プロローグ
処女作です。
見苦しいところもあると思いますがよければ見て言ってください
静かな夜だった。
空には綺麗な曲線を描いた丸い月が昇っていた。
月は煌々と光を放ち、街を薄明るく照らしてくれている。
月の高さから推測すると、今は深夜の1時頃だろうか。
町には昼間の喧騒や活気はなく、その様子はまるで違う場所に来たかのように錯覚させる。
そんな中一人の少年の悲鳴が街の路地中に響き渡った。
少年は走っていた。
時折つまずき体勢を崩すが、持ち直してまた走り出す。少年は何かを恐れ、何かから逃げているようだ。
何なんだアレは!俺が何をしたっていうんだ!
少年の心の中では恐怖や疑問、そして驚愕が渦巻いていた。
少年は見てしまったのだ、人ならざるものを。
少年は小腹がすいたという事でコンビニへ夜食を買いに行っていた。
少年は好物のツナマヨおにぎりとスポーツドリンク、デザートのプリンを買って上機嫌のままコンビニを後にした。
家に少しでも早めに帰ろうと、迷路のように入り組んだ路地裏の細い道に入ろうとする。
しかし、余りにも暗い路地裏道に少年はビビる。
だが、妹のコークスクリューを喰らうよりマシだ、と思い少年は足を進めた。
そして数歩だけ歩くと、突然人間の悲鳴らしき声が聞こえた。
なんだ?と思いつつ少年は声のした方へと進んだ。
やめておけばよかったものを、恐怖よりも好奇心の勝っていた少年は臆することもなく歩き続けた。
そんな少年を止めるものは誰もいなかった。
角を三回ほど曲がったところで少年は二人の人間を見つけた。
二人は遠くから見ると抱き合っているように見えた。
ああ、愛し合っている最中でしたか、くそぅ羨ましいぜ、とバカな事を考えて二人を見ていた少年は人生の中でも最大級の後悔をすることになった。
何故悲鳴に興味が湧いてしまったのだろうかと。
二人の顔は暗闇でよく見えなかったが、明らかに一人がもう一人の方の首へと噛み付いている。
そして、噛み付いている人は人間じゃない事に気づく。
噛み付いている人は一見普通の人間に見えたが、数箇所人間にあってはならないものがあった。
鳥のような美しいものではない、蝙蝠のような、どこか悪魔を彷彿とさせる羽があった。
人間ではありえないほど尖った牙があった。
毒々しい、真っ赤な血で塗られたように赤く光る眼があった。
少年は恐怖で声も出なかった。少しでも早くその場から立ち去ろうとした。しかし、“それ”は少年を逃がすわけがなかった。
こちらに顔を向けてニヤリと笑い、静かに言い放った。
「見ちゃったね……」
そこまで大きな声でもないはずなのに不気味なほどしっかりと少年の耳に届いた。
殺される……っ!
本能的に悟った少年は踵を返して少年の出せる最大の速度で細い路地裏道を駆けていった。
そして、路地裏道から大きな道へと抜けだせるというところで背中に鋭い痛みが走った。
少年は細く鋭利なもので背中を突き刺されていた。
「え……?」
着ていた服が鋭利なものが突き出ている部分から真っ赤に染まっていく。
体の中に異物が入っている感覚は気持ち悪いものだった。
後ろを見る。
にっこりと微笑む少女の顔があった。
さっきは顔がよく見えなかったが、自分との顔が至近距離で、街灯が近くにあるため顔をよく見ることができた。
少年は、その少女から刺されているはずなのに、思わず少女のかわいさに見とれてしまった。
しかし、少女は可愛さとは裏腹にぐりぐりと鋭利なものを突き刺す。
「ぐあぁっ!」
少年は苦痛で顔を歪ませ呻き声をあげる。
「君、見ちゃったよね? 私の姿」
少女は確認をするかのように少年の耳横で囁く。その間も鋭利なもので突き刺すことを休めない。
少年の顔は苦痛で歪んでいるのに対し、突き刺している少女は全く笑顔を崩していない。
「なんで……、こんなこと……を?」
「なんでかって? それは生きるためだよ。生きるための食事をしていただけ」
少女は当たり前かのように人の首に噛み付くことを食事と言った。
「私、吸血鬼なの」
少年は自身でも驚くくらい少女の言う事を受け入れていた。
少年は刺されているというのに、あぁこれが悟りというものか、とバカなことを考えていた。
少年は少女の顔を見る。アイドル顔負けのかわいい顔立ち。
「人間じゃないなんてもったいねぇ。こんなにかわいいのにさ……」
「はぁ……?」
少女の気の抜けた声を聞くと同時に少年の意識は暗い暗い闇へと飲まれていった。
誤字脱字は教えてください。