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異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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9 500年ぶりに朝が来る

500年ぶりの朝ーー普通に朝日は上り、みんなホッとしたような顔つきで城を行き来している。

わたしは、今日からこの城で仕事をするために、牢屋から待ち合わせの場所に急いで移動していた。


昨日渡された教会のシスターのようなワンピースはまさに一張羅。

牢を出る時には悲しいほどに、何の荷物もない。

お世話になりましたとばかりに、着ていたネグリジェをカゴに置くと、それは消えてなくなった。


朝が来て、昼が過ぎて、夜になる。


当たり前のことなんだけど、この世界では奇跡が起きたみたいなことなのよね?


「昨日真っ暗になって怖かったわ」

「やはりソラリクス様のいうとおり、きちんと昼がやってきたぞ」

「もう二度と太陽が昇らないのではないかと不安だったな」


そんな囁き声があちこちで聞こえてくる。

そして、わたしをチラ見することは忘れない。


「500年、昼しかないといえば、活動的で良さそうだけど私なら疲れてしまいそうだなあ」

思わず独り言を漏らし、周囲を見回す。

誰も聞いていないみたいでホッとする。

ちなみに、わたしの元いた世界は、今は朝かしら?


借金取りが部屋に訪れる姿を想像してぞっとする。

ゴミ屋敷の間は誰もこないだろうけど、片付けた今、それも時間の問題のはずだ。

戻れてもしばらく戻りたくない。


これはまさに神の采配!

拳をグッと握り、首を頷くように振る。


聖女だろうとトラップ仕立ての館の片付けだろうと、借金取りの対応よりはよっぽどマシだわ。圧倒的にね。


すれ違う人たちは、わたしをチラ見しても、決して声をかけてくるものはいない。

だが、昨日のように敵対心を見せてくる者もいなさそうだ。


ガルーダとフェニックスにもお礼が言いたかったんだけど、会えそうにないわね。

しかし...ソラリクスって??

あんなにいい加減で軽薄そうなのに、信頼が厚いわよね?


あんなにみんながシームルグだと騒いでいても、

「どこが?違うよ」

の一言でみんな目が覚めたように

「本当だ!違う」

ってなるのは相当なものよ。


ただ、なんか気持ち悪いというか?

これが思い込みの弊害なのか、これが神の力なのかわからないけど、ソラリクスが悪人だったらどうするの?


シームルグが、みんなに悪く思われるように仕向けたのもソラリクスなのかしら?

かつて愛した人であっても男女の仲が一度拗れたら、憎さ100倍になるっていうけど、神にも適用されるのね。

なんて、俗っぽい。

わたしの中でソラリクスは最低な男と認定されているので、少しシームルグに同情的になるし、疑問も湧く。


まあいいわ。

わたしはここの住人たちとうまくやっていかなきゃいけないんだし。


わたしは今日からこの世界で生まれ変わるのだ。

そういえばタダ働きなのかしら?


ふと大切な交渉をしていなかったことに気づく。

給与について聞いてなかった。

いや、そもそもこの世界に給料とかお金とかそういうものは存在するのかしら?

それも聞いてみないとね。

ワンピースも一張羅だし、制服支給がないと着る服もないし。

そのシームルグって人の館を手っ取り早く片付けたら、普通の一般市民のように街で働きたいものだわ。

シームルグではないということも神のお墨付きをいただいたことだし。


わたしは未来への期待がどんどん膨らんでいく。

だが、そこは異世界。

朝から、全てが違うようなのだ。


◇◇◇



挨拶は基本!

「おはようございます」

とにかく、すれ違う人たち全てに笑顔で挨拶をする。

それなのに、誰一人、怪訝な顔つきをするだけで返ってくる言葉もない。


一人ぐらい挨拶を返してきても良くない?


