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【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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57 おかえりシームルグ

それからまもなく城が見えてきた。


どうしよう。

月光神を名乗りたければ名乗ったらいいと言われたけど、飛鳥が消えるのは許さないと言われてしまった。

何も、相手が考えつかない。


だんだんみんなの顔が見えてくる。

ガルーダと、ソラリクスの姿が見えて、目に涙が滲む。

静かに、到着した兵が、ソラリクスの出迎えに、降りてすぐに膝をついていく。


私もそうした方がいいわよね。


だが、フェニックスにおろしてもらったが、足元からガクガクっと崩れて立ち上がることすら不可能だ。

ガルーダが目を見開き、私の元に来ようとしたが、ソラリクスがそれを手で制す。


静かに、まるで彫刻のように音もなく、ソラリクスは私の元に近づいてきた。


そーっとしゃがみ、私を抱き上げる。


「おかえり、シームルグ。」


そうはっきり、みんなに聞こえるようにソラリスクは叫んだ。


「月光神シームルグは、急に来た夜に困る人々のために、時渡り飛鳥の力を借りて、この世界を再び助けるために戻ってきた。よく聞け!心優しきシームルグは、この世界を助けられるものは自分しかいないと戻ってきたのだ」


みんながざわざわし始める。

フェニックスは、そのまま真っ直ぐソラリクスを見つめる。

私は、目を大きく見開いた。


「絵のシームルグは異なると言っただろう。この女性こそが、私の愛するシームルグだ。彼女が月光神シームルグ!

お前たち、シームルグの力を見ただろう」


ソラリクスがフェニックスを見やる。

「はい、ここにいる兵がみんな月光神シームルグ様に助けていただきました」


フェニックスは視線を逸らさない。

ソラリクスは頷いて、ガルーダを向いた。


「シームルグは、みんなから迫害を受けていた。そのため、聖女ピンキーを名乗ってまでみんなを助けるために力を出した。間違いないな」


その問いに、ガルーダも視線を逸らさず、大きな声で告げた。


「私も地の部隊も、ピンキーを名乗る月光神シームルグ様に助けていただきました。皆様の前で、そのことを報告できず申し訳ありません。私は時渡り飛鳥殿の体を使って、シームルグ様が復活されたことを知っておりましたが、空の部隊も助けたいと言うシームルグ様のために黙っておりました。」


ソラリクスは満足そうに頷き、私に微笑みかける。


「飛鳥にのりうつりつづけるには、体力がもう足りないのだろう。本来は、もっと力を持っているのだが...みんな、シームルグを休ませるから、これで失礼するよ。今後については、またガルーダ、フェニックス...話をしようじゃないか。いいね」


「はい」


フェニックスとガルーダが二人揃って返事をして、ソラリクスに頭を下げる。

そしてそのまま、私は退場となる。


えっ?えーっ!


私の悩みなんて神の元では小さな悩みに過ぎない。

まさかの飛鳥は残しつつの幽霊のシームルグ誕生という離れ技をソラリクス一人でやってのけた。

私は呆然として、ソラリクスを見る。


「いやぁ、フェニックスから連絡もらった時には肝が冷えたよ。こんな面白そうな計画、早く言ってよ」

ソラリクスは口をとんがらせて不満そうだ。


「何言ってるんですか。こっちは生きた心地がしませんでした。飛鳥を抹消する予定だったんですから」

私はぐったりする。


「今日はずっとシームルグに謝り倒していたよ。謝っても彼女の傷が消えることはないけどね。カラドリウスの嫌がらせから守りたい一心で、必死に否定したことが彼女の容姿や努力を否定していることになっているとは思わなかった。」


私は頷いた。

そして、悪気がなかったら余計に傷ついてしまった。

どんなに謝っても、シームルグの傷が消えることはない。


先ほど、ソラリクスが月光神シームルグを復活させてくれた。

だけどこれも、世の中にその功績が広がっていくのは時間がかかる。

神の力で、復活をさせることはできても、一度ついてしまったイメージは完全に払拭できない。

これから、彼女が作った薬や道具で多くの人が助けられるだろう。

そのことで、彼女に感謝する人も増えるだろうが、今までの聖女への想いを貫く人たちもいるだろう。


「君には感謝だよ。カラドリウスが作った世界に変化を起こし、本来あるべき世界を取り戻してくれた。完全に、この世界の蓋を取り除いてくれた。だからね。これから最後の種明かしをしようじゃないか。君が知りたかったことだ」


