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【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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55 本当の顔

「シームルグ、行ってくるわね」

鏡の中に私と同じ顔をした人が二人いる。

「飛鳥、無理はしないで。ここで祈るわ。そして、ソラリクスとちゃんと決着をつけるわ」

シームルグと私はエアーハグをしてお互いの友情を認め合う。


あの日、指輪のことを聞いて以来、ソラリクスはこの屋敷に来ていない。

地雷を踏んでしまったのだろうか?

私ではなく、シームルグが聞くべきことだったのだろう。


玄関の扉を開けると、朝日が上がるところだった。

それをじっと見つめる。

わたしはそのまま、集合地点の城の入り口まで歩いて行った。


通りすがり、男女問わずいろんな人からの視線を感じる。

服が武具というのもあるかもしれないが、シームルグは美少女だ。なんの変哲もない平凡な私だからわかる。

彼女が、人から素敵に見られるように願ったのは、ソラリクスに可愛く見られたいという思いもあっただろうが、横に並ぶにふさわしい女性に見られたかったのだろう。


フェニックスの姿が見えると、フェニックスはすぐ膝をついた。鳳凰の準備が進んでいて、そばにはガルーダもいた。


ガルーダの目が見開かれる。

そりゃそうだろう。

シームルグの完全再現なんだから。


少しの間、いや本当に数秒見つめ合うと、ガルーダはその場に跪いた。

「ピンキー様、あなたの無事を心から祈っております。どうかご無事で」

そういい、私の服の裾に口づけを落とす。

周囲からざわめきが起きたが、ガルーダの目は揺るがなかった。


私は頷くが泣きそうになる。

これから飛鳥はいなくなるのだ。

私はこの任務が無事終了したら、このシームルグの顔で次の月光神を名乗るつもりだ。

そして、前のシームルグがいかに素晴らしいものをたくさん残していたのかをみんなに伝えるつもりなのだ。

以前みたいに、ガルーダと二人で楽しく買い物を楽しむことも、普通に食堂で一緒にご飯を食べることももう出来ない。


月光神になると言っていたことはガルーダには伝えていた。

だが、完全にわたしの顔をシームルグの顔にしてしまうとは思ってもなかったのだろう。

裏では今まで通り飛鳥として過ごせると思っていたのかもしれない。


でも、本当に私はこの世界から存在を消してしまうのだ。

ガルーダもそのことに気づいたのだろう。

私の服の裾に触れる手が震えていた。



フェニックスを一瞥すると、鳳凰のそばに行った。

一瞬、シームルグの顔だと思ったのか、キッとしたがすぐ私だと気づき、頭を擦り寄せてくる。

あれから毎夜、一緒に今日まで時を過ごし、鳳凰と仲良くしてきたのだ。

「鳳凰、お菓子準備してきたよ。お休み時間に食べようね」

そう小声で声をかけると、ますますぐりぐり甘えてくる。


フェニックスや他の兵は目を見開き、鳳凰の甘える様子を見ている。

私は声は出せない。フェニックスに静かに頭を下げて、祈りを捧げ、鳳凰の上に乗ろうとする。


その時ーーー


「どうして..」

ソラリクスが、呆然としている。

ソラリクス自体がこういう場に出てくることがまずない。

それだけにどよめきが走る。

「彼女から鳳凰の様子を見に行って欲しいと連絡が来ていたから来たんだが.....」


彼女とはシームルグのことだ。

シームルグは、私の顔を見て悟って欲しいと願ったのだ。

絵のシームルグと全く同じ顔の飛鳥が、シームルグと全く同じ顔をして現れる。

それは、少しの化粧ではここまでそっくりにさせることは不可能だ。骨格、顔の作りすべてが一緒でなければ......


ソラリクスの登場に急いでみんなが跪く。

私はその中で、ゆっくりソラリクスにむかって歩いて行った。


「ソラリクス様、彼女はあなたにきちんと話をしたいと言ってました。どうか、彼女を責めずに聞いてあげてください。あなたを騙そうと悪い気持ちを持っていたわけではないのです。」

