第2話 チュートリアル 後編
「では、右手を振ってみてください」
そういって、イザベラがスマホでも振るかのように右手を振ったのを見て真似てみる。すると、
「・・・ゲームっぽくなっちまったなぁ」
俺の目の前にパソコンなどでよく見られるようなウィンドウが現れた。『メインメニュー』らしい。ずらっといろんな項目が並んでおり『装備品』だの『アイテムパック』だの『スキルリスト』だのとある。
「では、まずはアイテムの使用方法からです。アイテムパックを選択し中から『ヒールドリンク』を選択してください」
マウスとかないから多分、タッチ操作だろう。そう予想を付けて『アイテムパック』と書かれた項目を選択すると『アイテム一覧』と書かれた新たなウィンドウが展開された。画像付きで。だが、率直にいうと今現在の俺のアイテムパックには『ヒールドリンク』と書かれた物質が一種類しかなかった。画像の真下に『ヒールドリンク×5』と書いてあることからおそらく五個あるんだろう・・・きっと。
そして、その画像をタッチするとウィンドウが左右にずれて目の前に画像と同じ品が出現する。そして、浮いている。取れんのか?と思って手に取ってみるとどうやら実物のようだ、あっさりと俺の手に収まった。大きさはちっちゃいポカリスウェットのペットボトルと同じ位・・・って言って理解できる人はいるのであろうか?
「飲んでみてください」
しげしげと『ヒールドリンク』なるものを眺めているとイザベラがそう促して来た。ゴクリ、とその中身の透明の液体をあおってみると、俺の体から緑色のエフェクトが発生し水の味がした・・・というか味が無かった。飲んだ感じだとミネラルウォーターという感じだ。
「今のが回復アイテムで、緑のエフェクトは回復エフェクトといって回復を受けた時に発生します。パーティー外のプレイヤー及びモンスターには視認不可能です。ちなみに先程アイテムを呼び出したあと触れずに十秒そのままにしておくと自動的にアイテムパックに戻ります。
次は『メインメニュー』から『スキルリスト』を選択してください」
俺は即座にメインメニューにもどりスキルリストを探す。・・・あったあった。スキルリストを選択すると俺の前に新たなウィンドウが開く。『スキルリスト』だそうだ。『ソウルイーター』だの『自動回復』だのが目を引く。
「スキルリストはどのスキルも最初に選び放題というわけではありません。進化の系図のように一個のスキルをある程度のレベルまであげれば次のスキルを選べるという仕組みです。ちなみにスキルのレベルは、プレイヤーのレベルが1上がるごとに1スキルポイントもらえて、それを使うごとにレベルが上がります。そして、レベルが上がるごとに効果も強くなっていきます」
「ちょっと待った。ステータスポイントとスキルポイントは別物なのか?」
もしかするとステータスポイントをスキルポイントに換算して最初からスキル習得に邁進できるかもと考えた俺の野望はあっさり砕く散る。
「別物です。それと、スキルにはアクティブスキルと言う一定条件下であれば自動的に発動するスキルと、パッシブスキルと言うスキル名を口に出すことで発動できるスキルがあります。中にはMPを消費するものもあるのでご注意ください」
ふ〜ん、と思って目を戻すと一番左にある『アイテム呼び出し』というスキルが見えた。しかもレベルは1。上限も1のようだ。そのことを聞くと
「それは初期状態から設定されているスキルでパッシブスキルですが、このスキルのみ『アイテムパック』内のアイテムの名前を呼ぶことで使用できるスキルです」
「ほう、というと?」
「試しにヒールドリンクと呼んでみてください」
「ヒールドリンク」
俺がそういった瞬間先程と同じようにヒールドリンクが俺の前に現れた。そして俺はすぐさま手にとり『ジョジョの奇妙な冒険』第三部主人公空条承太郎の伝説の『テメエは俺を怒らせた』ポーズをとる。その顔にはドヤッと擬音をつけれる顔をしながら。
「妙なポーズは要りません」
・・・容赦なく突っ込みを入れてくるイザベラに全俺が涙した。だれが予想したろうか、こんな結末。
