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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
2章 惑星レクの騒乱

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エグザイル・カワハラ

 銀河帝国第四皇女エステ・ジーゲルは、自他ともに認める感情の薄い少女であるが、薄いだけであって、無というわけではない。

 ゆえに、人並みの感動を覚える瞬間は存在した。

 例えば、目の前でイラコがフルクロス・プレートを完食した瞬間。

 甘いものが好きな人物だとは思っていたが、暗殺拳まで駆使してこのデカ盛りを食べきるとは……!


 やはり、このチョイスに間違いはなかった。

 グッジョブだぞ、わたし。

 アロハシャツ姿でガッツポーズする黒髪天然パーマの青年が見せた甘味への執念に、心からの称賛を送る。

 そして、本日二度目の感動が――こちら。


「それでは、こちら、時間内完食景品のモモチヨフィギュアです!

 こういうの、ゾクっていうんですよね? パパに聞きました!

 すっごく、カッコイイです!」


 コラボ先ゲームにおける人気キャラクターのフィギュアを持ってきたウェイトレスさんが、エステから見ても魅力的な笑顔で告げる。

 彼女がトロフィーのように持っているのは、特攻服(トップク)と呼ばれる暴走族(ゾク)の戦闘服を着用した、深い剃り込み入りのパンチパーマが特徴な男のフィギュア……。

 このモモチヨというキャラは、『ニワトリ』のゲーム中でも、屈指の様子がおかしいポエマーであり、エステもイチ推しにしていた。


「おおー……。

 イイ……」


 本当によいものを手にした時、多くの言葉はいらない。

 ただ、感動のままそれを手に取り、様々な角度から鑑賞するだけだ。


「よかったな、エステ」


 特攻服を下から覗き込み、立体物の醍醐味を味わっていると、勝利の立役者……というよりほぼ単独の勝利者であるイラコが、やや脂ぎった顔でそう告げてくる。


「うん、すごく嬉しい。

 ありがとう」


「そうか、お前が喜んでくれて、俺も嬉しいよ」


「イ……お兄ちゃんも、いっぱいスイーツを食べれてよかった」


「え? あ? うん……。

 そっすね……」


 頬をかいたイラコが、何故か視線を逸らす。

 やはり、一定以上の年齢に達した男性にとって、甘いものを食べるというのは気恥ずかしいことなのだろう。

 これはまた、こういった機会を見つけて思う存分にスイーツを食べさせてあげなければならない。

 最大の特徴である黒髪天パも、スイーツのカロリーを吸収しているのか、不気味にうごめいているし!

 兄孝行だぞ……わたし!


「さておき、今のイ……お兄ちゃんは、心なしかボンヤリした顔になってる」


「あー……血糖値上がりまくってるからな。

 今は周囲の気配とか、ようさぐれんわ」


 血糖値スパイク中の脳でどうにか意識を維持しながら、イラコが答える。

 それはつまり、今、タイミングよく刺客に狙われたりしたら、いかにイラコといえど対処不能ということ……。

 まあ、そんなことはそうそうあるまい。

 わっはっはっは!


「エ……妹よ。

 コーヒー取ってきてくんない?」


「りょ」


 とりあえずエステは、コーヒーを所望する兄のためにドリンクバーへと向かうのであった。




--




「あれか……サングラスをかけているが、間違いない」


「ああ……あの縮れた黒髪は、この程度の変装じゃごまかせないさ」


「一緒にいる白ワンピースがまぶしい銀髪ツインテールの眼鏡っ子は、正体不明だがな……」


 古代、とある国においては、スパイのことを指して“草”と呼んでいたらしい。

 理由は単純。どこにでもいるから。

 ならば、観光客そのものといった格好でファミレスの駐車場に車を止め、窓ガラス越しに内部をうかがう彼らも生粋の――草。

 正体など、どうでもいい。

 有史以来最大の侵略性国家である銀河帝国には、敵対勢力など星々の数ほど存在するのだ。


 今、重要なのは、彼らが確かな情報を基に駆けつけたファミリーレストランで、変装した第四皇子イラコ・ジーゲルと謎の眼鏡っ子が、護衛もつけずくつろいでいるという事実。

 しかも、スクリュースピンペガサス狼牙キックで知られるイラコは、何やらグッタリとしていて隙だらけだ。

 ……殺れる。


「よし、窓から飛び込み、一気にケリをつけるぞ」


「ああ……おそらく一般人だろう眼鏡っ子や、他の客を傷つけないよう注意しないとな」


「死ぬのはクソ皇子だけで十分だ」


 リュックサックを開いたリーダーの言葉に、他の者たちがうなずく。

 リュックに入っているのは、当然――拳銃。

 どんなエースパイロットであっても、生身でいるところをパンパンされたら死ぬ。

 今日は、拳銃の力を思い知らせてやるんだから……!


