第三十五話 過去話 4
「何これ?」
「僕が知るわけないだろう・・・今見つけたばかりだし」
「ふうん」
でもなんでだろう、僕はこの土にとても強い魅力を感じてる。
「変わった土ねぇ」
「そうだね。でもサラサラして粉状だ」
「そこらじゅうにあるわね」
「宝の宝庫だ」
「私には分からないわ」
そういいつつロロナは辺りを見張ってくれている。僕も早く採取してしまわないと・・・
「それ全部持って帰るの?」
「当然さ。こんな珍しいの持って帰らないとこの黒い土達に失礼じゃないか」
「相当な量になりそうよ?」
「大丈夫、僕にはこの袋があるから」
「それもそうね」
この袋には空間魔法がかけてあっていくら物を入れても重くならないという優れものだ。製作者は僕とロロナだったりする。
「しかし空間魔法の【道具袋】を第三者にも使えるように応用するなんて本当に奇妙な事を思いつくものね」
「むしろなんでこの方法をロロナが思いつかなかったか不思議だよ」
この方法は無属性魔法という特殊な魔法を使えるロロナだからこそ出来た方法だ。ロロナの無属性魔法には【強化】の他に【付与】という物があって一つの魔法を物に付けるという魔法だがその魔法で空間魔法の【道具袋】を袋に付けただけだ。
「しかしその黒い土、どんな使い道があるのやら・・・」
「それを探すのが物を作る時の楽しみさ」
「そんなものなのかしら・・・」
「そんなものだよ」
「さて・・・回収も一段落ついたし、そろそろ帰ろうか」
「そうね・・・」
洞窟は暗いから時間の感覚をよく忘れてしまう。特に僕は採取をするのが楽しくてよく時間を忘れて採取に没頭してしまう事が多々あり、よくロロナに注意されてしまう。
「エルにしては随分と早く帰るって言うのね」
「僕にだって早く帰る時はあるさ」
「ま、そうと決まれば早く帰りましょう」
こうして僕とロロナは洞窟を後にした。
「さて、この黒い土の使用用途を探るとしよう」
夕飯を食べ終え夜も更けた頃に僕は実験を開始する。まずはこの黒い土がどういう事に使えるのか、またこの黒い土をどうすれば使えるようになるのかを見極めなければまず始まらない。
さて、何から始めるか・・・
「まずは水に入れてみるか」
この黒い土をまずは水に入れる事にする。
「うーん・・・ただ水が黒くなるだけか」
さて次は・・・
「スゥ~・・・ゲホッ!ゲホッ!!オエエエ・・・」
吸うとどうなるか気になったがすぐに嘔吐してしまった。
「どうやら・・・ゼェ・・・ゼェ・・・体内に搾取する物ではなかったか・・・」
薬草の種類では体内に搾取して筋力を上げたり、反応速度を上げたり、敏捷性を上げたりする事が出来る種類の薬草が存在する。そういう薬草は基本粉末状にし体内に摂取して使うのが基本なのだが・・・もう絶対この黒い土を体内に搾取するのはやめよう・・・絶対に。
「うーん、体内に搾取するものでもない、水に入れても変化がない・・・さて、これの使い道はどんな事なのか・・・それとももしかして本当に唯の土とか?」
折角持って帰ってきたのに唯の土だなんてオチは嫌だなぁ
「僕のカンでは絶対そういうことないんだよなぁ。うーん、次は・・・焼いてみるか」
そうだな、あとは火を付けてみて様子をみるか。
「えーっと、確かこの辺にロロナに貰った魔力で付くマッチが・・・あったあった」
このマッチは魔力が込められていて擦ると発火する。
「黒土を皿の上に載せてっと・・・」
一応火を取り扱うから周りにある燃えそうな物をどかす。引火して家全てが火事とか笑えないからね。
「よいしょっ」
シュっとマッチを擦り発火させる。あとはこれを窯に入れる。この窯は僕が自分で部屋に作った自慢の一品で上に皿を置く場所を作りその上に焼きたい物や炙りたい物を置くことで料理も出来れば実験もできる便利な僕のお気に入りだ。
「火元に発火させてっと・・・」
あとは皿を窯の上に置いて・・・そして置いた瞬間
パァンッ!!
「うわああ!?」
何!?何が起こったの!?え、皿が粉々なんだけど!?
