遭遇
「さ。そうと決まれば早く移動しちゃお? カヅくん、疲れてるでしょ?」
「そうだな。ここから一番近い宿泊施設となると……」
ルリノの提案を無碍にする理由はどこにもない。カヅトが疲れているのは事実だ。体力的にというよりも、精神的に。
「ケータイで検索……あ、そうだった」
「カヅくん、ケータイ燃えちゃったもんね」
「ルリノ、頼む」
「家に置いて来ちゃった。てへ」
「マジか……」
「ねぇ、あなたはケータイ持ってるよね?」
「しょーがねーなァ~~~~~! オレ様がパパッと探してやんよ!」
「キャーステキ」
「キッヒッヒッ! 惚れてもいいんだぜェ?」
JJの勝ち誇ったようなドヤ顔には気づいていたが、カヅトは徹底的に無視することに決めていた。ルリノの棒読みに気づいていないJJもJJだが。
宿の検索をJJに任せつつ、3人は再び前進を始めた。渡っている橋はそこそこに大きなもので、二車線分の幅がある。一段高くなった両端には、立派に整備された歩道。そこを行儀よく並んで3人は歩いた。
だが、歩いただけであり……3人が渡りきることはなかった。
3 人 の う ち 、 誰 一 人 と し て 。
「こんばんは」
その声にいち早く反応したのは、先頭を歩いていたカヅトだった。次いで、ルリノが相手の存在を確認し、最後にJJがスマホから顔を上げる。
鉄橋の終わり、道路の中心に立っていたのは、クリーム色のスーツに身を包んだ男――撫でつけた黒髪に、白い束が一筋だけ混じっている。
「若者がこんな時間に外を出歩くのはよくないねぇ……深夜徘徊は感心しない」
「………………」
男の言葉はきっと3人の方へ向けて発されているのだろうが……カヅトもルリノも、JJでさえ反応しなかった。
深夜徘徊中の若者よりも、真夜中にスーツ姿で鉄橋の真ん中に立って深夜徘徊中の若者に声を掛ける男の方がよっぽど感心しない。
だからこそ、3人とも反応しなかった――反応しない方が吉だと判断した。即席のパーティだったが、面倒事は極力避けたいという考えは共有できていたらしい。
だが、真の面倒事とは、面倒事の方から近づいてくるからこそである。
「そういえばそういえば……近くで火事があったらしいけど、なにか知らないかな?」
横を通り過ぎようとしたカヅトだったが、スーツの男に進路を遮られてしまった。これで無視したら流石に怪しまれる。適当にあしらって先を急ごう――そう思い、カヅトは口を開いた。
「さぁ……知りませんけど――っ!?」
が、それが間違いだった。あしらうのが間違いだったわけではない……あしらい方を間違えたのだ。
気づいた時にはもう遅い……カヅトの胸に、鉄の鎖が繋がっていた!
「嘘はよくないね……キミたちはよく知ってるはずだよ。火事について……嘘がよくないことについても、ね」
スーツの男――刑事・アラシベは静かな表情のまま、淡々と言った。
次回更新は11/16(土)予定!




