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許されない罪

 階段を上りきった途端、襲い来る散弾! カヅトは咄嗟に身を引いて回避! ルリノの部屋へと逃げ込むJJ。カヅトもすかさず後を追う。開け放たれた窓から外へ……再び屋根の上へと躍り出た。


「さぁ、こっちだぜェ! ボウズ!」

 隣の屋根でJJが手招きしている。だが、流石のカヅトでもそんなわかりきった挑発には乗らない。屋根へと飛び移る代わりに、蒼炎の剣を大きく振り上げた。そして――炎の渦を叩きつけた!


「んな――」

 驚愕の表情を浮かべたJJが青い炎に押しつぶされる! 炎の塊は滑るように燃え広がり、瞬く間に屋根の上を覆い尽くした。


 チロチロと揺らめく青い残り火、モウモウと立ち上る煙……その煙幕を突き破り、JJが勢いよく飛び出す! 足下にはやんちゃなスケボー! さらに隣の屋根へと着地!

「おいおいおいおいおいおい……おめぇもマジで容赦ねぇ感じになってきてんなァ、ええェ?」

「これでも容赦してるつもりだよ。火傷で済ませてやるから、消し炭になる前に降参してくれ」

「ハッハァ~? だったら本気はもっとヤベェのか? てめぇのせいでご近所さんの家が一軒、消し炭になったぜ?」

「おまえは街ひとつ消し炭にするつもりだったろ!」


 屋根を飛び移るカヅト。JJは巧みなスケボーテクで屋根の上を渡り歩き――渡り滑り、執拗にショットガンをばら撒いてくる。そのたびに、瓦や外壁が無残な姿で飛び散った。ソーラーパネルも粉微塵!


 実情を言えば、この時カヅトは焦っていた。なぜなら……現時点で『自分の体が動いている』という状況が不思議でならなかったからだ。不思議であり、言いしれぬ気味悪さがあった……それほどに『異常』。

 自分自身のことながら――カヅトは自分の体について「不気味だ」という感想を抱いていたのである。ごく普通の人間ならば――『普通』とはまた、曖昧極まりない範囲だが――どういう感想を持つのだろうか。


『胸元に弾丸が突き刺さっているのに、いつもと変わらず動き回れる』……そんな状況下に置かれたとして!


 この不気味な状況はいつまで保ってくれるのだろう……カヅトは先ほどからそんなことを考えていた。命の危機に瀕した時、当事者の脳内ではどこか緊張感の足りない名前の化学物質がしこたま分泌され、超人的な身体能力・あるいは感覚を得る瞬間があるという。交通事故に遭遇した人はその数瞬が引き延ばされたように感じられる、というのがそれだろう。火事場の馬鹿力、走馬燈なども同じ類いかも知れない。


 同じように、カヅトもまた、自分自身がそんな『最期の一瞬』の中にいるのかも知れないと思ったのだ。だがしかし……どうやら、やはりその認識は間違いらしい。なぜなら傷口から血が――血液が、申し訳程度にしか出ていないのである! 胸に銃撃を受けたとすれば、それは間違いなく致命傷であるはずなのに!


 だが……カヅトも、このベリーハードと化したリアルに少しずつ順応しつつあった。不可解なことが起こっても、とりあえず受け入れて、まずは行動する――そういう指標を理解し始めている。ゲームに置き換えれば『定石』と言えようか。


 そんなカヅトの心中とは裏腹に、JJはケラケラと笑いながら屋根の上を踊る。

「オレ様のお気に入り『マフィア・オン・パレード』のボスによると、だ……『罪の大きさ』なんてのは関係ねェんだとよォ~! あるのは『許される罪』と『許されない罪』――その『境界線』だけ!」


 ショットガンを放ち、スケボーで屋根を飛び移ることを繰り返すJJ。カヅトは炎の柱を振りかざすものの、ことごとく回避されてしまう。非日常的な攻撃の応酬が続く。


「そしてボウズ! てめぇは超えちゃいけねェ『境界線』を飛び越えた! なァ!? 教えてくれよォ……てめぇはどうだったんだァ!? その超えちゃいけねェ『境界線』を超える瞬間ってのはよォ~!?」

「おまえと一緒にするな!」

 蒼炎を叩きつけるカヅト! ヒラリと避けるJJ!


「いィ~や! 一緒だァ! てめぇとオレ様……一線を越えた者同士仲良くやろうぜェ!? なァ!?」

「ふざけるな! おまえは好き好んで放火してるだろ! 俺は……やむを得ず、だ。とにかくおまえとは違う!」

「あァ~? なんの話をしてんだ、てめぇ?」


 JJが呆れたような表情を浮かべた……ちょうど弾切れを起こしたショットガンを無造作に放り投げながら。


「まったく日和ってんよなァ……えェ? 放火? ちげェよ……そんな火遊びの話をしてんじゃねェぜ……キヒヒ!『許されない罪』ってのはなァ……『殺人』のことだぜェ~!? さ・つ・じ・ん!」

「っ!?」

 カヅトは思わず息をのんだ! JJが虚空から取り出したのは、1本のナイフ――ごくごくありふれたもののように見えるが……?


「なんで……おまえがそれを……!?」

 だが……カヅトにとっては、ありふれたものではなかった! 右太もものカサブタが疼く……そう、JJの手に握られている銀のナイフ――それは紛れもなく、今は無きカヅトの家に忍び込んだ、今は亡き泥棒の得物だったのだ!



次回更新は8/31(土)予定!

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