表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
有無の騎士  作者: 七咲衣
魔神の食堂編
23/79

第二十三話 戦利品

「ハァ・・・ハァ・・・ゴホッ、ゴホッ・・・」


ロストは右腕に握っていた魔銃を手から落とし尻餅をつき息を整える。


「ハァ・・・ハァ・・・・・・強かった・・・」


目の前には自分の左腕を吹き飛ばし、死ぬ寸前まで追い込まれた強敵が頭に該当する部分を欠損させ機能を停止していた。


「どうやらこいつは頭自体に全ての回路や機能の中枢が密集していたようだな」


ロストはゴーレムの弱点が電気と知り、一気に動きを止める方法を必死に考えた。その時に家で雷属性の魔法と水属性の魔法についての魔導書を読んだ時に水魔法は雷魔法をよく通すという知識を得た。しかしその本によると水魔法で編み出した水は純水という物らしく雷魔法を通さないという事も書いてあった。しかし塩など何かを混ぜると雷魔法はよく通ったらしい。

そのためロストは考えた、自分の血を混ぜれば雷魔法は通るのではないか?と。結果は雷魔法を通しゴーレムへ直接到達し、動きを止めた。しかしそれだけでは再び動き出し決定打にはならないだろうと考えたロストは横に転がっていた魔銃に目を付ける。あそこまでの威力を誇る武器ならばゴーレムすらも貫けるはずと思い雷魔法で動きが止まったゴーレムを狙撃し、この死闘に決着を付けた。


そして辺りを見回すと相当な激闘が繰り広げられたとすぐ分かる惨状になっていた。入った時は真っ白な一面、穴どころか傷一つなかったというのに今は壁面は穴だらけで一部溶けている部分すらもある。床に至っては一面水浸し、クレーターもでき、散々な状態である。


「・・・・」


ロストは最後に弾丸を受けた右腕の傷が塞がっている事を確認し、ゴーレムが使用していた武器を回収しはじめる。


「お前の武器・・・貰っていくぞ」


手始めにゴーレムが握っていたリボルバー拳銃を手に取ってみる。


「これは確かリボルバーとか言ってたか。戦闘を思い出すと俺のボウガンより装填も早くて威力も段違い、正に俺のための武器みたいだな」


そんな事を呟きながら調子を確かめるように壁に向かい発砲した。


バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!カチッカチッ


「なるほど、6回撃つと弾切れになって撃てなくなるんだな。しかも一回撃てば自動で次弾に繋がるようになってる・・・こんな武器聞いた事もないんだがな・・・これ弾薬装填どうすればいいんだ?確か・・・」


