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光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~  作者: 世界


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謎のNeck達

 ジャンヌは近づいてくるアマラを迎え撃つため、立ち上がろうとしていた。しかし、折れているのは左腕だけではなく、肋骨もだった。その状態で立ち上がろうとしても、とても素早い動きにはならず、激しい痛みで顔を歪ませながら体を起こすのが精一杯だ。そうこうしているうちに、セミロングの金髪をなびかせたアマラはすぐ目の前まで来ていて、ジャンヌが身体を起こした所を見計らってか、そのがら空きの鳩尾に一発、爪先で蹴りを入れた。


「ぐはっ!?ぁっ、ぁ……ごふっ!」


「どこのネズミが入り込んだかと思えば、その顔……モンドの邪魔をしたMIRAですね?どうやってここを突き止めたのか解りませんが、あの少女を追って来ましたか」


 人体の急所である鳩尾への打撃を食らい、呼吸すらままならないジャンヌに対し、アマラは冷たい声で言い放った。折れた肋骨が内臓を傷つけたのか、ジャンヌは声にならない悲鳴を上げつつ、血反吐を吐いて壁際まで飛ばされてしまった。幸か不幸か数歩分の距離は空いたが、たったこれだけではとても状況を打開できる余裕は作れそうにない。アマラはそれを理解しているのだろう。ほとんど無表情なまま、苦痛に呻くジャンヌの声をその場で聞き入る余裕をみせている。


「もうすぐ目的が果たされる時だというのに、不粋な邪魔をしてくれましたね。あなたでは生贄になりそうにありませんが、()()は食前酒というものを嗜むのでしたね。ならばせめて、あなたの悲鳴を楽しむとしましょう」


「っ……!」


 自分を見下ろすアマラの視線を受けながら、壁にもたれかかったジャンヌは精一杯の強がりで笑った。今は、何としても時間が欲しい。そう考えているようだ。


「に、人間は、だなんて……まるであなたは、人間じゃないみたいなことを言う、のね……っ!」


「ええ、私は人間ではありませんよ。()()()()、ね」


「えっ……!?人間じゃ、ない?何を言って……」


「……ああ、あなたは何も知らずに乗り込んできたのですか。全く、人間というのは愚かで無計画な癖に信じられない結果を出すものですね。まぁ、いいでしょう。どうせ死にゆくあなたには関係のないことですが、教えて差し上げます。私はマスターの造りし、究極の剣、その一振りです」


「つ、剣?あなたが?どう見ても、人間じゃない」


「ふ、剣が剣という見た目のままでいるべきと考えるから愚かだというのです。真に優れた剣とは使い手に左右されず、主と定めた存在の為に、その力を自由に振るうべきだと思いませんか?それを成そうと考えたのがマスターなのですよ」

 

 ジャンヌは女の話す言葉の意味が全く解らなかった。相手が人の姿をしていて、同じ言語を使っているのに、それが理解できないというのはある種の恐怖すら覚えるものだ。そういう意味では、確かに目の前の女が人間ではないというのは理解出来るかもしれない。そんな取り留めもない事を考えながら、ジャンヌは粟立つ肌の感覚を必死に抑えようとしている。


「剣が……人の姿で勝手に動く?そんなの剣じゃないし、剣である必要もないでしょう。何を言っているのか、欠片も理解出来ないわ!」


「ふふっ、愚者というものはこれだから困りますね。マスターの崇高な理想を理解せずに、一方的に否定して喚きたてるばかり……そういう意味では、人間になるのは少しいただけないものを感じます」


「人間になるだなんてのも、ますます訳が分からないわよ!あなたは剣であることにプライドを持っていそうなのに、それを捨てるの!?」


「マスターがそう仰ったのです。一介の魔法生物であるこの私が、真に究極の剣となるには人間の心と体の全てを理解するしかないのだと。その為には人間になる他ないと、ね」


 そう言い放つアマラの表情は、常に一定で感情を全く感じさせないものだった。ジャンヌはその時、はっきりと理解出来た気がした。アマラの本質と、その狂気を。彼女はどこまでいっても武器なのだ。自らの意志を持っているとは言うが、彼女の考えはマスターと呼ぶ存在の意志をトレースしているだけだろう。その行いに善悪などなく、恐ろしいほどに実直だ。身を守る為の力か、或いは他者を傷つける為の力か、武器は常にその相反する側面を持っている。それをアマラは、何よりも正確に体現している気がした。







