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バンッ、とわずかに開いていた扉が勢いよく閉まり、俺は非常に驚いた。
「……主役が舞台を降りちゃ、ダ・メ・だ・ぞ」
耳元で姫の声が聞こえる。
「……ごめん、なさい」
俺はドアノブにかけていた手を離した。
「さっきまでの話し、ちゃんと聞いてた?」
「あ……いや、その、声は届いてたよ? ただ、俺も、ね? ほら、割と神経使って、気付かれないようにこう地面を這ってね? 音を立てないようにだよ? 邪魔しちゃ悪いと思って。それでようやく逃げられると……」
「話し、ちゃんと聞いてた?」
「……ごめんなさい、ほとんど聞いてませんでした」
「だろうと思った。だから言いたいこと一杯言っちゃった」
「何を言ったのかな? 気になるなぁ……俺の恥ずかしい話しとかじゃないよね?」
「大丈夫、私がしっかりやっといたから、夏依は何も心配しないで、私の言うことに賛同すればいいの」
「え? や、それは……」
「そう言えば、小学校の時の『あの写真』、実はまだ私の部屋に飾ってあるんだ」
「はいごめんなさい姫の言う通り!」
「うんうん、良い子良い子」
そして姫が離れた。
俺はもう一度、気付かれないようにそーっとドアノブに手を伸ばした……がしかし、戻ってきた姫がその手を取り、あの二人の元まで俺を引きずって行って、言った。
「じゃあ、行きましょうか!」