ゴーレムがやっていた装填動作を思い出しながら数秒リボルバー拳銃を見回しているとすぐに分かった。


「あ、ここをこうすればいいのか」


持ち手の左側の部分にちょっとした出っ張りがありそれを引きながら左に振る。すると6個の穴が空いている部分が飛び出す。


「何か入ってるけどこれを引っ張って出せばいいのか?でもゴーレムは一気に出してたし・・・」


するとその部分に一つボタンらしき部分が付いている。


「これか?」


カシュッ、カランカラン


そんな音を残しながら金属が一気に出てくる。


「これで撃てるのか?」


そう思い壁に向かって引き金を引いてみるが何も出ずカチッと音がなるだけであった。


「えっと・・・」

「弾丸を込めるんだよ」


この部屋にはロストしかいないはずなのに声がした。


「誰だ!?」

「おっと、そんな殺気を向けられると困るな」


そこにいたのは短めにしてある黒髪、目は釣り気味だが吸い込まれそうな程の黒。そして白い服に身を包んだ青年だった。


「僕としては君と戦うつもりは全くないんだ。それに戦っても数秒で肉塊になっちゃうよ」

「・・・・」


ロストは殺気を収める。しかし警戒心は解かなかった。


「えっと・・・話をしても?」

「・・・・・ああ」


ロストは相手が本当に戦うつもりが無い事を察知し、話を促す。


「まず君が手に持ってる武器なんだけど・・・それは銃って言ってね、僕が作った物なんだ」

「お前が作っただと?」

「うん。もう1000年は前になるかな」

「1000年前だと?冗談はよせ、殺すぞ?」


ロストはこんな武器が1000年前にあったなんて信じられず相手は自分に嘘を教えているのではないかと思い再び殺気を出す。


「冗談じゃないよ、真実さ。ただこの武器が広まる前に僕達の国が滅ぼされただけさ」

「僕達の国だと?」

「うん。それも十数人にね」

「十数人だと?十数人だけで滅ぼされたのか」


国を落とす時はそれ相応の数が必要になってくる。前線で戦う者、兵糧を準備する者、資源を運ぶ者。挙げれば数が無い程に必要になる。しかし青年は十数人と言ったのだ。


「僕が見た感じ君もあいつらの中の一人の血を引いてるようだ」

「あいつらの中の一人の血?・・・っ」


ロストは思いつく。自分が引く一族の血なんて一つしかない。


「ランスロット家・・・」


苦々しい口調で自分の一族の名を発する。


「うん。でもランスロットだけじゃない。僕がいた国は12人に滅ぼされたのさ」

「12人・・・12魔騎士か」


その名を口にしただけでロストからは殺気が発されてゆく。


「へぇ。今の時代ではあいつらは12魔騎士なんて言われてるんだ」

「あぁ・・・」

「君の声色だと何か嫌な事があったと思うのだが?」

「・・・・」

「ふむ。出来れば教えてくれないか?中々興味深そうだ」

「俺がお前に教えた所で俺に利点はあるのか?」

「そうだなぁ・・・君が今持っている武器の使用方法、弾薬の調達、新しい魔法一つでどうかな?」

「新しい魔法だと?」


ロストは相手が述べた3つの利点の中では新しい魔法というものに最も関心を惹かれた。


「うん。この時代には間違いなく誰も使えない君だけの魔法になるであろう特別な魔法さ」

「その魔法でどんなことが出来る?俺は全属性を使用出来るんだぞ?」

「この魔法かい?身体能力の魔法や物を加速させたり減速させたりだとか他にもーー」


「馬鹿にするなよ?」


一瞬で青年の目の前に行き銃口を青年の額に押し付ける。


「怖いな」

「お前が不愉快になる事を言ったからだろう。俺の身体能力の強化や動体視力の強化だと?そんな物を得てどうする?生憎身体強化は体に魔力を循環させる事でもう既に間に合っている。つまりお前のその魔法は無駄って事だ。つまり俺にとって利点は何一つないんだよ」

「まあまあそう言わずに・・・」

「いい加減にーー」

「だから落ち着いたらどうだい?」

「!?」


銃口を押し付けていた相手が一瞬で背後に回る。


「これが無属性魔法の身体強化で得られる力さ。まあ僕は保有してる魔力が少ないから一回使ってもすぐ切れちゃうんだけどね」


そう言って苦笑を浮かべる青年。しかし内心ロストは冷や汗を流していた。


(今のが敵だったら一瞬で殺されていた・・・)


「話してくれる気になった?」

「・・・・・いいだろう」


そしてロストは生まれてからここに至るまでの話をする。


「なる程ね、それで君は力を求めてる訳か。うん、実に有意義な会話だったよ。俄然僕自身君を気に入っちゃった」

「俺の事は話しただろう。早く無属性魔法とやらを教えろ」

「約束は守るさ」


そして青年はロストの頭へ手を添える。その瞬間銃の扱い方、無属性魔法についての知識が頭の中に流れ込んできた。


「何をした!?」

「ああ、やっぱり驚く?」


魔法という物は時間をかけ修行や鍛錬をし会得する物である。それを青年はロストの頭に手を添えるだけで0から全ての無属性魔法の情報を流し込んだのだ。


「まあちょっとした魔法さ、あんまり活用はしなかったけどね」

「魔法だと?」

「おっと・・・そろそろ時間もなくなってきたか、悪いが僕はそろそろお暇させてもらうよ」

「なっ、待て!」

「ごめんね、本当は無属性魔法を完璧に教えてあげたかったんだけど少ししか教えられなかったね。弾薬とかはこの袋に入れといたから、好きに使ってね。あとこの袋は空間魔法が使用されてるから際限なく物を入れられるよ、是非活用してね」

「待て!」

「じゃ、たどり着けたら最上階でまた会おう。そこに君をずっと待ってる運命の相手がいるさ。その時に無属性魔法の全てや君専用の銃を渡そう」


そんな最期の言葉を言い残して青年は消えてしまった。


「なんなんだよ、あいつ・・・」


結局全てを語らず青年は消えてしまった。


「くそっ」


ロストは舌打ちしながらも青年が置いていった袋を取る。どうやら青年が言っていた言葉は本当らしく袋の中は不思議な空間が広がっており相当な数を収納できるらしい。


「弾丸も入ってるって言ってたっけ」


そう思い浮かべた瞬間右手の中に6発の弾丸が右手の中に収まっていた。


「どうなってんだ・・・」


銃の扱いは完璧なのでとにかく弾丸を込めようと弾丸装填リロードに掛かる。


「くそっ、片腕だとやりにくいな。慣れるまで時間かかりそうだ」


片手装填に手間取りつつリボルバーの銃口を左脇に挟んでリロードを行う。1分程かけてリロードを完了させ、銃を構える。


「装填から構えるまでが遅すぎるな・・・こんな悠長にしてたら直ぐに殺される、鍛えないと」


この部屋はどうやらゴーレムが倒されると安全エリアになるらしく、新たな魔獣が現れる雰囲気は一切見せなかった。


「ここで暫く鍛えよう。無属性魔法を覚えたとはいえ完璧に扱える訳でもないしな。飯が尽きるまでがタイムリミットか」


ロストはこのエリアで片腕によるリロードから構えて発砲までや無属性魔法の身体強化、蹴りやパンチの練習に時間を掛けることを決め、寝る間も惜しんで鍛錬をする。














慣れない片腕に難儀しながら鍛錬を初めて1週間が経った。


「ああ、遂に飯が尽きたか・・・まあ及第点ってとこまでは行ったか」


ロストは自分の武器と荷物を確認し上階へ続く階段へ足を向ける。


「どこまで強くなっているか・・・」


その言葉を向けたのは上階の魔物か、それとも自分か。


「確かめてやる」


ロストは階段の向こうへ消えていった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

今回はロストの武装関係の話と12魔騎士の過去について触れました。この魔法が発展している中何故銃があるのにそれが流行っていないのか、新しく出てきた無属性魔法、そしてその両方を扱う事ができる青年は何者なのか?まだ内緒です。

次話の投稿は9月12日0時になります。

応援、感想、アドバイス、お待ちしています。

たくさんの感想ありがとうございます!感想には基本返信を心がけています。感想が作者の励みであり、執筆の原動力になります。感想お待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