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先制攻撃クリティカルヒット


「な、なに……これ……っ!?」

 隣でルリノが言葉を失っていた。カヅトは部屋を飛び出し、階段を駆け下りる。玄関を開けた途端、吹きつける熱波が容赦なく肌を焼いた! 火の手はもうそこまで来ている!


「クソッ! マジで火の海じゃねぇかよ!」

 悪態と共に玄関を閉めて引き返したカヅト。階段の上、ルリノが心配そうに様子をうかがっている。思ったほど取り乱してはいないようだ……まだ現状を満足に認識できていない、と言った方が正しいかも知れない。

「ど、どうなってるの……? これもラヴィが仕組んだことなの?」

「いや……これはたぶん、他のゲーマーの仕業だ。きっと……いや、まず間違いなく――」



「キヒッ! い~い眺めだなァ~こりゃ! キヒッヒヒヒ!!」



 カヅトの言葉を遮ったのは、耳障りな笑い声――外から聞こえたそれは、たしかに覚えのある声だった。と同時に、カヅトの予想が的中したことを示していた。


「No.5の仕業だ……!」

「No.5……って、カヅくんの家を燃やした放火魔の……!?」

 口元を覆うルリノ。すぐに首を横に振った。

「お、おかしいよ! こんなの……放火ってレベルを超えてるよぉ!」

「だったら、これはヤツにとって放火じゃないんだろ――っと!」

 カヅトは階段を駆け上がる……ほぼ同時、玄関ドアのガラスが炎に炙られ弾け飛んだ! 火の手はもうそこまで来ている!


「No.5は……街ごとプレイヤーたちを焼き払うつもりなんだよ!」


 カヅトはルリノの背中を押して部屋へと戻った。室温もグッと上がったように感じられる。窓の外はもう真っ赤!


「それとルリノ、放火なんかするヤツはもともとどっかおかしいと思うぞ」

「そ、そうかもしんないけど~! そんなこと言ってる場合じゃないよぉ~! このままだと私たち、焼け死んじゃうよ!?」

「それはないな」

「な、なんで~!?」

 狼狽しっぱなしのルリノに対し、カヅトはニヤリと微笑んでみせた。右手を宙にかざす――現れる蒼炎の剣! クルリひと振り! 部屋の中が青白く照らされた!


「俺がなんとかするからだ……!」


 キマった……! そりゃあもう、完璧に! 今のカヅトの姿は、パーカに重ね着した制服ブレザー――戦士と言うにはあまりにもお粗末すぎる装備だが……それでも、ことこの空間においてだけは、カヅトは確かに一人の戦士だった!


「かっ……カヅくぅん……!」

 ルリノの頬が朱に染まって見えるのは、きっと炎の照り返しだけが原因ではない……いいのか、それで。目の前でポーズをキメてるその男は……裸足だぞ。


 窓を開け放ったカヅト。外は一面、真っ赤に燃え上がっている……! まるで戦争映画のワンシーン! 空襲を受けたのかと見紛うほどの悲惨な風景である!


 パチパチと爆ぜる火の粉、ヒラヒラと舞う灰……押し寄せる熱波に目を細め、カヅトは窓枠に足を掛けた。屋根の上へと飛び降りる。正面に構えた剣。ゆっくりと周囲を見渡す……。


「さぁ……どこからでもかかってこい、ナンバーファイ――」

「おっ、ビンゴじゃ~ん!」


 No.5の声が聞こえた方向は――真上!? 慌てて振り返るカヅト……どこからでもとは言ったが、さすがにこれは予想外! 放火魔は偶然にも――必然にも、ルリノ宅の頂上を陣取っていたのだ!


 そして――



 パァンッ!!



 カヅトは振り向きざまにその音を聞いた。胸に走る衝撃……グニャリ、安定を失う足下。視界の隅、炎のように髪を逆立てたNo.5――ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべている。革のジャケットが翻り、割れた腹筋が見えた。こちらに向けられているのは、拳銃――銃口から煙を上げる、拳銃……。


 一瞬の浮遊感――その後。



 カヅトは屋根の上から炎の海へと、真っ逆さまに落ちた。



次回更新は8/3(土)予定!

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