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光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


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天の霊刃

 魔力を注がれたからか、刀から脳内に響く声はより強くハッキリとして、ジャンヌの中にイメージとなって流れ込んできた。脳裏に浮かんだのは、この部屋で最初に見かけた美しい女性の姿だ。あの女性が、ハバキリと名乗る刀の偶像であるらしい。そうしたイメージの中で、ハバキリとジャンヌはピッタリと重なっていった。まるで、元から一人の人間であったかのように。


「ううぅ……はあああああっ!」


「なっ……そんな、バカな」


 ハバキリの刀身が赤く輝き、そこからいくつもの金色に輝く光の粒が表れては消えていく。ジャンヌの瞳をそのまま模したかのような美しい輝耀(きよう)に、アマラは圧倒的な力の差を感じて恐怖した。だが、アマラという存在は武器そのものである。武器とはつまり、敵を傷つけ、打ち倒して退けるものだ。そんな自分が敵を恐れることなどあってはならない。これから人間になろうといいながらも、彼女の武器としてのプライドが、ジャンヌとの力量差を感じつつも逃げる事を許さず、無謀な攻めに駆り立てた。


「たかが、人間ごときにっ!」


「すごいわ、動きが見える……いえ、解る。これならっ!」


 真っ直ぐに突進してくるアマラを迎え撃つべく、ジャンヌは横薙ぎの一閃を放つ。普通の人間ならば一刀両断されて終わるはずだが、アマラは右手を盾にして、ジャンヌの攻撃を防いでみせた。やはり、この腕や足には鋼鉄のような非常に硬いものが仕込まれているのだ。しかし、驚愕したのはその後である。


「なにっ?!」


 止められたのはほんの一瞬のことだけで、次の瞬間にはすんなりと抵抗なく()()()と刃が腕に入っていく。まるで、水を切っているような感触だ。ハバキリの切れ味はそれほどに常軌を逸していて、それを防いだと思い込んでいたアマラは初めて、恐怖に続いて驚きの表情を見せた。

 

「わ、私の腕がこうも簡単に!?う、嘘だ……!」

 

 (これは、なんだ?この感情……これが、恐怖?恐れている?こ、この私が!?……っ)


 アマラは咄嗟に突進する足を止め、強引に後ろへ跳んだ。その為に完全に右腕を切断されてしまったが、そうしなくてはそのまま腕ごと顔の鼻から上までを切り落とされていただろう。完全に無表情だったその顔は崩れ、一筋の汗が彼女の頬を伝い落ちていく。それすらも、人間ではないアマラには初めての経験だった。


「てっきり不死身なのかと思ってたけど、頭は守るのね。……安心したわ、それなら()()()()()()()()()()じゃない」


「き、貴様ぁっっ!!」


 ジャンヌの言葉は、解りやす過ぎる挑発だった。本来のアマラであれば、そんな言葉など冷静に受け流していただろう。だが、それは恐怖からか、或いはついさっきまで見下していたジャンヌからの挑発に煽られたのか、激昂したアマラは再びジャンヌに向かってきた。しかし、怒りに任せての突撃など、今のジャンヌに通用しないのは先刻の通りだ。ジャンヌは小さく息を吐き、努めて冷静にハバキリを正眼に構えた。そして、次の瞬間。


「せぇいっ!」


「なっ……!?」


 まだ刃も届かぬ距離がある内に、ジャンヌが思いきり上段から刀を振り下ろすと、その刀身から輝く一筋の閃光が放たれてアマラを切り裂いた。正しく、文字通りの一刀両断だ。その破壊力は凄まじく、閃光と破壊はアマラを斬っただけでなく館の天井や、後方の壁までも到達している。アマラは怒りに呑まれながらも、自分の身に何が起きたのか理解できず驚愕したまま目を見開き、その身体は崩れ落ちていった。


 ――お見事。まさか、いきなり天霊刃(てんりょうじん)まで放つとは思わなかったわ。……やっぱり貴女は私の使い手に相応しい。これからよろしくね、マスター。


「私が、マスターって……あなた、いった、い…………っ」


 言い終える前に、ジャンヌは意識を失ってその場に倒れた。どうやら、体内の魔力を大量に消費したことによる魔力切れを起こしたようだ。ジャンヌは魔法が使えない為、己の魔力を体外に放出した事がない。そんな経験不足故に、力の加減を誤ってしまったのだ。ハバキリを床に刺し、身体の支えにしようとしたジャンヌだったが、意識を失ってはどうする事も出来なかった。そのまま倒れ込む彼女の耳に、遠くからソロの自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。



