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【HAPPY END】


 カヅトにとって、その告白はまさに青天の霹靂だった! ルリノに嫌われているとはさすがに思わなかったが……かといって、その好意が告白に至るほどのものだとは思いもしていなかったのである!


 加えて言えば、カヅトは恋愛感情というものさえRPGの中で満足させていた。あるいは、慰めていた。リアルの自分は選ばれた戦士ではないし、劇的にヒロインを救って恋に落ちたりもしない。それどころか旅をともにする仲間すらいない。そもそも旅をしていない……ただの平凡な16歳にとって、リアルにはあらゆるものが足りなかった。


 理想は幻想であり妄想であった。


 あえてその点だけに注目すれば、カヅトとルリノのスタンスは似ているのかも知れない。ただし、ルリノがゲームの中に求めたのは「恋愛」ただひとつである……カヅトとは違って。


 この差異がなにを意味するのか……もっとも、それをカヅトが知るのは、ずっとずっと先――すべてが手遅れになってからの話なのだが。




 閑話休題。今は告白の最中である。


「ぇ……ぁ、その……」

 完全に狼狽してしまったカヅト。こんな事態になるとはまったく予想していなかった……本当にまったく!


「カ、カヅくんは……私のこと、どう……思ってる……?」

「えっ!? お、俺!? いやっ……!」

「ふぇぇ……いやなんだ……。そう、だよね……私、ギャルゲーばっかりやってるしお節介だしわがままだし気が利かないしバカだしめんどくさい処j――」

「あ!? いy――ああっ!? いやじゃない! そうじゃない! ちがう! そうじゃなくって!」

 呪詛のようにネガティブを吐き出し始めたルリノ。その勘違いを慌てて訂正するカヅト。もはやどちらも混乱を極めている。一度冷静にならねば……カヅトは大きく深呼吸した。


「少し……答えは保留させてくれないか? 状況が状況だし、さ?」

 カヅトは伺いを立てた。彼とてルリノのことを嫌いかと問われれば、その答えはきっと「ノー」だろう。だが、好きかと問われれば、如何とも答えがたい。


 恋愛感情を伴った好意――カヅトがそれを覚えるには、リアルでの経験値が圧倒的に不足していた。要するに「好きかどうかよくわからない」から先延ばししたのである。稚拙と言えば稚拙だが……リアルを捨てきっていた彼に即答を要求するのはいささか酷だろう。利口ではないが、ベターな選択だった。


「……うん、待ってる……」

 瞳を潤ませたルリノは小さく頷いた。ぎゅっと布団を抱きしめて続ける。

「でも、これだけは覚えておいて。私はこの『ベリーハードモード』のクリアなんて、本当はどうでもいいの。私が欲しいのは【HAPPY END】――カヅくんとの【HAPPY END】、だよ」

「……わかった」


 それが本心であることは、これまでの彼女の行動を顧みれば明らかだった。どうしてカヅトに対してこれほどまでに献身的だったのか。カヅトに殺されることすら厭わない、その理由――すべては彼女の思い描く【HAPPY END】のためだ。そして、それが達成できないのであれば、他のことにはまったく、小指の爪の先ほども、微細微少微塵すら――自 身 の 生 存 に さ え 、 執 着 が な い 。


 裏を返せば、ルリノという女性は目的ただそれひとつのためにすべてを差し出せるということである。あらゆる行動に明確な基準が存在する……それがいかに驚異的なことか――脅威的なことか、カヅトはまだ理解していなかった。


 ぽてっとベッドへ倒れるルリノ。そしてふにゃふにゃと表情を緩めた。

「えへへ……なんか、気が抜けちゃったぁ……。嫌われたらどうしようって、本当はすっごい不安だったんだぁ……」

 幸せそうな微笑みを涙が伝っていた。


「好きって……やっと言えたよ、私……」






 ……



 …………



 ………………



 ……――時間は少し遡る。




 閑静な住宅街に、夜空を見上げるひとりの男の姿があった――駆け出し刑事・イサカである。


いつにもまして短い気がしますが、ご容赦くださいmm


次回更新は6/15(土)予定!

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