流石にわたしも不安になる。

待ち合わせは昨日ソラリクスから仕事を言い渡された場所だ。

朝の爽やかなキラキラとした夜露を浴びた植物がより緑を際立たせ、爽やかな少し涼しい風が吹いている。


「飛鳥様、お待たせしました。恐ろしい夜が無事に明けましたね。今日も夜がやってくるのでしょうか?」

「エーテリオンさん、おはようございます」

「おはよ...うとは?どういう意味でしょう?」

「え?こっちの世界では朝の挨拶とかないんですか?」


エーテリオンからも、朝から不安と疑問と戸惑いの声が上がる。

挨拶から驚かれるとは思わなかったわ。

目覚めてすっきり、おはようございます!じゃないの?


「飛鳥様の世界は夜があると言われてましたね。こちらには昼が終わるということがないのですよ。だから朝というものもないです。もちろん、光ばかり浴びては体に悪いというので、暗闇を私たちも、植物も、動物も、魔物もみんな自分たちで作っています。」


なるほど、無視していた人は私が何を言っているのか分からなかったわけか。


「聖女課に行って9時から18時までは、お仕事をしてください。ごはんは、二階の食堂で食べられます。朝昼晩のご飯はここでトレイを持ったら食事は出てきますので、食べ終わったら棚に返していただくだけで大丈夫です」

「食事つきですか!あの、あとここに体一つで移動してきたもので、身の回りのものやお金がないのですがどのようにしたらいいでしょうか?」

「それに関してはご安心ください。時渡りの者が来た時に備えてきちんと準備をしております。ここでの働き分のお給金も出ますし、休みの日にはここから下の街に移動もできますが当面足りないものがあれば、声をかけてください」


なんて至れり尽くせり!

だが、エーテリオンは少し顔を歪めながら、申し訳なさそうな声を出した。


「本当なら時渡りの人のための住居も提供するのです。ソラリクス様も、滅多に口を出す方ではないのですが、どんな方か心配しておりましたが、ただ絵のそっくりさんというだけで私も安心しております。それなのに、シームルグの館を時渡りの者に片付けさせるなんて。私たちも館には入ったことがないので、正直どんな不便があるか分からず心配しております」


エーテリオンさん、めちゃくちゃ良い人じゃない?

いや、ガルーダやフェニックスもだけど、基本的にみんないい人だ。

時渡りの人への期待値だとしたら何も返せるものがなくて申し訳ないけど。


そんな私の心はつゆとも知らず、エーテリオンは、私に城の中を案内していった。

彼の先祖は執政大総監のベンヌという、あの絵の中に描かれている一人だという。

「代々この国の執政官をしながらソラリクス様を支えるのが私たちの誇りなのです」

そう胸を張って嬉しそうに語るエーテリオンの姿を見ると、やっぱりソラリクスってみんなの憧れのような存在なのねと思うけど、それならもう少し威厳のある雰囲気でも良さそうな気がするけどなあ


あの言葉の軽さや思いつきの行動の数々を見ると、私はエーテリオンやガルーダ、フェニックスのようにソラリクスに憧れや忠誠を誓う臣下にはなれそうにない。


「ここが聖女課です。普段、聖女たちは兵の怪我を治したり、民の安寧のために祈りを捧げております」


重厚感たっぷりの木の扉の上に、聖女課と書いてある。

それぞれの扉にいろんな担当の部屋があるようだ。

聖女課は、救護室のような感じなのだろうか?


「兵の人たちは、そんなに怪我をするのですか?」


わたしは昨夜のことを思い出す。

わたしは誤解だったが、色んなあくどい人たちからこの街や城、そしてソラリクスを守っているのかもしれない。


だが、そう聞かれたエーテリオンは、言葉を濁す。


「兵たちも、よほどひどい怪我をすれば聖女の力を借りるでしょうが、城下にも治療をする者はいますしね。怪我をしたらの場合です。」

「なるほど」

つまりは、やらない。

だから、毎日、祈って過ごしているわけだ。

祈られることで、心の安寧が保たれるならそれも大切な仕事なんだろう。しらんけど。


わたしは、聖女課といわれるドアをノックして、エーテリオンと一緒に部屋に入るのだった。


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