 その頃、屋敷の前では、ソロが打ち倒した人形達の欠片を調べていた。サシャの事も心配ではあるが、敵の正体や目的が解らなければ足元を掬われる可能性もある。万全な形でサシャを助ける為にも、敵の情報が少しでも欲しい、そう思ったようだ。

 ただし、アーデの流星のような光によって消し飛ばされた人形達の身体は、ほとんど原形をとどめていなかった。もう少し加減が必要だったかと、ソロは少し後悔している。


「くそ、もっと威力を弱めるべきだったな。どいつもこいつも、まともな形が残っていない……ん?これは」


 残骸の中でキラリと光るものを見つけたソロは、少し警戒しながらそれを手に取ってみた。光っていたのは、どうやら金属の欠片のようで、大体5cmくらいの大きさをした薄い板である。触ってみて気付いたのは、その金属はそれ自体がうっすらと魔力を宿していることだった。ソロの魔法で破壊された痕跡ではなく、自分のものではない誰かの力を感じる。気になって裏を見た時、そこには何か、文字のようなものが刻まれている事に気付いた。


「これはもしや、銘か?えぇと……ドゥ、ガ、ン……ドゥガン・ドーラット、か。待てよ?ドゥガン、どこかで聞いた名だな。あれは、確か」


 ソロは黙って額に手をやり、記憶の扉を開いていく。ソロは持ち前の強大な魔力とは別に、一つの特技を持っている。それは常人よりも記憶力に優れているということだ。完全記憶とまではいかないものの、脳内で記憶をファイリングして自由に思い出す事が出来る。主に、賞金首に関する情報をそうして覚えておくのに活用しているのだ。


「…………ドゥガン・ドーラット。そうだ、半年ほど前、師匠でこの国一番の刀工ソルガノを手にかけ、剣を一振り奪って逃げたと賞金が懸けられていた男。こいつはNeck(賞金首)だ」


 ソロが記憶の中から取り出したのは、まさに数か月前に一度見た手配書の情報だった。ドゥガンは、鍛冶師としてはそこそこ名の知れた人物だったらしい。手配書に合った通り、国一番の名工と謳われた刀鍛冶、ソルガノ・ステファンを師に持ち、その技術を継承したとして将来を有望視されている男だったようだ。しかし、ある時、ドゥガンは師ソルガノを斬り捨て、ソルガノの元から剣を一振り奪って逃亡した。彼に懸賞金を懸けたのはソルガノの遺族である。


 これだけ聞くと、ドゥガンとソルガノの不仲を疑われるだろうが、実際にはドゥガンはかねてからソルガノを心酔しており、とてもそんな事をするようには思えないと遺族は語っている。そして、ドゥガンが持ち逃げしたという剣も、ソルガノが倉庫の奥深くに仕舞い込んでいた古い物だったようだ。実は値打ちものなのでは?と噂されたが、生前のソルガノはそれを失敗作と語り、とても優れた作品とは思っていなかったようである。ただ、厳重に封がされていて、ソルガノ自身、それを恐れているような様子だったという。


「確か賞金額は10万ドルゴ……そう高い金額ではないとはいえ、それなりに多くのMIRAが奴を追っていたはず。にもかかわらず、半年もの間ドゥガンは行方を掴ませなかった。一介の鍛冶師に出来る芸当か?と思っていたが、ヤツは何らかの加護に目覚めたのか?それとも……」


 MIRA達による捜索は、決して甘いものではない。もちろん、安い賞金額のNeckを狙うのは一流とは言えないMIRAばかりだろうが、それでも半年間、捕まらないどころかその行方さえ掴ませなかったというのは簡単な事ではないはずだ。しかも、腕自慢の悪党ならともかく、ドゥガンはただの鍛冶師である。強力な加護でもない限り、それを成す事が可能だとは思えない。

 

 そして、気になるのはアマラの存在だ。ドゥガンは単独犯だったはずだが、サシャを連れ去った女は何者なのか?ソロには情報が少なすぎた。先程感じた嫌な予感が大きくなるのを感じ、ソロは屋敷に入ったジャンヌを追うのだった。

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