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open hands & surface

執筆環境の変化により、インデント(行頭字下げ)が正常におこなえていません。

次回更新分より随時修正していきますので、ご容赦くださいmm

その声を聞いた時、カヅトは言いしれぬ恐怖を感じた。声音に人としての温もりが感じられない――などということはなく、たしかに人の、人としての声である。人としての声ではある。だが……奇妙なほどに 生 ぬ る い 。温度が一定過ぎて、逆に温もりを感じられない――そんな声だった。


道路から生えるようにしてカヅトの胸に繋がった鎖。その存在に気づき、ルリノが悲鳴を上げる。

「かっ、カヅくん!? 大丈夫!?」

「ふむふむ。カヅくん、か……ではでは、彼がカヅト氏で、キミがルリノ氏だね?」

「っ!?」

背後でルリノが身構えたのがわかった。しかし、カヅトには振り返る余裕がない。振り返るつもりもない。目の前の男から注意を逸らしてはならない……ひとつの事実を直感で理解していた。

「アンタ……ゲーマーか!」

「さぁさぁ、どうだろう? その質問に答える必要性を私は――おっと」

相変わらずの――文字通り、相変わらずの――口調で話していたアラシベが、ピクリと眉を動かした。

ピ ク リ と 眉 を 動 か し た の だ !

だが、その、たったそれだけの動作が、彼にとっていかにレアなものか……それを推し量ることのできる者は、この場にいない。

幸か不幸か――おそらく両方だが――いないのである。


「……そのとおり。私はゲーマーだよ……いや、私 も ゲーマーだと言うべきかな?」

アラシベは諸手を広げて言い切った。その発言に、カヅトの中に湧き出た『気味悪さ』はさらに色を強める。

たった今。

先ほどの戦いで得た教訓――「手の内は極力明かさない方が有利になる」という戦略。ごく単純なボードゲームにでさえ適応できるこの基本的な戦略を、カヅトはかなり遅れて、それでも思い出した。

はずだった、が。

たった今。

それが覆された。

目の前の男は……名乗るよりも先に、自身がゲーマーであると――倒すべき敵であると、そう自己紹介したのだ。


順序がめちゃくちゃである。

厳密に言えば、アラシベはゲーマーだと言っただけで、ジャンルを明かした訳ではない。もちろん彼が、本当はゲーマーではなく、カヅト他2人を翻弄しようとしているという線も――解釈にかなりの無理が生じるが――なかったわけではない。もっとも、カヅトの胸に不可解な鎖が繋がれた時点で、その線は消えたと言えよう。

当然だが、アラシベが自身を紹介したように――彼は間違いなくゲーマーである。白い兎から授かったナンバーも、ある。


だから、ジャンルを明かしていないという点だけに焦点を絞れば、アラシベは「手の内を明かさない」戦略に背いていないようにも思える……が、所詮、詭弁である。

ゲーマーであることさえ明かす前に、勝負を決すればよかったのだから。


と、そこまで一気に考えて、冷や汗をかいた人間が1人。


カヅト……だとしたら、この少年の短時間での成長ぶりに驚くしかない。戦いの中で、彼の中に眠る秘められた力が覚醒したのである!


……というような展開には、残念ながら、当然ながら、ならない。

カヅトは凡人以上の頭脳を持ち合わせてはいないし、リテラシー能力も並、あるいはそれ以下である。

彼がキレ者だったら、ルリノの秘めたる想いに3年は早く気づけていただろう。それにおそらく、薄暗い部屋でコントローラーを握り、リアルに悪態をついたりはしていない。そしてそれ故に、こんなベリーハードなゲームにも巻き込まれていなかったはずだ。


カヅトはまったく別のことを考えていた……否。ま っ た く 同 じ こ と を 、 別 の 角 度 か ら 考 え て い た 。


が、それはまだ、彼の中で具体的な像を結んでいない。角度が違えば、ぼやけて見えることもある。


一瞬で思考を巡らせて……そしてカヅトの、あるいは自身の置かれた状況が危機的なものであると悟ったのは。


「JJ! あの男をやっつけたらチューしたげる!」

言わずもがな、空色の髪の少女――ルリノである。


彼女の提案に、カヅトは眉根を寄せ、アラシベは眉ひとつ動かさず、JJは片方の眉毛をつり上げた。

「……口にか?」

「……口でいいの?」

……多くは語るまい。言葉というのは難しく、解釈というのは人それぞれである。ただ、JJは必要以上に張り切って前に出た。


ルリノは思い至ったのである……すなわち。


このスーツの男は、 も う 勝 負 を 決 し た か ら 、 ゲーマーだと明かしたのではないか。


と。


早計である可能性は加味されている。というよりも、おそらくこの判断は早計であるとルリノは自覚している。自覚しているが、ゼロでない可能性は可能な限りゼロにしておくべきである――それが彼女の考えだ。


幸い、『武器』はある――いる。



「てめぇもゲーマーなら……恨みっこはなしだよなァ!? キヒヒ!」

JJは虚空から野球バットを取り出した。それも普通のバットではない……釘バットだ! 禍々しい!


「へぇ……そんなもの、どこに隠し持ってたんだい? 空中から取り出したように見えたが……その能力はキミのジャンルに関係しているのかな? 興味深いねぇ」

そんな凶悪な得物を前にしても、アラシベは依然としてポーカーフェイスだ。

その間にも、JJはどんどん間合いを詰める。

「キヒ……おかしなヤローだ。んなこたぁ知らなくていいんだぜ……そのイカした頭、もうすぐ吹っ飛んじまうからなァ!」

「そうかいそうかい。じゃあ吹き飛ぶ前に好きなだけおしゃべりしておこうかな……」

だらりと下げた腕。アラシベは手首のスナップだけでJJを指さした。


「キミが放火犯だね?」



次回更新は11/23(土)予定!

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