあがるならすごく嬉しい。
「本当、その銃って武器の性能は凄まじいものがあるわね」
「僕の自慢の逸品さ」
「その武器の開発、頑張っていたものね」
そう、僕は爆弾を作成した時よりもこの銃の開発に相当情熱を注いでいた。何せこの銃を開発するまでの設計図の作成1年と少し、本格的な作動にも1年と少しかかっている。あとはしっかりとした耐久性、性能、改良点を探すのにもう半年ってところだ。
「僕はね、この武器で国の皆、父さんや母さん、ロロナを守れる事を目標にこの武器を作成したと断言できるよ。もちろんこの武器は魔法を使えない僕みたいな人間からすれば喉から手がでるほど欲しい代物だろう。でもこの武器を僕はどれだけお金を積まれても自国の人以外に渡すことは絶対にしないだろうね。この武器はこの国だから安心して国民の皆、国の兵士達や一般の人達に渡すことが出来る。他国の人に渡せばすぐに戦争道具へと発展するだろうね。僕はこの武器が人を殺すための武器じゃなくて生かす武器になって欲しい」
「・・・・」
ロロナは僕の長い理想論を黙って聞いてくれている。
「この事が綺麗事だってことぐらいは分かってる。我が身を守るために相手を殺す武器だ、僕の理論は唯の子供の戯言だ。この理論自体矛盾してる。それでも僕は、そう思いたいんだ。僕の国の人達は無闇に戦争はしない、だからこの武器にかかる血は最小限に収まるんだ・・・だから他の国の人には渡さない」
「でも・・・」
そう言ってロロナは自分の腰にある銃を見せる。
「私はこの国の人間じゃないのに、どうして渡したの?」
「君を守れるから」
「でも・・・」
ロロナに銃を渡したのは正直一つだけだ。ロロナの身を守れるからだ。そしてもう一つの理論。
「正直に言おう」
「うん」
「さっき、僕は僕の理想論を語ったよね。本当はね、あの理論は2番目に大事な事なんだ。あんなに偉そうに語ったのに僕の中ではどうしても1番目の理論に敵わない」
「1番目の理論?」
僕は左手を上げてロロナを指さす。
「君を守ることだ。僕はロロナ、君が僕の世界から消えたなら僕は生きる目的を失うと言っていい。君は僕の生きる意味そのものだ。僕はロロナという存在を愛している。君の存在がこの世で何より大事なんだよ」
唐突で不器用な告白。でも僕は大真面目だ。これで振られたりしたら3日どころか3ヶ月は寝込む自信がある。冗談抜きで。
当のロロナ本人はというと・・・
「・・・・・」
固まっていた。そりゃもう無反応。あれ?これもしかして振られた?え、やばい、膝が笑ってきた。膝が地面に屈してしまう。あ~、やばい。もう視界が真っ黒になり始めた。は~・・・遺書でも書こうかな・・・
「うん、知ってた。僕とロロナは釣り合わないよね。うん、ごめんね。ちょっと遺書書いてくる」
「ちょ、ちょっと待って!違うの!えと・・・あの・・・本当に!そういうんじゃないの!嫌いとかじゃなくて!むしろ好きっていうかなんていうか・・・」
「え?」
今聞き捨てならない発言があったぞ・・・
「でも、そのっ・・・いきなりだし、あの・・・心の準備っていうのがあるじゃない?」
「あ、うん」
ロロナは一度大きく深呼吸をして平然を保っている。
「ふぅ~・・・よし、いいわよ。もう一度お願い。長ったらしいのはいいから、シンプルに」
「君が好きだ」
「えと・・・こちらこそよろしくお願いします?」
こうして僕とロロナは晴れてくっついた。後から聞いた話によるとロロナも僕の事が好きだったらしい。それを聞いたとき部屋中飛び回って喜んだのは余談である。
遥か遠い大国、アヴァロン12魔騎士ガウェイン家にて現ガウェイン家当主ユウェル・ガウェインが様々な場所に散らばらせていた使い魔からようやく欲しかった情報を手に入れていた。
「そうか・・・遂に見つけたか。随分遠くに逃げていた物だな・・・ロロナめ」
「どうやら小さな国に身を潜めていたようですね」
「ふん、よく6年も我ら12魔騎士の追跡を避けたものだ。その点は称賛に値するな。流石は我が娘よ」
「やはり・・・追われますか?」
「無論だ。俺の娘という肩書きだけでなく魔法も天才的な腕前でロロナにしか使えない無属性魔法という固有魔法すら所持している天才児だ。必ず連れ戻してロロナの血を子孫に残さなければいけないだろう。この12魔騎士の3番手、ガウェイン家の大事な天才児だ。もう既にロロナの許嫁も決まっている事だしな」
「若殿も既にその気ですしね。なんとしてもお嬢様を連れ戻しましょう」
「ああ、後・・・」
「何か?」
「我ら12魔騎士の軍の用意を手配しよう」
「連れ戻すのに軍とは・・・」
「念のためだ」
「しかしお嬢様がいらっしゃるのはどうやら相当小さな国のようですが?」
「ロロナを簡単に引き渡してくれるのなら何もしない。ただ・・・」
「ただ?」
「もし少しでも抵抗したのなら徹底的に叩き潰すとしよう」
「かしこまりました」
「ねえ、エル」
「何?ロロナ」
「ずっと・・・ずっと一緒にいようね」
「うん」
二人が繋いだ手を真っ赤な夕焼けがずっと照らしていた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
次回でエルの過去編、完結です。もう最後読める人には読めちゃうのかなぁ・・・短めなのには突っ込みなしでお願いします。いやぁ、結構かかってしまって申し訳ありませんでした。次回の投稿はまだ未定ですが早くできるよう頑張ろうと思います。まあ作者のモチベーション次第ですね。
感想、ポイントでモチベが上がるほど作者は現金で安い奴なので応援コメなどを貰えるととても喜び執筆に力を注ぎます。