「エル!?大丈夫!?」
「エル!?何があったの!?」
「何だ!何だ!?」
ロロナ、母さん、父さんが何事かと入ってくる。
「いや、えっと・・・」
幸い被害は少なく被害を受けたのは黒土を焼いていた皿と窯が少し吹き飛んだくらいだった。これなら直ぐに治せるかな・・・
「エル!あなた今度は何の実験をしてこうなったの!」
「いや、その~・・・」
母さんに大目玉を食らってしまった。まあこれはしょうがないとは思うけど・・・
「エル!私にもしっかり説明してもらうわよ!?今度は何を作っていてこうなったの!?」
「うん、だからね?」
ロロナにも怒られてしまった。しかし僕もまさかこうなるとは思わなかった。いきなり爆発したのだ。予想の斜め上すぎる。
「ん?この黒い土・・・エル、もしかして」
「うん・・・今日取ってきた黒い土を火にかけたらいきなり爆発したんだ・・・」
「ハァ~・・・」
ロロナは事情を察してくれたようだ。あとは母さんと父さんに事情説明だな・・・
「さあ、エル?どういう事なのかしっかり説明しなさいよ?」
「あ~・・・はい・・」
その後母さんから一晩中お説教のフルコースを食らった。
「ん~・・・」
お説教のフルコースを食らった後どうすれば誰にも怒られずにあの黒い土の実験が出来るか考える。
「誰にも迷惑かけずに大きな音を出せる場所・・・か」
まあ一つしか思いついていない。
「ま、いつもの森かな。さて、どんな物を作ろうかな」
正直実験したい事は山積みだ。もしかすると魔法を使えなくても
ても強力な攻撃手段が作れるかもしれない。
ゴーン・・・ゴーン・・・
よっし、学校終わり!今は少しの時間が勿体ない。今日は家に帰らず直ぐに森へ直行だ。
「エル。帰りま」
「ごめん!今日は帰り遅くなるって母さんに伝えといて!あと昼飯いらないから!」
「あ!ちょっとエル!?」
ロロナから教えてもらった【強化】を全開にして森へ直行する。
今日はたくさん実験するぞ!
トップスピードで駆けてきたお蔭か予想よりは早く森にたどり着けた。
「さ~ってと、まずは・・・」
昨日は火で熱すると大きな炸裂音がなった。ここから予想できるのはこの黒い土は火で爆発する、という事だ。
「あとはどれくらいの量の土でどれ程の爆発を起こすかだよな」
まずは少量で実験してみるか。
「マッチはしっかりとあるな。よし、実験開始だ」
こうして僕の実験が開始した。
パァン!
「ふむ、少量での爆発はこのくらいか。次だ」
それからしばらく森の中で炸裂音がなり続けた。
「ふふふ・・・」
遂に、遂に採取だけが取り柄だった僕にも攻撃手段が出来た!
暫く森の中で黒い土を爆発させ続けたお蔭で大体欲しかった情報は手に入った。
「あ、こんなところにいたのね」
「あ、ロロナ」
そろそろ帰ろうかと思っていた時にロロナが迎えに来たようだ。
「ずっと探してたんだよ?何か大きな音がしてる方に向かってたけど森が無駄に入り組んでてエルの元にたどり着くの大変だったんだから」
「ああ、ごめん。ちょっと実験に夢中になってて」
「ふぅん?」
「暗くなってきたしそろそろ帰ろうか」
「そうね」
こうしてロロナと帰ろうとした時だった。
「ブモオオ・・・」
「ストレートボアね」
ストレートボア。食用にも用いられる魔獣でそこまで強くはないが唯の一般人には危険な魔獣だ。真っ直ぐにしか進まないのだがそれでも中々の速度はある。
「エル、下がってて」
「ううん、大丈夫さ」
「え?」
ロロナが驚いて僕の方へ振り向く。
「ブモオオオ!」
ストレートボアが僕に向かって突っ込んでくる。
「ほっ!」
僕はついさっきまで実験していた新兵器をストレートボアに投げつける。
「ブモオオオオ!!」
「エル!危ない!」
確かに通常時なら危なかったけど・・・
バァン!!
ま、そう簡単には僕もやられなくなったんだよねぇ。
「ブモ・・・」
ストレートボアが僅かな悲鳴を上げ地面に倒れる。
「え?エル、何をしたの?」
「唯新しく作った僕の新兵器を投げつけただけさ」
「新兵器?」
「うん。爆弾って名付けた。これでただロロナに守られるだけじゃなくなったよ」
「へえ・・・」
ロロナは嬉しいような嬉しくないような微妙な表情をしていた。嬉しくないのかな・・・
そうして僕たちは森を後にした
最後まで読んでくださってありがとうございます。
エルは窯などの作成は自分で行っています。錬成なんてのは使えませんw1からしっかりと作成しています。