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学生事情


「た、助かった……のか?」

 近づいてくるパトカーのサイレンを聞きながら、カヅトは安堵のため息を漏らした。が、それも束の間、すぐに我に返る。今のカヅトの姿は、学生ズボンに学校指定のブレザー……いわゆる制服だ。ブレザーの下にパーカーを着て、フードを襟から出すのがカヅトの密かなマイブームだ。実に高校生らしい。

 だが、靴は履いていない。

 おまけに右手には大剣……。


 職 質 不 可 避 。


「と、とりあえずこいつ、どうすりゃいいんだよ……」

 カヅトは持て余す得物に視線を移した。すると、どうしたことか! 大剣を炎が包み込んだのも一瞬、蒼炎もろとも消えてなくなってしまったではないか! まるで手品! タネも仕掛けもなければ、炎の熱さもなかったが……!

「……もう驚かないな、さすがに……」

 慣れって怖い!


 遠くにパトカーの赤いランプが見えた。剣がなくなった今も、職質を受けるとなにかと面倒だ……泥棒の件もある。なるべく人目を避けて帰るべきか。しかし、どこへ? 帰るべき家は、もう焼け落ちてしまったというのに……。そんな折、


「カヅくん、だよね?」


 路頭に迷うカヅトに声がかけられた。ちょっと高くて、ちょっと舌っ足らずなその声……聞き覚えがあった。振り返ると、

「あぁ、ルリノか……」

 カヅトのクラスメートにして幼馴染であるルリノが立っていた。自慢のボブカットは薄い青色で、髪先に行くほど色を濃くしている。カヅトはこれを空色ヘアーと呼んでいた。黄昏時の東空に似ているからだ。シャレオツ!


「あぁ、ルリノか……じゃないよぅ! もぉ~……カヅくん!」

 パタパタと近づいたかと思うと、ルリはいきなりカヅトに抱きついた! 大胆! 甘い香りがカヅトの鼻をくすぐる……ちょっとクラッときた。

「今日も学校来てなかったでしょ? 帰りに寄ってみたらカヅくん家、火事になってるし……!」

 潤んだ瞳で見上げるルリノ。カヅトは思わずドキリとしてしまう。幼少の頃から親しんだ仲とは言え、やはり男と女……青春である。

「まぁ、うん……俺もさすがにビビった」

 恥ずかしさを誤魔化すため、カヅトはルリノを引き剥がす。それでも彼女は心配そうに顔色を窺ってきた。


「ねぇ、大丈夫……じゃないよね? 顔色悪いよ? 私の家でちょっと休みなよ……カヅくん家、あんなことになっちゃってるし……。消防とか警察の人には落ち着いてからお話、しよ? ね?」

「む……わりぃ、そうするわ……」

 願ってもない申し出にカヅトは甘えることにした。とりあえず、安息が欲しい……。めまぐるしい状況の変化に、カヅトの精神はそろそろ限界をむかえようとしているところだった。



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