「よし……いくぞ!」


 それぞれ、リュックサックから素早く拳銃を引き抜いて駆け出す。

 訓練された男たちにとって、ここから標的が見える窓ガラスまでは、数秒の距離。

 それを一気に駆け抜け――られない。


「――がなっ!?」


「――はっ!?」


「――ひびっ!?」


 ……木へと、横合いから叩きつけられたからである。


「「「――ぐはっ!?」」」


 街路樹へしたたかに背を打ち付け、アスファルトの路面へと三人仲良く転がる。

 拳銃は当然手から離れ、地面へと落ちていた。


「い、一体……」


 どうやら、他の二人は気を失ったようであり……。

 彼らをクッションとする形になったことで衝撃のやわらいだリーダーが、うつぶせに倒れながらも顔を上げる。


「くせえ……くせえなあ……てめえら。

 地元以外の臭いがプンプンしやがるぜ」


 ジャリリ……と。

 ビーチサンダルで砂利を弾きながら告げてきたのは、イノシシを連想させる男。

 中背で、ゆったりとした派手なシャツにハーフパンツ姿なこともあり、とかく横幅が大きく感じられる。

 顔つきは前述通りイノシシを連想させる粗野なもので、黒髪は後頭部のみが伸ばされ、毛先を脱色していた。


「き、貴様は……?」


「ああん?

 おれっちは地元大好きっ子エグザイル・カワハラ!

 悪いが、この惑星レクで友達(ダチ)の足を引っ張ったら殺すから、よろしくう!」


 ぐっと右手の親指を自身に向けながら、エグザイル・カワハラなる青年が威圧的に笑う。

 その腕は、あまりに太く――たくましい。

 しかも、肉体労働では決して身につかぬ殺気というものが、筋線維の一つ一つに宿っていた。

 明らかに、殺傷目的で鍛えた者の肉体。

 その戦闘力が自分たちをたやすく無力化できるものであることは、証明されたばかりだ。


友達(ダチ)……?

 ということは、イラコ皇子の知り合いか何かか……?」


「おお、まさにそれよ。

 イラコっちは、昔からイセタウンへ遊びに来ることが多くてな。

 ……と、あんまり個人情報を漏らすもんじゃねえか!」


 カッカと、豪快に笑うカワハラだ。

 なるほど、さすがはスクリュースピンペガサス狼牙キックのイラコ皇子。

 友人もまた、恐るべき使い手ということ。

 だが……。


「誤算だったな」


「おお、誤算だな?

 イラコ皇子を襲うつもりが、返り討ちに遭うなんてよ?」


「いや、誤算だと言ったのはそうじゃない」


 リーダーはそうつぶやきながら、ベルトのバックルを強く押した。

 それが――合図。

 近くの倉庫内で密かに組み立てられたドンナーへ、出撃を伝えたのだ。


 瞬時に伝わってくるのが、轟音。

 全長18メートル。

 黒と銀を基調にした塗装の人型は、ブラウン管テレビじみた頭部と、万力のようなマニピュレーターが特徴。

 帝国軍主力M2ドンナーが、折畳式の電磁ブレードを手にし、潜んでいた倉庫を内側から破壊したのだ。


「……こっちに、隠し玉がいたということさ」


 麻痺したように動かぬ体で、勝ち誇ってみせる。

 このエグザイル・カワハラが……あるいは、イラコがどれだけ強かろうとも、M2にはかなわぬ。

 余計な犠牲が出るかもしれないし、それは本意ではないが、イラコ殺しは確実に成るのだ。


「じゃあ、やっぱり誤算じゃねえか」


 だが、カワハラの表情は余裕に満ちたもの。


「隠し玉がいるのは、そっちだけじゃないんだぜ?

 ……アルファードの兄貴、頼んます!」


 カワハラはそう言い放つと、人差し指を天に向けたのである。

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― 新着の感想 ―
アルファードの兄貴はやっぱりアルファード(車)がトランスフォームしてすぐそこにいるんですよね
護衛「やっぱり刺客に狙われてたじゃないですかーー!(護衛として大失態だからマジで首が飛びそうで)やだーーー!!」
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