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Rolling bottle

【プレイヤー は のこり 12 にん です 。▼】




 カヅトの視界に、そんな文言を並べるウインドウが現れた。


 代わりに、JJの姿が消えた――消滅した。


「……JJは、どこ行ったんだ?」


 カヅトは誰ともなく訊ねた。ルリノが目を見開いたまま、力なく首を横に振っている。警官たちは忽然と姿を消した青年を探し、周囲をキョロキョロと見回していた。

 どこを探しても、いない。少なくとも、ここにはいない――認識できる範囲には、いない。カヅトもルリノも、なぜかそう直感していた。

 なぜか――否、根拠はある。思い当たる節がある。


 これはゲームで。


 そしてJJは【GAME OVER】になったのだ。


 そう、つまり、ゲームが終わってしまったのだ。


 だから、消滅した。


 消えた。




 ゲームをやったことのある人ならば、誰しも一度は考えるであろう……「やられたキャラクターはどこへ行くのだろう?」と。


 その答えは実にシンプルだ――「どこにも行かない」。


「行く」のではない……「消える」のだから。


「やられたキャラクターは消える」。


 それで、おしまいだ。




「……ふむふむ。彼の名前はJJと言うのか。……訂正、言ったのか」

 アラシベは呟くように言った…… 先 ほ ど と ま っ た く 変 わ ら な い 語 気 で 。

「なるほどなるほど。文字通りの『消滅』――『消えて滅ぶ』。これが【GAME OVER】と言うわけか……いやいや、まだ決めつけるには早いけれども。もしかしたら、どこかに瞬間移動しただけかもしれない。しかししかし、これがゲームである以上、敗者にはなにかしらの『ペナルティ』が待ち受けていると取るのが妥当だろうねぇ」


 アラシベの言う『ペナルティ』が、『消滅』という可能性。いかにもあり得そうだとカヅトは思った。もし自身がこのようなゲームを作ったら、敗者はゲームから除外されるように計らうだろう。


 だが、それはゲームの話――リアルではない。


『リタイアさせることでゲームから除外する』という 穏 便 な 方 法 など、初めからなかったのである。カヅトもルリノも、【GAME OVER】になるということを――ゲームから除外されるということを――せいぜい、ゲーマーとしてサバイバルに参加する権利を剥奪されるとか、ジャンルが使えなくなるとか、その程度に考えていた。


 忘れていたのだ、これがベリーハードモードだということを。

 あるいは舐めていたのだ、ベリーハードモードというものを。


 生き残る為には、勝者になるしかない。


 そんな、ゲームの根底となるような、当たり前のルール。



「……さてさて、JJ氏の消滅にいつまでも呆けている場合ではないよ」

 不意に、アラシベが手を叩いた。拍手の音で、その場にいた全員が我に返った。皆の視線がアラシベに集まる。


「犯人がいなくなってしまったなら、共犯者に話を聞くしかないね……ということで、確保」

「「……え?」」


 まさに鶴の一声。アラシベの命令で、警官たちが一斉に動き出した。もちろん、カヅトとルリノに向かってだ!

「クソッ! やっぱりこうなるのかよ!」

 カヅトは咄嗟に蒼炎の剣を出現させた。が、攻撃に転じる暇はなかった。警官たちの手によって、瞬く間にアスファルトへと組み伏せられてしまう。それは丸腰のルリノでも同じだった。


「カヅくん! カヅくんっ!」

「ルリノ! ぐっ……! あ、あんた、お、俺たちもゲームから除外するつもりか?」

「当然の話だろう? しかししかし、それは今すぐの話ではない……私の頭脳は冴えている」

 アスファルト上に転がっていた蒼炎の剣を遠くへ蹴り飛ばすアラシベ。その後、彼が腰の辺りから取り出したのは……手錠だ。一切の躊躇が感じられない、まったく淀みない動作で、カヅトの両腕は背後で拘束された。


 まさか人生初逮捕がこんな時に訪れるとは露にも思わなかった。いや、というよりも、まさか人生の中でお縄に付くことがあるとは思ってもいなかった。手錠はカヅトの予想に反し、軽かった。胸に刺さったままの鎖の方がずっと重く、苦しい。


「カヅト氏には私と一緒に来てもらおう」

「ちょっ……!?」

 アラシベの手によって、カヅトは強引に立たされた。そのまま引きずるようにして、パトカーの群れへと連れられていく……一台だけ、場違いなセダンが停まっていた。


「カヅくん……っ! カヅくん! うぅ……! どいてよ! 離してっ!!」

 ルリノはもがくものの、大の大人に数人掛かりで捕らえられていてはさすがに身動きが取れない。カヅトがなんとか振り返ると、ルリノと視線が合った。


「ルリノ……!」

「カヅくん……!」





 炸裂音は一瞬だった。


 その一瞬で、ルリノを押さえ込む警官たちの半分以上の――脳味噌が吹き飛んだ!


 血飛沫に染まる鉄橋――いったいなにが起こったのか。最も早く、現状に暫定的な答えを出したのは、


「……走れるかい? いやいや、答えなくて結構」

 アラシベだ。カヅトの腰回りを持って肩に担ぐと、一直線にセダンへと走り始めた。細身の割には力持ちらしい。


 肩に担がれたカヅトは、だからアラシベの背後を――鉄橋の様子を見ることができた。鉄橋から遠ざかりつつ、鉄橋の様子を観察することができた。


 うろたえる警官たち。血を流しながら倒れる警官たち。血溜まりに押さえつけられたままのルリノ。それから――



「チッ……判断が早いな。厄介そうだゼ、あの刑事……」


 マシンガンを構えた金髪の少女が、パトカーの陰から顔を覗かせていた。













→第2章へ続く





第1章終了ということで、ここでひと区切りとさせていただきます。


次回更新は未定です。

楽しみにしていただいている方、申し訳ありません。

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