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【GAMEOVER】


 けれども、JJの狼狽ぶりは明らかに他2人とは違っていた。

「待て、待ってくれ! サツなんて聞いてねェぞ! クソッ! ふざけんなッ!」

 JJは持っていたバットで鎖を叩いた。鋭い金属音が響く……が、氷の破片が飛び散っただけで、鎖自体には傷ひとつついていない。


 そうしている間にも、橋の上にはパトカーの群れが集まり始めている。橋の両端が警官たちに占領されるのは時間の問題だった。今し方駆けつけたとは思えない……事実、そうではないのだろう。アラシベがあらかじめ待機させていたに違いない。


「クソッ……! クソッくそくそくそくそくそがああああッ!!」

 闇雲に鎖を叩くJJ。だがやはり、氷の鎖はびくともしない。そのうちJJはバットを捨て、鉄橋の手摺りへと足を掛けた――飛び降りるつもりだ!


「私の質問はまだ終わっていないよ」

 アラシベは顎をわずかに動かした。途端、巨人のマントの下で鎖が引かれ、JJの体が手摺りから引きずり下ろされる。地面に這いつくばったJJに対し、アラシベは温度の感じ取れない声を掛ける。


「キミのジャンルはなんだい?」

「てめ――」

「いやいや。やはり答えなくて結構……それにそれに、キミにはもう『後がない』――実に様々な意味でね」


 アラシベは腰の後ろで手を組み、JJの方へゆっくりと歩き始めた。

「ここ数日の間にこの近辺で多発している事件――被害者や目撃者の誰もが「犯人像を覚えていない」という『不可解な事件』だ。そう、『不可解』……犯人を「見ていない」のならまだ解釈が可能だ。だがだが、「覚えていない」という証言は不自然だ……自然ではない。「覚えていない」というのは『少なくとも一度は認識したものの、記憶に留まっておらず再現不可能な事象』に対して使う言葉だからね。すなわちすなわち、関係者の人々は皆、「一度は犯人を見ている」のに「思い出せない」ということになる……。

 そんなことって、果たしてあり得るかな? 普通じゃあない……普通なら、まずあり得ない。けどけど、例えば犯罪者が『ゲーマー』だったとしたら? もしそういった『ジャンル』があるとしたら――犯罪を隠蔽することができるジャンルがあるとしたら? ……興味が無いゲームには疎い私でも、『クライムシミュレーション』なるジャンルに辿り着くのは、そう難しいことではなかったよ。最近では、未成年犯罪と過激なゲームの因果関係を唱える人も少なくないからね……刑事をやってると、いやでも耳に入ってくる。まぁ、人を犯罪に駆り立てる心理がそんな簡単で単純で純粋な原因に依るものだったなら、世の中の犯罪はもっと少なかったと思うけど……。

 とにかく。事件のプロファイルから、『クライムシミュレーション』のジャンルを持つゲーマーがいると私は推測した。問題は、そのゲーマーをどうやって特定するかという点だったが……杞憂だったようだね。こうもあからさまだとは……まぁ、思ってなかったこともないけれど。他にも候補はいたんだけれど……キミで間違いなさそうだね。キミが『クライムシミュレーション』のジャンルを持つゲーマーだ」



 警官たちがカヅトを、ルリノを、そしてJJを囲む。地面にしゃがみ込んだままのカヅトは、蒼炎の剣を取り出すべきか否か――ひいては警官たちと戦うべきかどうか迷っていた。なにせ数が多い。ざっと見ただけでも十数人、しかも得体の知れないゲーマー刑事・アラシベもいる。胸には重い鎖が繋がっている。そしてなにより『MPが足りない!』


「やめろ! 来るな! オレ様にさわるんじゃねぇええ! オレ様はまだ、このゲームをっ! このゲーム、ジャンルで……っ! オレ様が! 楽しむんだ! こんな、クソみてぇなリアル……ぶっ壊すんだ! やめろ! オレ様はまだ楽しんでねぇ! まだ足りねぇ! まだ、まだっ!」

 声を荒げるJJ。包囲網を狭める警官たち。JJを守る装備はもうなにもない――釘バットが、本当に最後の武器だったのだ。


「やはりやはり、私の頭脳は冴えている……キミのジャンルは『クライムシミュレーション』……そして――」

 アラシベが肩を竦めた。JJに向かって警官たちが一斉に飛びかかる!


「――そして、『クライムシミュレーション』の【GAME OVER】条件は……『捕まること』じゃないのかな?」


「う――うおああああああアアアアアァァァ ァ ァ  ァ   ァ     ァ    」

 警官に取り押さえられた瞬間、JJが悲鳴を上げた。さらに――


 体 が 点 滅 し 始 め た !


 まるで透明人間のように存在が消え、かと思えば次の瞬間には押さえつけられたままの状態で伏している。まさに点滅――徐々にその感覚が短くなっていく。



 そして、JJの姿は忽然と消えた。





「……――え?」

 カヅトは目を疑った――いや、その場に居合わせた誰もが目を疑った。

 消えたのだ。人ひとりが、忽然と、跡も形も残さず、綺麗さっぱり、抜け落ちるように。


『消滅』――それ以上の表現が思い浮かばない。











【ザンネン! JJ の ギャングスター への みちは とざされてしまった! ▼】











【ゲーマーNo.5 JJ が GAME OVER に なりました 。▼】











【プレイヤー は のこり 12 にん です 。▼】














次回更新は12/7(土)予定!

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