第十八話 大蜘蛛との死闘
「ふっ!」
「キシャアアアア!!」
大蜘蛛はロストを捉えようと巨体と八本の足を利用しのしかかるように襲いかかってくる。
「捕まって堪るかよ!」
しかし大蜘蛛は8mもある巨体だ。ちょっとやそっとの動きで避け切れる大きさではない。しかしロストはここで機転を効かせる。
「上下左右がダメなら・・・」
バキィ!
「下に逃げられるよなぁ!」
ロストは自分の足場であり立っていた氷の板の維持に使っていた魔力を一気に解除した。
「シャアアアアア!!」
当然大蜘蛛は獲物を獲り逃す。
(大蜘蛛はすぐに俺を察知して見つけるだろう。だから今の内に陸へ逃げる!)
ロストはこのままではすぐに大蜘蛛に見つかり捉えられると察し、早急にこの場から離脱することを決める。しかしロストがいる場所は水中である。水中では魔法の行使は水魔法を除き困難だ。
(水流操作!)
ここでも皮肉なのかランスロット家は水魔法に長けた一族なために水流を操るのは相当に容易い。3、4歳の子でもできるレベルだ。
ゴウッ!
しかし今ロストが大量に込めたのは魔力ではなく神力。通常の魔力よりもただでさえ強い力だ。そんな大きな力をただの水流操作に思いっきり込めた。その瞬間湖の天地鳴動というべきか湖の水が一気に渦巻き始めた。
「うおおおお!!」
こればかりは想定外とロストも自分でやった水流操作に引っ張られる始末。
「キシャアアア!!」
しかし大蜘蛛も水の渦に巻き込まれ、もみくちゃにされていた。
「ほっ」
水の渦巻きから放り出されたがロストは空中で綺麗に一回転を決め無事陸に着地する。
「ここまでになるとは思わなかった・・・」
「キシャアアアア!!」
「おっと、おいでなさったな!」
当然この程度で死んでくれるのなら魔神の食堂はとっくにどこかの国の領土になっていただろう。
「キシャアアアァ!!」
「こっから本番だな!」
大蜘蛛は突然糸を吐き出し始めた。
「っ」
ロストはその糸を僅かな隙間を縫うように避ける。
「シャアアァ!!」
しかし大蜘蛛は避けられているのにそんなことは関係ない、というようにひたすらに糸を吐き出し続ける。それをロストは変わらずスレスレで避け続ける。そして次にはロストのいる場所以外の方向に糸を一気に張り巡らせた。
「うおっ」
この時点でロストは動きを大蜘蛛の糸に封じられた。
「もしかして無闇に糸を吐き散らした訳じゃなくて・・・」
「シャアアア!!」
瞬間ロストは背中に冷水どころか氷水を一気に流し込まれたと錯覚する程の鳥肌を感じた。条件反射というべきか一瞬でロストは背中に絶対に壊れない岩盤を想像し地面から岩盤を土魔法により創造した。
ヒュッ、バキィ!!
「キシャアアア!!」
「お、おいおい・・・冗談だろ・・・」
今ロストが緊急に作成したとはいえ神力も十分に込めた岩盤の壁を作成したがその岩盤の8割は切断されていた。すんでのところで止まったようである。
「この糸でやられたのか・・・」
大蜘蛛は糸を使用した後使用した糸は用済みというようにすぐさま口から糸を切り離した。ロストは大蜘蛛が切り離した糸を早急に集めた。当然大蜘蛛への警戒は怠らない。
「硬い。まるで鋼鉄みたいだ、これ剣に使われてても何一つ疑問抱かないぞ・・・」
「シャアアアア!!」
「っ!」
再び糸を吐き出し今度は左右の足からまるでロストを囲み覆うように円状に糸を吐き出してきた。
「速攻もありか!」
一瞬でロストは足場を上へ伸ばし離脱する。
「シャアアア!」
すると大蜘蛛は再び糸を一気に引いた。
スパンッ!
「うおっ!」
足場を一気に切断され地面に落下するロスト。
「そう何度も無様に落ちるかよっ!」
ロストは崩れた瓦礫を足場にし、瞬時に移動する。
「シャアアア!」
「待ち伏せ!?」
大蜘蛛はどうやらロストの離脱ルートを予測していたのかロストの向かう先に待ち伏せしていた。
「シャアアアア!!」
「そう簡単に食われると思うな!」
まずロストは自分を殴り飛ばそうとしてきた足に向かい風の刃を突き刺し、切り飛ばす。
「シャアアア!?」
「へっ、まず一本!」
大蜘蛛は自分の足が何故切り飛ばされたのか疑問に思ったのか自分の足を見る。
「ここは一旦引かせてもらうぞ」
「シャアアア!!」
ロストは後ろの森に一気に駆け出す。当然そんな簡単に獲物を逃してなるものかと大蜘蛛は猛スピードで追いかけてくる。
「地の利は向こうか。それでも簡単に捕まる訳にはいかないよな」
ロストは必死に逃げる。勝つために逃げる。
「シャアアア!」
ロストの身のこなしと脚力は相当な物のようで大蜘蛛は足が一本なくしたのもあり少し追いかけづらい状態にもなりロストを見失ってしまった。
「シャアアア!!」
大蜘蛛はこの程度では当然諦めない。自分の足を一本奪った相手を確実に仕留めると息巻きロストを探し続ける。
「・・・行ったか」
ロストは大蜘蛛が過ぎ去った場所から対して離れてはいない茂みの地面から全身を出した。
「いきなり思いついたにしては効果的だったようだな」
ロストは大蜘蛛からこのまま逃げ続けても間違いなく追いつかれジリ貧だと考え横の茂みに飛び込み土魔法を使い地中へ潜り込み気配を完全に遮断し、息も潜めていた。
「さて、あいつをどう倒すかなんだが・・・」
ロストは思考を巡らせる。どうやってあの大蜘蛛を狩るかを。
「風の刃は通った。これはいつも通りでいいだろう。ボウガンは・・・ダメだな。照準速度はともかく一発撃った後に再装填する時間がない。狙えるとしたら・・・口の中か。一発限りだな、最初の不意打ちに使うか。使用する矢は当然痺れ毒矢だな。それで麻痺させた後は・・・風の刃で止めを刺すか。よし、これで・・・」
しかしロストは次の瞬間新たな策を思いつく。そして今考えた作戦と比較する。
「・・・そうだ、これだ。この作戦で行こう」
危険性や確実性を比較し、後者の作戦にすることを決めたロスト。
「さて、反撃開始だ」
最後まで読んでくださってありがとうございます。
お知らせです。暫くはこの有無の騎士の更新ペースはこのままなのですが、この話より数話進むと自分のネーム上第一の山場に入る事になります。そのため更新ペースは遅くなると思われます。作者の都合により勝手にペースを落とすこと、申し訳ありません。
誤字脱字がありましたらお手数ですが報告よろしくお願いします。
応援、感想、アドバイス、お待ちしています