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naked heart


 どれほどの間、水音を聞いていただろうか。

「お風呂から上がったら、私の部屋に来て……?」

 その言葉を残して、磨りガラスからルリノの影が消える――返事をする間もなかった。




 シャワーを切り上げたカヅトは、あれこれと悩んだ挙句、用意されたパジャマには袖を通さなかった。制服の下に重ね着していたパーカとよれたスラックスを着直す。髪をしっかりと乾かしながら、カヅトは心の準備をした。


 いよいよルリノの能力ジャンルが明かされる――それは、うかがい知らない彼女の本性を垣間見る行為のように感じられた。あれだけ秘匿したがるのには、きっと理由があるはずだ。


 階段を上がった先、そこがルリノの部屋である。ドアにはファンシーなプレートが飾られている――カヅトは子供の頃に見た覚えがあった。この部屋に入ることになるのはいつ以来だろうか? 軽くノックすると、中からルリノの返事が返ってきた。

「どうぞ」


 カヅトはもう一度、自分の感覚を確かめる――右手を宙にかざすと、そこには剣の感触があった。武器をいつでも取り出せる用意をして、カヅトはドアを開ける。


「来たぞ、ルリノ」

 カヅトは何年かぶりにその部屋に入った。


 六畳半ほどの空間に、ぎっしりと詰められたファンシーな家具の数々――だからといって煩雑な印象は受けない。無駄なものが放置されていないからそう感じるのかもしれない。机の上はノートPCが置かれているだけで、小物の類はどこかに収納されている。本棚にはカーテンが掛けられていて、これまた整頓された雰囲気に一役買っていた。


 部屋の主であるルリノはというと、ふかふかのベッドの上にちょこんと座っていた。

「えへへ……カヅくんが私の部屋に来るのも、久しぶりな気がするね」

「そうだな」

 彼女も同じ事を考えていたらしい。カヅトは後ろ手にドアを閉めた。意識はあくまでルリノの方に向けたままだ。


「小学校の時以来かなぁ? あ、中学の時もちょっと来たっけ。高校に入ってからはないよね」

「……ルリノ」

 カヅトは少しだけ語気を強めて名前を呼んだ。昔話をするためにこの部屋を訪れたのではないのだ。ルリノもすぐに悟ったらしく、表情を固くした。


「うん……能力ジャンルのことだったね。けど、その前にどうしても……やっぱりカヅくんに私のこと、信用して欲しいの……」

 ベッドから立ち上がるルリノ。そして――カヅトの目の前で予想外の行動を起こした!



「んなっ!?」


 ルリノがパジャマのズボンを脱ぎだしたのだ!


 あらわになった太ももと、その付け根――恥部を隠すライムグリーンの下着。それだけに留まらず、ルリノは胸のボタンも外し始めた。パサリと床に落ちるパジャマ……次いで、ブラジャーも外された! いったいなにが始まるんです!?


「な、なにしてんだよ!?」

 カヅトは顔が熱くなるのを感じた――下世話な話だが、下半身にも。頭のどこかでは見てはいけないと思っているのだが、本能は正直だ。逸らしても、カヅトの視線はすぐに白い肌へと吸い寄せられてしまう。乳房を腕で隠したルリノも耳まで朱に染めていた。


「私、絶対にカヅくんを攻撃したりしない……ほら、なにも隠し持ってなんかないよ?」

 自身を抱くようにして、カヅトへと近づくルリノ。


「お願い、信じて……」

「く、来るなよ! なに考えてんだよおまえ!?」

「まだダメ……? ショーツも脱いだ方がいい?」

「そういう問題じゃない! もう……もうやめてくれよ……!」

 対するカヅトは、壁を伝うようにして部屋の隅へと逃げる。手には蒼炎の剣が出現していた。


「つらいんだよ、おまえのそういう献身的な態度が! そんなことしたって、俺はどうせルリノのことを信じられないんだ! どうせ誰も信じられない……信じちゃいけない! みんながみんなを疑う――これはそういうゲームなんだよ……っ!」


「それでも信じてほしいんだもん! 私、カヅくんにだったら……なにされてもいいんだよ……? 裸を見られてもいいし、触られても平気だし、そっ、それ以上のことだって……!」

 ルリノが羞恥に目を伏せる――その視線が蒼炎の剣に止まった。わずかに薄れる頬の赤み。ルリノがきつく目を閉じる。



「カ、カヅくんが、どうしても信じられないって言うなら……私のこと、殺しても……いいよ……?」



 その言葉を聞いた時、カヅトはルリノの柔肌を目前にしているにもかかわらず、一瞬で冷静さを取り戻した。

「おかしいだろ、おまえ……!」

 全身の血があっという間に熱を失ったような錯覚――あられもない姿の彼女に対し、畏れにも似た感情が湧き上がる。


「どうしてそんなことが言えるんだよ……どうしてそこまでできるんだよっ!? おかしいだろ!」

「おかしくなんかないよ……っ! カヅくんが信じてくれないなら、ホントにどうなったっていいって思えちゃうんだもん! だって私、私は――……!」


 一気に駆け寄ったルリノ――カヅトは剣を振るう余裕さえなかった。



次の更新は6/1(土)予定!

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