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かりん党  作者: 相上音
前編 告白
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 あと何日たてば日曜日だなぁ、とか。

 あと何日たてば期末試験だなぁ、とか。

 あと何日たてば夏休みだなぁ、とか。

 いつも先のことばかりに目を向けていて、ふと考えたら今何をしているか分かんない、そんな高校生活をご多分に漏れず自分も送るのかな――なんてことを、中学校の教室の窓から見上げた空のくすみ具合から連想していた時、俺はそれに気付いてしまったのだ。

 だから、ちょっと変えてみようかな~なんて思ったりしちゃった俺、中学三年生。

 その時の志望校は、最寄駅から二つ行った駅で降りて徒歩五分くらいの県立高校。同じ中学の奴らも大体そこだった。

 だから、ちょっと変えてみようかな、なんて思ったりしちゃった俺、中学三年生。

 志望校を駅とは逆方向、徒歩で約一時間、自転車で約三十分、バスで二十分だがバス停は徒歩で十分かかる駅前だから順調にいってしめて三十分かかる場所にある、山、海、その両方に挟まれた小高い丘に建つ高校に変えてみた。ちなみにこの二校、実際の距離的はさほど離れてはいないが、偏差値的なものはびっくりして耳がおっきくなっちゃうくらい変わってくる。

 先生からは無理だからやめろと諭された。

 両親からは特に何も言われなかった。

 そんな期待(?)を一身に背負った俺は、自分でも意外なことに地道に努力を重ね、見事合格を果たした。

 先生は驚きを通り越して呆れていた。

 両親は苦笑いだった。

 そんな祝福(?)を受けながら俺は、自分で起こした変化に満足していた。

 今までのように流れる時に追従するような生き方ではなく、自ら開拓した道を歩み出したのだと。マルコ・ポーロも志を同じくした心の友だとさえ思っていた。

 しかし――と、今さらながら思う。そんなことはとても些細なことだったのだと。例えるならば今日の隣の家の晩御飯のおかずはアジの開きだった、という位。何がマルコだふざけんな。

 ちょっと前の自分じゃ手も足も出せないような高校に入れたことは、単なるきっかけでしかないということを、俺は気付いていなかった。

 本当の意味での、俺の生活の劇的な変化はその後にやってきた。

 そう、これから始まる高校生活は、俺の今までの生活からは考えられないような非常に非日常的な日常になる。それこそ、これから先長いあるいは短い人生の中で思い出すことが無い、なんてことが無いくらいに。

 始まりは数日前、麗らかな四月の朝を歌う目覚まし機能の電子音。

 ピピピピピピ……

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