「まあ、個人のご自由ですのでいいですが。続いてはアイテムの格納についてです。『アイテムパック』を開き、そのウィンドウへ『ヒールドリンク』を投げ込んでください」
凄く冷たい目をした(心無しか侮蔑の色)イザベラに言われた通りにやると、ヒールドリンクはアイテムパックのウィンドウに吸い込まれそして、アイテムパック内の『ヒールドリンク×3』が『ヒールドリンク×4』になった。
「では、いよいよ次は戦闘についてです」
その言葉を聞いた時に俺の体の中心はスウッと冷えた。戦闘、RPGにはお約束のものだ。まあ、このゲームはRPGかまだ確認できてないとかそういうツッコミはさておき、ラスボスを倒すのが恐らくこのゲームのクリア条件と睨んでる俺にとっては最重要優先項目なのだ。
「では、まずは武器の選択を行います。武器により攻撃力が高かったりしますがどれもショップに行けば同じ値段で売られていますのでご安心を。
では、武器の種類を説明します。小回りの利く代わりに攻撃力は低くリーチは短いダガー。攻撃力は高いしガードを出来てしまうが動作が鈍くなる大剣、棒の両端に刃がついている両剣、拳で殴るので威力高めのナックル、リーチの長い槍、盾を装備できやや機敏な動作ができる片手剣、貫通性能の高いカタナ、矢は武器としても一応使える弓、中距離に特化した銃、射撃武器では威力が高い大砲、魔法の威力を底上げにする杖に、魔法を機雷のように配置できる魔法符、敵を打ち砕く大鎚のウチからお選びください」
というイザベラの前にズラッと武器が並ぶが説明を聞いたときから俺にはピンと来ている武器が一つあった。ほとんどのゲームでガードができ、かつ素早く動けてしまう片手剣こそ俺の武器にふさわしい。
「せっかくだから俺はこの赤い剣を選ぶぜえ!」
別に赤くもない片手剣を手に取る。初めて手に取ったそれは、鉄以外にも重い要因がある気がした。アイテム名は『鉄の剣』だそうだ。そして手に取った片手剣以外のものは全て消えてしまった。
「ご安心ください。先程の武器は倉庫に仕舞われました」
「倉庫?」
「ギルドや宿屋の端末からアクセスできます。詳しい使い方はヘルプをどうぞ」
ふ〜んと思ってると、そこでポトンと上から何かが落ちて来た。なんだろうと思って見るとRPGでよく見るアイツだった。そう、初心者の友スライムだ。
「さて、武器の使い方・・・は適当に振ったりして相手に当たればダメージになります。しかしちゃんと力を込めた方がダメージが出ます。次に、ウェポンアーツです。これは、パッシブスキルと同じく名前を呼ぶと、そのウェポンアーツの対応武器種と使用武器が一致していれば発動致します。そしてウェポンアーツの習得方法ですが、まずはこちらのディスクをどうぞ」
そう言ってイザベラはディスクを渡して来たので、それに触れてみると、少し小さめのウィンドウが表示され『ストライクを習得しますか?』と書かれていたので、その下の『はい』のところをタッチすると
『ウェポンアーツ「ストライク」を習得しました』
とシステムボイスが流れ、目の前のディスクは砕けた。
「このようにしてウェポンアーツは習得できます。ちなみに、『ストライク』は一撃の攻撃力を上げることが出来、一瞬だけダメージにブーストが掛かるようになっています。試しに、スライムへ剣を振り下ろしつつ『ストライク』と唱えてください」
「ストライク」
スライムの方を向き剣を振り下ろしつつそう唱える。すると途中で剣速が早くなり、スライムは潰された。よわっちぃ!
そして、テッテレーという音が聞こえて
『レベルがあがりました』
というシステムボイスが流れた。すぐにメインメニューから『ステータス』を開き『ステータスポイントを振り分ける』と書かれた所を選択して、ステータスポイントを割り振った。
「これで、チュートリアルは終わりです。お疲れ様でした。それでは『NEW LIFE GAME』をお楽しみください」
イザベラがそう言って頭を下げると意識がぼうっとしてきた。そしてだんだんとあいまいになっていき意識は闇に包まれた。
これでようやくチュートリアル終了です。長過ぎるだろ・・・。
来週は<ガイア>列伝の方を更新します。それでは、また。
7/20追記 題名に「第2話」の部分が抜けていたので追加しました。




