初見ノーミス
『No.5とは既に接触済みのようですね。お察しのとおり、彼もゲーマーのひとりです。アナタを【GAME OVER】にするつもりだったのでしょう』
「ちょっ!? ルールも知らないうちにゲームオーバーになるところだったのか俺!? なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!」
『チュートリアルプレイです。ベリーハードモードなりの』
「操作説明で殺しにかかるんじゃねぇえええ! っていうか【GAME OVER】ってなんなんだよ!? 具体的にどうすればいいんだ?」
『それはジャンルによって違うことなので、一概にはお答えできません。試行錯誤なさってみては?』
「またハショりやがった!」
『ハショってません。これもゲーム性を保つための仕様でございます』
「……はぁ、もう、いいよ。わかったわかった……」
適当にあしらったカヅト。ふと、妙案が閃いた。それはこの奇天烈なゲームを一瞬で終わらせる、画期的な方法。
「なぁ、これってドロップアウトできるのか――……っ!?」
……地雷とは、どこにあるかわからないから地雷なのである。カヅトは何気なく言っただけだった……疑問に思ったから、口にしただけ。その言葉こそが、まさに地雷だったらしい! ラヴィの纏う空気が荒々しいものに変わったのだ……!
『……プレイヤー ・カヅト、それは自ら進んで【GAME OVER】になるということですか?』
「そう、だけど……?」
『それを理解した上で、今の発言をなされたのですか?』
「えっと……まぁ……」
途端、ラヴィの双眸が真紅に染まった! カヅトの肌を焦がす怒気! 暗闇が怯え慄く!
貴 様 そ れ で も ゲ + マ + か !
様 そ れ で も ゲ + マ + か !
そ れ で も ゲ + マ + か !
れ で も ゲ + マ + か !
で も ゲ + マ + か !
も ゲ + マ + か !
ゲ + マ + か !
+ マ + か !
マ + か !
+ か !
か !
気がつけば、カヅトは手元の剣を構えていた。本能が身を守ろうとしたらしい。ラヴィの放つそれは、もはや殺気に近い!
「いや、その、あれだって! どんな手段でもさ、とりあえず一考してみるのがゲーマーのサガってもんだろ?」
『……そういうことにしておきましょうか』
ラヴィの怒りが徐々におさまっていく。瞳がショッキングピンクに戻ったのを確認して、カヅトは密かに胸を撫で下ろした。
カヅトは今しがた入手した情報を整理することにした。要約すると、こういうことだ。
①カヅトのリアルは「奇天烈なゲーム」になり変わってしまったらしい。
②それも「ベリーハードモード」の。
③クリアしたあかつきには「理想の世界」がもらえるという。
④クリア条件は「自分以外のすべてのゲーマーを【GAME OVER】にすること」。
⑤カヅトを含め、ゲーマーには特殊な能力「ジャンル」が与えられている。
⑥「ドロップアウト」はできそうにない。
「……いやこれ、普通に考えて無理ゲーじゃね?」
『なぜです?』
「だってさ、初見でベリーハードモードクリアしろってことだろ? しかもノーミスで!」
『理解が早くて助かります』
「無理ゲーだぁあああ!!」
ラヴィは相変わらずニッコリと微笑むばかり。天使のような悪魔の微笑みだ。カヅトは頭を抱えるしかない。
「無理じゃないよ」
闇の中に声が響いた。カヅトのものでもなく、ラヴィのものでもない、三人目の声。カヅトは顔をあげ、そして絶句した。そこに立っていたのは――
「無理じゃないよ……カヅくんなら絶対にクリアできるよ」
ルリノだったのだ!