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有無の騎士  作者: 七咲衣
青年の過去
35/79

第三十四話 過去話 3

また少し短めです。

「・・・き・・さい」

「ん~・・・」


僕の微睡みを覚まそうとする声が聞こえる。でもまだ眠い。


「ほら!起きなさい!」

「・・・・ん・・・」


なんでこの気持ちよさを手放さなきゃいけないんだ。もう少し・・・


「しょうがないわね・・・」


聞きなれた声が耳を打つ。僕の幼馴染の声。もう彼女と出会って3年くらいになるかな。


「【風玉ウインドボール)】!」

「ん・・・?」


何か不思議な言葉が聞こえた・・・そう、魔法の呪文が・・・


ズドンッ!!


「いってえええ!」

「やっと起きたわね」

「目覚ましに魔法を使うことはないだろ!?」

「エルが起きないのが悪いんじゃない」

「でもさ~」

「ほら!グチグチ言わない!早く着替えて下に来なさい。お母さんが朝ごはん作って待ってるんだから。それに学校もあるんだから早く支度しなさい」

「あ~・・・学校面倒だああ。行きたくねええ」

「グチグチ言わない!」


僕がロロナと出会ってから既に3年経った。最初はどこか他人行儀だったのだが1年もすれば他人行儀がなくなり今や家族同然になっていた。そのせいか母さんのこともロロナは血の繋がりはないがお母さんと呼んでいる。父さんに関しても同様だ。


「先に降りてるわよ」

「うい~」


正直まだまだ眠っていたいが学校ならばしょうがない。起きなければ・・・


「おはよ」

「おはよ、エル。顔洗ってらっしゃい」

「ん~」


母さんに寝起き丸出しな挨拶を行い顔を洗いに洗面所に向かう。


ガンッ!


「いてて・・・」


寝ぼけて躓いてしまった。


「エル、あなた一体いつ寝たのよ」


ロロナは呆れ顔で問いかけてくる。


「ん~・・・覚えてない」

「どうせまた何か作ってたんでしょ?」

「うん・・・小さなゴーレムとか作ってた」

「全く・・・ほら、行くわよ」


ロロナに手を引かれる。3年前は逆だったのになぁと考えていると洗面所につく。

顔を洗い今までの眠気が大分取れる。


「ふぃ~・・・大分眠気が飛んだ」

「はい、タオル」

「ありがと」


もらったタオルで顔を拭く。


「さて、朝飯食べるか」

「うん」


二人で食卓に向かう。


「「いただきます」」


二人で手を合わせて朝食を食べる。


「今日は何処行こうかな」

「もう、また森に行くの?」

「うん。昨日行った洞窟に気になる物があってさ」

「ふ~ん。じゃあ私はどうすればいいの?」

「また昨日みたいに護衛お願いしていい?」

「しょうがないわね・・・」


ロロナはそう言いながらも顔は笑顔である。


「「ごちそうさまでした」」

「はいお粗末さま」

「じゃあ学校行くか~」

「そうね」


二人は各自の部屋にカバンを取りに向かう。


「んじゃ母さん、行ってきま~す」

「行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」


玄関の扉を開き学校へ向かう。


「今日の授業なんだっけ」

「今日は地理、歴史、数学とかね」

「うわぁ・・・」


僕は教科を聞いた途端に嫌な顔を露骨に面に出してしまう。三つとも僕の嫌いな教科じゃないか。


「まあまあ、じゃ、行きましょ」

「ん~」


そのまま二人は学校に向かい走っていく。






「ロロナちゃんおはよ~!」

「あ、おはよう」

「ようエル!今日も二人揃って登校とは、仲睦まじいねぇ。ニクいぜ」

「うるさいなあ・・・」


学校についた途端僕とロロナの友人が声をかけてくる。ロロナはこの学校でも人気者だ。なにせ性格はとても優しく頭もいい、おまけに筆舌しがたい美少女ときてる。これで人気が出ない方がおかしいってもんだ。その美少女と常に一緒に登校してくる僕。ロロナが入学してしばらくは男子の嫉妬が大変だった。

