第十六話 実験
今回も短くなってしまいました。
「さて、この毒矢の性能。どれ程の性能を発揮するのかな?」
ロストは青色熊の出現する地帯の木を上り、木上からボウガンの狙撃体制に入っている。理由はこの前倒した毒蛇の骨から作成した毒矢が一体どれほどの性能を持つか気になったからだ。
「もうそろそろ徘徊してくるはずだ・・・」
ロストは一層気合を入れボウガンを木上で腹ばいの体制を取り構える。
「初めて触る武器なのになんか分かるんだよなぁ、この武器の構え方とかなんでだろ?でも、あと少し・・・何か足りない。俺にはもっと合ってる武器があるような気がする・・・ってこんな事考えてる場合じゃねぇや。きたきた」
少し考え事をしていると奥の方からのそのそと四足を力強く地面に押し付けて辺りを威圧するように歩いてきていた。
「あいつ鼻が効くからな。こっちから何もしなくても自慢の嗅覚で見つけてくる。それなら先手必勝!」
ロストはそう意気込み引き金に指をかける。
「ス~・・・ッ!」
パシュッ!
森の中に静かだが確実に相手を射殺そうとする殺意の塊が熊に向かい疾駆する。
「ガァ!」
「やった!」
ロストの放った毒矢は寸分違わず熊の胸に突き刺さった。
「比較的肉質の薄いところを狙ったのはやっぱ正解か」
「グ・・・・ガ・・・」
熊は自分の身に何が起こっているのか分からずただ体が動かない事に驚愕していた。
「さすが猛毒の蛇の骨から作った毒矢。間違いなく首の奥まで刺さってないのに体内に少しでも触れた瞬間これか。それにこの毒が回る速度、尋常じゃない」
ロストは正直ここまで効果が効くとは思ってもいなかった。しかし結果がこれだ。
「これならこれからこの森の中での狩りももう少し安定しそうだ」
これから狩りの難易度が大分簡単になった事になったと喜ぶロスト。
「効果時間でも測ってみるか。毒の強さも知っとかないとな」
そう言ってロストはその場から後ろに一気に跳躍する。
「さて、俺はこの安全地帯からお前がいつまでそうやって地面に這いつくばっているのか観察させてもらおう」
そう言って気配を消し、熊を観察する。
「さて、計測スタートだ」
青色熊は憎悪の篭ったような咆哮を上げようとしているのか首を大きく上げ、口を大きく開く。しかし熊の体を巡り回っている毒が動くことは許さないとばかりに全身を麻痺させる。
「10秒経過・・・」
「30秒経過・・・」
「60秒経過・・・」
「120秒経過・・・あっ、抜けた」
ただ地道に時間を数えるだけ。しかしロストはこの結果に大層満足していた。
「すげぇ、この弱肉強食の鏡みたいな場所で120秒も麻痺させられるなんて・・・これ、とんでもない毒矢じゃないか」
ロストは青色熊なら5秒あれば片付けられるようになっている。それを120秒も拘束出来るのだ。
「こりゃここの毒とか特殊な攻撃持ってる魔獣がいたら骨採取は確定事項だな・・・」
毒蛇の骨にもここまでの猛毒が染み込んでいたのだ。ならば他の特殊能力を持っているモンスターの骨もこのように特殊な効果が現れる可能性が高いとロストは考察する。
「さて、引き続きこの森を探索する事決定だ」
これからロストは行ったことのない拠点から見て下方面に足を進めることを決める。
「次はどんな敵出てくるかな。でもいい特訓にはなるか」
そう言って彼は一旦拠点に引き返すことを決意し木から飛び降りた。
「グルアアアア!」
「あ、忘れてた」
麻痺拘束から逃げ出した青色熊はどうやらロストが降りてくることをずっと待ち構えていたようで殺る気満々だった。
「ガアア!」
「ほい」
木から飛び降りる最中に横から薙ぎ払ってきた腕をロストは逆に蹴り返す。
「残念、今の隙で地面に足ついちゃった。この瞬間お前の負けだ」
パァンッ!
ロストは風魔法を掌に圧縮させてそのまま熊の腹に掌底を叩き込んだ。
「こりゃだめだ、腹に風穴空いちゃった。食べる部位なくなっちゃったな。この辺の魔獣が勝手に食べてくれるか」
そう楽観視しながらロストは自分の拠点へ引き返していった。
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