 



 

「う、うぅ……………………ん、ん?なんか、重……え?きゃあっ!?な、何っ!?」

 

 ジャンヌが次に目を覚ました時、まず飛び込んできたのは真ん丸な瞳でこちらを見つめるアーデのドアップだった。どうやら、アーデは胸の上に座り込み、眠っているジャンヌの顔をじっと見つめていたらしい。見慣れているし、普段はかわいいと思っているアーデだが、流石に寝起きでいきなり目の前に大きな目があると驚くのも無理はない。ジャンヌは慌てて飛び起きてベッドの横に立つと、混乱した頭でキョロキョロと周囲に視線を走らせ、溜め息を吐いた。


「はぁ……ああ、ビックリした。もう!アーデ、驚かさないでよ。って、ここ……どこかしら?何で私、眠ってたの?」


「ホゥ」


 バサバサと羽ばたきながらゆっくりとベッドに降りたアーデは、悪びれもせずにちょこんと座って、ジャンヌを見つめている。その様子から、もう心配はいらないと解ったようだ。ジャンヌの抗議は気にも留めず、小さく一声鳴いてみせるとそれからややあってドアの外から慌ただしい足音が聞こえてきた。そして、足音の主は勢いよくドアを開けた。

 

「お姉ちゃん!目が覚めたの!?」


「サシャちゃん!?無事だったのね!よかった……!でも、どうしてここに?」


「どうして?ここ、私のお家だよ?」


「へ?あ、そう言えば……でも、いつの間に?」


「やっと起きたのか、ジャンヌ。全く、あんまり心配かけないでくれ」


「ソロ。え、ちょっと待って……一体、何がどうなってるの?」


 サシャの後を追うように部屋へ入って来たソロは、呆れたように溜息を吐いてベッド脇の椅子に腰を掛けた。そこから語られたのは、意外な顛末だった。ジャンヌが意識を失った直後、やはり、ソロもあの部屋へ入ってきたらしい。最後に声が聞こえたと思ったのは、気のせいではなかったのだ。そこで倒れ込むジャンヌを見つけて、ソロが慌てて介抱し連れて帰って来たのだという。

 実はジャンヌがアマラと戦っている間に、ソロは既にドゥガンを捕らえ、サシャの身柄を確保していた。ドゥガンを捕らえたと言っても、彼は何らかの病に侵されていたようで、ソロが踏み込んだ時には既に意識は無かったようである。仮にもし、アマラがジャンヌに勝っていたとしても、ドゥガンを助けることは出来なかっただろうから、結果は破綻していただろう。


「――そっか、私三日も寝込んでたのね」


「そういう事だ。君が寝ている間に、ドゥガンは街の憲兵に引き渡して無事に賞金も出たよ。そして、彼らが調査に踏み込んで解った事だが、屋敷の地下に何十人分もの遺体が放置されていたらしい。急いで身元の確認をしているみたいだが、その内の一部は行方不明になっている人達だったようだ。恐らくだが、詳しく調べればもっと増えるだろう。君の話を聞く限り、俺が外で倒した連中やサシャを連れ去った女を生み出すために、ドゥガンは何らかの儀式を行った……その犠牲だろうな」


「酷いわね……でも、本当にサシャちゃんが無事でよかった」


 一歩間違えばサシャも犠牲者の仲間入りをしていたのは明白で、ジャンヌはホッと胸をなでおろす。こうした血生臭い話は子供に聞かせるものではないからと、サシャ本人には席を外してもらっているが、先程までの自分を心配していたサシャの笑顔を思い出し、改めて助けられてよかったとジャンヌは思った。


「それで、ソロ。私の傍に刀が無かった?意識を失うまで、手に持っていたはずなんだけど」


「それなら、そこに立てかけてある。君が眠っていても中々手を離さないから苦労したぞ。……生きた剣(リビング・ソード)とは俄かには信じ難い話だがな」


 ソロが示した壁際には、刀身を白い布で包まれた一振りの刀が立てかけられていた。ジャンヌ自身、生きた剣(リビング・ソード)という存在そのものには未だ懐疑的な気持ちもあるが、ハバキリのお陰でアマラに勝利出来たのは間違いない事実だ。そうしてハバキリに視線を向けると、己の胸に例えようもない不思議な感覚が広がっていくのを、ジャンヌはしっかりと感じていた。

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