ソラリクスは、そういって私の顔を見ながら笑っている。


だがーーー


それは、以前指輪の話をした時と同じ冷たい表情で、笑っているようで笑っていない。

いつものソラリクスではない。神のソラリクスだ。


「最後の種明かし?」

私は、ひゅっと息をのんだ。

そういえば、私はどこに運ばれているのだろう。


「そうだ。絵に描かれたことは、歪み変えられた歴史だ。では、本当はどうだったのか?それを君に伝えないとね」

「本当はどうだったのか?」


私は、背中からつーっと汗が流れるのを感じる。

体の力も、手の力も、もう入らない。

周囲には誰もいない。

と言っても、助けを呼んだところで誰も来てはくれない。

私が動けたとしても、どこにも逃げ場はない。


ただ、ソラリクスとソラリクスに運ばれていく私が赤い絨毯の上を進んでいく。


そして、どのくらい歩いたのだろうか。

そこは、かつて私がやってきた場所である最後の晩餐のような絵が左右に飾られた絵画の間だった。


◆◆◆



「ここは、あの絵画の?」

「そうだ。全てはここから始まった」

ソラリクスは苦々しげに吐き捨てるような言い方をする。

もう、すでに穏やかな神ではなかった。


「飛鳥なの?ああ、無事で良かった」

全く同じ顔のシームルグが、その部屋から私の元に飛んでくる。私は、ここまでの不安と疲労がこの声でふっと抜けて、変わらないシームルグにホッとした。


「飛鳥、ごめんね。たくさん迷惑かけちゃった」

シームルグはポロポロ泣きながら私に飛びついてくる。

「ううん、結局、シームルグがすごいんだってうまく伝えられなかった。うまく力が発揮出来なかったの。でも、あなたの道具や薬で助けられた人は今回もたくさんいたのよ」

私も、シームルグと同じ顔で泣き続ける。


ソラリクスは静かにその床に私を降ろした。

私はまだ足に力が入らず、床からソラリクスを見上げるしない状態だ。


そこにーーー


「二人揃って同じ顔の人、しかも一人は幽霊となると、信じるなと言われても信じないわけにはいきませんよね。」


その声は......


パッと声の方に振り向くと、エーテリオンが近づいてきた。

シームルグも、少し硬い表情になる。


「さあ、役者が揃ったね。エーテリオン、例のものは持ってきてくれたかい?」

「はい、私の時代にこれを使うことになるとは思いませんでしたが。」

エーテリオンは木箱を手に持っていた。

「役者?なんのことなの?ねえ、ソラリクス様、種明かしって何なの?」


シームルグも状況がわかっていないようだ。

私は震えながら聞くと、ソラリスクもそれよりもかなり小さな箱をシームルグに差し出した。


「これから、500年前に何が起こったのか二人に話す。と言ってもわたしも思い出せないように記憶に蓋がされていたんだ。どうやら飛鳥がその最後の蓋を外してくれたようだ。

これはね、シームルグに贈るはずだったものだ。」 


ソラリクスが、小さな箱を開けると、ペアリングがあった。太陽と月がモチーフの彫りが入った美しいシルバーの指輪だ。

「これって」

わたしもそれを見て、言葉を失う。

シームルグも覗き込む。そして思わず口に手を当てて

「これは...」

とソラリクスを信じられないような目をして見つめる。


「いろんな悪意に気づかずに、渡すのに500年かかっちゃった。しかも、君の指にはもうつけてあげられない。」


ソラリクスは、悲しそうにその指輪を撫でた。


「時渡りは新しい概念を運んでくるんだけど、500年前のカラドリウスは概念だけではなかった。

彼女は、欲求がとても強い女性だった。承認される、権力を握る、愛情を受ける、賞賛されることだ。その欲求を満たすためには、どんな手段でも使うし悪意もあるんだ」


それには、すごく同意する。

彼女の作った聖女課は、まさに彼女の欲求の全てを示していた。


「その欲求で、君にこの指輪を贈ることもできなかった。

シームルグはカラドリウスにとって、その自分の欲求を全て持ったものに見えたんだろうね。

私が、どんなに君を庇っても、時渡りの力を使った攻撃を防ぐことは出来なかった。そしてエスカレートしていった。

君の容姿のこともその一つだ」


シームルグは、首を振りながら指輪を見つめた。


「容姿のことは、作り物でもいいからあなたの隣でみんなみたいに綺麗でいたかった私のせいよ。確かに指輪はもうつけられないけど、でもすごく嬉しいわ。毎日だって眺めていられるわ。そうね、あと500年見続けても飽きないわ」


そう言って嬉しそうにぷかりぷかり浮かせる。

それを見てソラリクスもうれしそうにする。


「私は、仮に世界の全てが敵になってもシームルグの唯一の味方でいたかった。だから、その証にその指輪を贈り、結婚しようと思った。指輪は、この絵を描いたアルコノスコに作ってもらったんだよ」


「でも私、あなたとカラドリウスが指輪を買っているところを見たのよ。あれはなんだったの?」


シームルグは自分の指輪を見ながら、ソラリクスに聞く。

ソラリクスは悲しそうに首を振った。


「ごめんね、つらい思いをさせた。あれは、ベンヌから恋人に贈る指輪を、カラドリウスと取りに行って欲しいって頼まれたんだ。変だと思えば良かったんだ。でも、私はベンヌを信用していたし、あの頃ベンヌは聖女課ができたばかりで仕事が増えて忙しかった。早く指輪を手にしてプロポーズしたいんだろうと思ってしまって、良かれと思ったんだ。」


ソラリクスが悔しそうにいう。


「当時は知らなかったが、ベンヌまですっかりカラドリウスのトリコだった。ベンヌはこの世界の中枢を担う一族だからね。そこを抑えられて、世界はカラドリウスを中心に回りはじめた。そこにシームルグが陥れられる仕組みがあるなんて気づかなかったんだ」




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