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有無の騎士  作者: 七咲衣
魔神の食堂編
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第十一話 墜落

(よし・・・今だ!)


そう思いロストはその場を離れようとした瞬間だった。


ガサ、パキッ


(!!!!)


ロスト痛恨のミスだ。ロストはこっそり立とうとした矢先に茂みの枝に引っかかってしまいパキッと音を立ててしまった。当然その音を聞き逃すような狼達ではない。


「うっ・・・」

「アオオオンッ!!」


当然狼達は新しい餌を見つけて喜びの咆哮をあげる。この狼達はこの森で大きな音を鳴らそうと何も思わない。何か来てもその何かを狩れるだけの力を持っている、という自信にほかならない。


「うわあああああ!!!」


ロストは後ろに向かい全力疾走する。


「アオオン!!」


しかし相手は狼型の魔獣、そして自分は6歳の子供だ。どちらが早いかなど子供でも分かる問題だ。当然狼型の魔獣が追いつく。


「ガルルゥ!」

「うわぁ!」


ロストは後ろを確認する。当然狼の魔獣がすぐ真後ろにいて口を開いたところだった。


「くぅ!」


偶然というべきか、奇跡というべきか。ロストは赤色熊が現れた時に気休めとしてボウガンを持っていた。そしてそのボウガンを後ろに向けて射出する。


パシュッ!


「ガウァ!!」

「?」


全力疾走しながらも後ろを見るとどうやらビギナーズラックなのか狼型の魔獣の目玉に直撃していた。どうやらいくら魔神の食堂の魔物とはいえ眼球は柔らかいようだ。しかし安心など出来る訳がない。一匹追い払ったとしてまだ四匹いるのだ。


「グルゥ!」


再び新たな狼が噛み付こうとする。ボウガンは先ほどの一本を射出してしまい次弾が装填されている訳もなく、矢を放つこともできずにもはやガラクタか鈍器としての役割しか果たさない。


「ううう!!」


とにかく追い払いたくてボウガンを鈍器に見立て殴る。しかしここの魔獣達は一匹一匹が人間界ではとんでもない危険度を持っている。そんな魔物に向かい6歳児の腕力で叩きつけられた鈍器なんて物は鬱陶しい以外なんでもない。


「グルァ!」


そしてその狼は再度振るわれたボウガンの軌道を見切り、避ける。そして遂にロストの脇腹に噛み付いた。


「グルゥ!!」

「ぎゃあああああ!!」


狼は噛み付きロストの肉をそのまま引きちぎった。


「ううううう」

「グルァ!」


更に他の狼もこぞって弱い獲物を捕食しようと群がろうとする。


「うわああああああああ!!」


肉を引きちぎられた痛み、化物に追い掛け回される恐怖。いろんな感情がグチャグチャにかき混ぜた悲鳴を上げながらも逃げる。そして遂に・・・


「あああああ!!!!・・・・ああ?」


必死に逃げてたどり着いた場所は・・・崖だった。


「ああ・・・」


もはやロストに湧く感情は諦めしか出てこない。


「短かったな・・・僕の人生・・・」


そして思い出すのはあの家での生活。楽しかった思い出は自分が3、4、5歳ころの思い出だけ。しかし6歳からの2ヶ月の生活が壮絶すぎて今はその怒りしか出てこない。


「あの人の手、とったの間違いだったかなぁ・・・うっ!」


そして横腹を見ると真っ黒に黒ずんでいて悪臭を放っている。これは・・・


「ああ、腐ったのか。ははは・・・本当に笑えるなぁ。ここまでくると」

「ガルルルゥ・・・」

「お前達が僕の死神か」


もはや狼はロストにとって死神にしか見えなかった。後ろは奈落の崖、前は死神。


「ガルァ!」


そして狼が食らいつこうとした瞬間に新たな何かが現れた。


「グルルルゥ」

「ははは、ここにきてまたお前か」


そう、現れたのは赤色熊だった。恐らく先ほどとは別の個体だろう。あんな悲鳴を上げたのだ、新しい魔物が聞きつけても何も不思議はない。


「あ・・・やばい、目眩がしてきた・・・」


もはやロストの足元はおぼつかずフラフラしている。


「グルルゥ」

「ガルルァ」


(またここにさっきの再現が起きるのか。まあ寿命がほんの少し伸びたのを喜ぶべきなのかな)


そんな思いしか湧いてこない。そして再び狼と赤色熊の喰らい合いがロストの目の前でスタートした。


「グルァ!!」

「アオオオオン!!」


狼は再び背中の膨らみを振動させ始めた。そして狼達の口が開き熊に向かい咆哮が放たれた。


「グルゥ!」


熊は驚くべきことに両腕を重ね、防御の体勢をとったのだ。当然熊は耐える。そして偶然ロストの目の前に動いてきた。


「アオオオン!!」


恐らく別の狼の咆哮が再び放たれた。熊はそれも耐えた。しかし・・・後ろのロストは熊が殺しきれなかった衝撃波をモロに浴び、吹き飛ばされる。





「・・・え?」




フワッとロストの体が宙を浮く。そして・・・


「ああ、こういう事になるのか・・・」


ロストは真っ暗で底が見えない奈落に消えていった。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

先に申し上げさせて頂きますと、次回がとても長くなりそうです。この作品はというか自分は1話1500文字以上を目安にしているのですが、次回はまず最低でも前回の量になると思っていただき結構です。あれ以上になるのかなぁ・・・ とにもかくにも、この作品をどうかよろしくお願いします。

誤字脱字がありましたらお手数ですが報告よろしくお願いします。

応援、感想、アドバイス、お待ちしています


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