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訪問者


 ピンポーン――……ピンポーン――……


 二人は同時に固まり、玄関の方へと視線を向ける。連続的に鳴らされていたインターホンは、やがてノックの音に変わった。玄関のドア越しに高めの男声が響く。


「夜分遅くにすみません。警察の者です」


「けいさつ……!」

 いち早く行動を起こしたのはルリノだった。リビングへ駆け込み、勢いよくカーテンを引く。もしや、今までのやりとりは外から丸見えだったのでは……? そんな不安がカヅトの脳裏に浮かぶ。その間にもテキパキと動くルリノ。


「はーい、今開けまーす。ちょっとお待ちくださーい」

 玄関に向かって返事をしながら、ルリノは髪をグシャグシャと乱し始めた。突飛な行動に困惑するカヅトに対し、彼女は耳打ちする。

「ここは私がなんとかするから、カヅくんは奥の方に隠れてて……!」

「そ、そんな……そこにいるのは警察のフリしたNo.5かもしれないんだぞ……!」

「大丈夫……相手が警察でもNo.5でも、私はまだ部外者のはずだから……」

 ルリノはパジャマのボタンを1つ外し、胸元を少し開けた。覗いた白い肌にカヅトはドキッとしたものの、まったく意図がわからない。とりあえず彼女の指示通り、ダイニングへと身を隠すことにした。扉を閉め、壁に張り付いて息を潜める。

「なにがあっても絶対に出てきちゃダメだからね……?」

 玄関へと遠ざかっていくルリノの足音……カヅトは固唾を飲んだ。


 ガチャリ――玄関が開けられる。


「お待たせしました。ごめんなさい、ちょうどお風呂から上がったところで……」

「あっ、いや……こちらこそ、夜分遅くに、ええ……」

 しどろもどろな男の声。ルリノがわざと着衣を乱したのは時間稼ぎの口実と、出鼻を挫くための工作だったらしい。あの短時間でこの機転……聞き耳を立てるカヅトは素直に感心した。


「それで、ご用件は……昼間の火事のことですか?」

「えっと、はい。やはりご存知でしたか。あ、申し遅れました、自分は幽岐警察署のイサカと申します」

「……はい、たしかに。私、警察手帳って初めて見ました。カッコイイですね」

 本当にそう思っているかどうかは別として……ルリノは情報を伝えるためにそんな感想を述べたのだと、カヅトはすぐに理解した。どうやら玄関先のイサカという男は本物の警察のようだ。真意など知る由もないイサカは「はは、自分もそんなことを言われたのは初めてですよ」と笑っていた。


「率直にお聞きしますね。出火した民家の息子――カヅトくんの行方を知りませんか?」

 カヅトの心臓が跳ねた。思わず息を殺してしまう。

「う~ん……? 知らないですねぇ。あ、学校には来てませんでしたよ?」

「なるほど……連絡とかもないですか?」

「ないです。ご近所さんだし、心配だったんで一応私から電話とかメールしてみたんですけど、繋がらなくって」

「ふむふむ……どこかカヅトくんが行きそうな場所に心当たりは?」

「わからないです。そんなに親しくないんで」

「そうですか……」


 イサカがメモ帳を閉じる音が聞こえた。これで切り上げてくれるだろうか……? カヅトは強く願ったが、無情にも玄関先のやり取りは続く。

「ところでルリノさん……ご両親はまだご帰宅なさってないようですが?」

「えっ? ええ……共働きで、夜は遅いんです」

「そうなんですか? じゃあ――」



 リビングにいた若い男性は誰です?




次は5/11(土)更新予定!

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