私は、小さな声でそう告げた。

ソラリクスは、明らかに動揺している。

「わたしは......とんでもない過ちを彼女に...多く...傷つけてしまったのか?」


私は静かに頷いた。

この後は、シームルグとソラリクスがきちんと向き合うべきだ。


そばにいたガルーダもソラリクスのショックを受けた様子から悟ったのだろう。


化粧で顔を変えていると知らずにシームルグの顔を美しいと賞賛しながら、全く同じ素顔の飛鳥を平凡だと切り捨てていたソラリクス。

それは、シームルグを切り捨てていたことに他ならない。


「出発の時間です。ソラリクス様は私が彼女の元までお送りします」


ガルーダはそう私とソラリクスに声をかけ、私に頷いた。

私も、泣き笑いのような目で彼を見つめ、くるりと向きを変える。


再び、鳳凰に騎乗して、大きく息を吸う。

最後に、指を合わせて手を組む。

《どうかソラリクスとシームルグがお互い幸せになれますように》

私は心からそう祈る。そしてーーー


《ガルーダ、あなたもどうか幸せになってね》


心がチリチリと痛む。

ああそうか。

私はシームルグだけではなく、ガルーダとの日々も楽しくて、もっと一緒に過ごしたかったんだわと感じる。


ふわっと浮き上がり、大きく鳳凰が羽を広げる。

そして、空に一気にバッと飛び立つ。


キラキラと光を落とす鳳凰の羽ばたきは、その後、その下に過ごす人たちに感嘆の声を響かせたのだった。


◇◇◇


上空はかなり冷える。

正直、手はかじかむし、体も震える。

暖かさは鳳凰の羽から伝わる体温と、その私の後ろを支えるフェニックスだけだ。


空部隊はお互いが羽を持つもしくは魔道具で飛ぶ。

そのため、地の部隊とは異なり距離をあげて飛ぶ。

私は、風や音が自分のためにあるような密閉された空間にいるような気持ちだった。


「ピンキー様.....って言った方がいいのか?飛鳥?」

後ろから、その低いフェニックスの声にビクッとする。


えっ?私何かミスったかしら?まだ一言も発してない。

顔は、シームルグにそっくりにしたはずだし...


「なんで...?」

「なんでって、ガルーダのピンキー様と飛鳥を見る目が同じだ。責めるならガルーダを責めろ。あいつらしくもない。」


フェニックスがふーっとため息をつく声がした。


「なんか動揺したことでもあったんだろう。お前に縋るような目をしてた。時渡りで来た時にお前を見る目に、そんな様子なかったからな。変だと思ったんだよ。

その後、ピンキー様に助けられてからは、飛鳥にのめり込んでいくだろ。妙だと思ったんだよな。まあ、命を救われて恋に落ちたなら納得かな。」

「あ、あの。聖女を騙ってはいないわ。ソラリクス様からも許可を得ていることよ」


私は慌てた。

ここで、また前回と同じく聖女を騙るものは死刑なんて騒動になったら大変だ。


「大丈夫だ。騙されたなんて言わねえよ。ピンキーが飛鳥だったと気づいて、むしろホッとしたんだよ。鳳凰も懐いてくれて、今日まで生きた心地がしなかったんだから」


フェニックスは呟くように話を続けた。


「まさか聖女様があんな大変な人種だと思ってなかった。周囲から聞けば聞くほど俺が思っていた聖女様とは違うようだしな...

俺は、空には祈ってくれる聖女様がいないのが不憫だっただけだ。部下を安全に飛ばしてやれれば、聖女様にこだわってるわけじゃないってことに気づいたんだけど、来てもらうためにあんなに毎日聖女様と打ち合わしてたんじゃ本末転倒だ」


そう言いながら「はははっ」と笑い声を響かせる。

一方で私は頭の中がパニック状態だった。

この後月光神を名乗るのにどうしよう。

すでにフェニックスに飛鳥だとバレてしまった。


これからどうするのか考えないと......

ああ、何もいい案が浮かばない。

月光神ピンキーが現れて、飛鳥は元の世界に帰ったことにするつもりだったのに.....


とりあえず余計なことは極力言わないでおこう。

ふーっ、祈るポーズ、祈るポーズ!!


「これから、森林や川が続く地帯に入る。ここは、昼だけでなく暗闇で活動する魔獣も多いと言われているんだ。洞窟も多いし、暗闇でも生息できる空間が多いからな。」


私は頷いた。シームルグからも座学で、どんな魔獣が増える可能性があるか、その魔獣はどんな特性があるのか聞いて、薬も備えてきたのだ。


「あの森だ」


フェニックスが指差すその先は、森というよりジャングルのように木々が生い茂り、その間を長い川が流れている。

魔獣だろうか?水浴びをしている群れも見える。


「あの魔獣は草食でそんなに危険性もないし、増減は変わっていない。」


群れを見ている私に、フェニックスは声をかける。

そして、続けて兵たちに声をかけた。


「ここから下にある地下洞窟入り口に向けて、蛍光弾を撃て。その後は、みんなここから北に退避だ。魔獣の出現を確認する」


フェニックスの声に緊張が走る。

私は、ただ、無事に視察が終わるように祈るのみだ。


バシュ


光の球が森に向かって吸い込まれるように入っていくのと同時に、鳳凰が光を撒きながら猛スピードで北に飛ぼうとするが突如体制を崩す。


と同時に、背後に


ゴゴゴゴゴッ

ドーン

ダーン


という激しい地響きの音が聞こえ、


うわあああああああ


という兵たちの悲鳴が響いた。

思わず、その音の方を振り向いてしまう。


そこには空に向かって一直線に伸びる大きな大量の恐竜のようなモンスターの姿と、なぎ倒され乗っていた魔獣や魔道具から振り落とされ転落していく兵の姿が見えた。



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