僕とロロナが教室に入ってからしばらくして担任の先生が入ってくる。


「よ~し、出席取るぞ~。席座れ~」

『は~い』


今日もまた平和な一日が過ぎてゆく。




ゴーン・・・ゴーン・・・



この小さな国にある城の鐘が鳴る。正午の合図だ。


「終わった〜•••」


僕の心の中は開放感でいっぱいでしょうがなかった。


「もう、大袈裟ね。たかが4時間程度じゃない」

「そうは言ってもさー」


ロロナなにとってはたかがかもしれないが僕にとっては4時間でも相当なものだ。


「それで?今日はどこに行くの?」

「んー、昨日見つけたあの洞窟かな。僕のカンが囁いてるんだよねぇ。あそこにはすごいものがあるって」

「ふぅん?ま、いいわ。行くなら早く準備していきましょ」

「そうだねー」


僕とロロナは一緒に洞窟に潜る。まあそうしないと僕なんて簡単に死んじゃうからなんだけどね。自慢じゃないが僕一人で倒せるのは魔物のゴブリン一匹が限度。二匹なんていようものならすぐに逃げる。

そんな戦闘力のない僕を守るのがロロナの役割。女の子に守ってもらうなんて世間ではどう見られるのかなあ、なんて思ったこともなくはない。


「女の子にとって守られてる男の子ってどんな感じなの?」


そう昔一度だけ聞いたことがあった。

その時帰ってきた返答が


「別になんとも思わないわ。出来ないことを無理矢理やらしてどうするの?代わりにできる人がいるのに出来ない人にやらせるなんてその人は外道だと私は思うわ。だからなんとも私は思わないわ」

「ふうん」


そんな凛々しいことを言われてしまったのだ。それに最後にはこんなことも言っていた。


「それに」

「それに?」

「男の子を守るのが好きな女の子もいるものよ?」


その時からだろうなあ・・・


この子を好きになっちゃったのは。


「よし、じゃあ剣とか取ってくるから待っててね」

「ん」


僕は洞窟では主に珍しい鉱石や物などを採取している。だからその分用意するのはこの空間魔法がかかった袋だけでいい。


「お待たせ。それじゃ、行こうか」

「そうだねー」


僕達はそのまま町の近くにある森へ進む。


「僕の予想では今回の冒険では最高の収穫がある」

「最高の収穫ねぇ・・・あなたの収穫なんて私には分からないわ。だっていつも変な鉱石とかを見て「うおおーー!すごい!」とか言ってても私にとっては石だし」

「価値あるものは人それぞれさ」

「そうかもね」


そんな雑談をしつつ進んでると思いの外すぐに着いた。


「それじゃいきましょ。私の側から離れないでね」

「了解」


そして僕達はいつもの布陣で進んでいた。

ロロナが前で僕はその横か後ろで採取する。そして僕が採取を行うときは必ずロロナに一声かけること。これが鉄則だった。

これが僕とロロナの生存率を上げている一つ目の理由。


「ロロナ、止まって。採取する」

「手短かにね」


そして僕が採取していると奥から魔物の声が聞こえてきた。


「グギャギャギャ」

「ゴブリンね。数は・・・一、二、三。三匹ね」

「グギャギャギャ」

「ギュアー!」


向こうも僕達を見つけたのか錆びた剣やら斧やら刃物を構える。


「行くわよ!」


そして僕達の生存率を上げているもう一つの理由。


「【強化(ブースト)】!」

「グギャアァ!」

「ギュアァ!」


ロロナは容赦がない。どんな小物だろうが敵なら容赦せずに全力をだす。油断を絶対にしないのだ。


「ふぅ!エル、そっちの用は済んだ?」

「相変わらず容赦をしないな、ロロナは」

「当然よ。少しでも油断すれば死ぬと思いなさい」

「はいはい。こっちの用は終わったよ」

「それじゃ進みましょう」


そしてまた進んで奥に進んでいく。


「ロロナ、また止まって」

「うん?」


またロロナを呼び止める。ロロナは少し不思議そうにしていた。当然だろう。今周りには石らしい石もなかった。しかし僕のカンがビンビン来てるのだ。大物があると。


「これは・・・」

「何それ。黒い土(・・・)?」


そしてこれが僕に武器をもたらしてくれる材料だった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

投稿が遅くなり申し訳ありません。しかしこの作品の投稿ペースが大体決まりました。この策には基本が2週間で1話ペースになりそうです。早ければ1週間。とても遅いですが作者にとってこれが無理なくゆっくりと書けるペースとなりました。これよりも遅くなる事もあるかもしれませんが見守っていただければと思っています。

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