JJ
「まぁ待てよ、ボウズ」
カヅトの啖呵に対し、No.5はヒラヒラと銃身を振って応えた。そのままジャケットの懐にピストルをしまうNo.5……敵前だというのに、一体どういう風の吹き回しだろうか?
「カヅくん、油断しちゃダメだよ……!」
眉根を寄せていたら、ルリノに袖を引っ張られてしまった。言われるまでもなく、油断するつもりはない。だが、その言葉に答えたのはカヅトではなかった。
「女は黙ってろやァ!!」
突然の怒号! No.5が怒鳴ったのだ! カヅトとルリノは思わず肩を震わせた。そんな二人に向かって、No.5はさらに凄む。
「コイツは男同士の決闘だぜェ……お互い、自己紹介くらいしとかねェか? ボウズもゲーマーなら、相手プレイヤーの名前くらい知っときてェと思うだろ? 違うか?」
「……じゃあおまえから名乗れよ」
「そう急かすなよ、ボウズ。堪え性のねェヤツは女にモテねェぞ……キヒヒ!」
不敵な笑みを浮かべるNo.5。相手が階段の中腹にいるからか、カヅトは少し見下されているような気がした……事実、見下されているのだろうが。
「オレ様はプレイヤーNo.5、JJ……能力は『クライムシミュレーション』ッ!」
No.5改め、JJが両腕を広げる。イニシャルだろうか? カヅトはその名前も気になったが、それよりも関心が向かったのはやはりジャンルだった。
『クライムシミュレーション』……その名の通り、ゲームの世界を舞台に犯罪行為を体験できるジャンルである。プレイヤーはギャングやマフィア、ヤクザなどの役職を与えられる場合が多く、その集団での地位や名声、富や快楽を手に入れるために犯罪へと手を染めることになる。ゲーム内での自由度は極めて高く、基本的に「なにをやってもよい」――その解釈の範囲が広ければ広いほど、この手のジャンルは評価されるのだ。ゲーム内容の反社会性から、年齢制限が掛けられていることがほとんどである。
……とはいうものの、当のカヅトも知識としてしかクライムシミュレーションというジャンルを知らなかった。年齢制限に引っかかるということも一因だが……そもそも犯罪行為に興味がない。疑似体験ですらしてみたいと思ったことがないのだ。そういったジャンルのゲームがあることは知っているし、それを愛好するゲーマーがいることも知っている……が、彼らの趣向は理解できないのである。
カヅトという少年は――多少なりとも卑屈で、傾いているところはあれど――まるっきり『善良』な人間だったのである。JJから言わせれば『クソマジメ』以外の何者でもない。
だが、理解できないからと言って考えようともしなかった日常と、カヅトが直面している現状は違う。文字通り、直面――目の前に、クライムシミュレーションの愛好家がいるのだから。それも、明確な敵として!
「ほォら、次はボウズの番だぜェ……名乗れよ」
カチカチと歯を鳴らすJJ。よく見れば、舌の上に大きなドクロのシルバーピアスが刺さっていた……食べづらそう!
「俺は……プレイヤーNo.13、カヅト。能力はRP――……ッ!?」
促されるがまま名乗りを上げたカヅト――だがしかし、その口上は中断されてしまった。いや、中断せざるを得なかった。
No.5の手に、いつの間にか――ショットガンが構えられていたからだ!
「カヅk――」
反応はルリノの方が早かった。だが、動き出したのはカヅトの方が先だ。
剣先から青い炎がほとばしる! 炸裂音! 発射された鉛の群れが――灼熱の壁に突き刺さって溶け落ちた。
「さすがに読めるぜ、卑怯者!」
「チッ! 勘の良いガキは死ね!」
発砲を繰り返しながら2階へと撤退していくJJ――まさに鉛の雨! カヅトとルリノは蒼炎の剣を盾にしてやり過ごすしかない。
「ルリノ。おまえは火の手が及ばないところまで逃げて、隠れてろ」
「カ、カヅくんは? どうするの?」
「俺はJJと戦う」
「私もついてk――」
「ダメだ」
「ふぇえ!? どうして!? 私だってゲーマーだよ!?」
「ルリノのジャンルじゃ、正面きってのバトルは不向きだ。さっきのショットガンを見たろ?」
「いきなり手の中に現れてた……手品みたいに」
「そう……俺と同じように『異次元空間にアイテムを収納する』ことができるっぽいな。わざわざ懐にピストルをしまったのは、俺らを油断させるためだったってことだろ。JJのジャンルは『クライムシミュレーション』……まだなにか隠し持ってる可能性が高い。危険だ」
「カヅくんにとっても危険だよ!」
「ルリノにとってのよりはマシだと思うけど、な!」
「あっ、カヅくん!」
ルリノの制止を背中で聞きつつ、カヅトはJJの後を追って2階へと駆けだした。
次回更新は8/17(土)予定!
……でしたが、一週分お休みをいただきたいと思います。ご容赦くださいmm
次回更新は8/24(土)を予定しています。




