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異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました  作者: かんあずき


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32 我儘だらけの聖女たち

「腰も落ち着いたから食堂に行ってもいいんだけど、周囲に聞かれたくない話のオンパレードでしょ。時渡り一人暮らしセットに即席グルメっていうのが入ってるのよ。よかったらここで食べない?」

「いいのか?」

ガルーダはやってきて、食事までもらっていいのかと迷っている。

「いいのよ。ほぼ食事は一人なのよ。聖女課の人たちって、食堂でご飯食べないのよね。で、この家はシームルグとシェアハウスしてるんだけど、あの子は食べられないし、たまには人と食べて話したいのよね」

「シームルグ殿とシェアハウス...まあそうなるのか?」


ガルーダは何か言いたげだが、

「ありがたくご馳走になる」

そういって、一緒に即席グルメを作り始めた。


「これは元の世界と少し作りが似ているわ。お湯をかけてレンジでチンするのね。冷凍とか冷蔵じゃないんだ」

「ああ、聖女様には出せないが、意外とうまいんだ。その柑橘魔豚丼がオススメだ」


パッケージからよくある日本のフリーズドライのようなものと丼が出てくる。これに湯をかけて、増やした状態でチンね。ええと、宣伝文句を読んでみよう。


「柑橘畑に巣を作っていた魔豚を仕止め、美味しく丼にしました。豚肉にほんのり柑橘の香りがしてさっぱり食べられます。」


おお、確かに美味しそう。

魚とか食肉に果物を食べさせるのは聞いたことがあるわ。

でも、んん??


「柑橘畑....日本のみかん畑みたいな感じのところに魔豚が巣を作る...んん?怖くない?迂闊にみかん狩りとか出来ないじゃん。」

「なんだそのみかん狩りって?」

ガルーダは怪訝な顔して聞いてくる。

「柑橘類の一種で、育った実をカットしてその場で食べるんだけど、そんなのないの?」

「あるわけがない。その柑橘類がなっている木も、歩きながら攻撃してくるんだ。実をとるのは命懸けだ」


なんてこった。

ほのぼのみかん狩りが流血みかん狩りになるじゃないか。

ガルーダの話に、「異世界怖いわ」とぶるっと震える。


だが、柑橘魔豚丼の豚肉は、しゃぶしゃぶのドレッシング和えのような感じでさっぱりと食べられる。

これがフリーズドライみたいにお湯をかけてチンで食べられるなんて夢のようだ。


「今日は乗り物酔いと罪悪感で何も食べられなかったの。でも、悩んでたって仕方ないわよね。ソラリクス様の判断を待つしかないんだから」


私は、温かいご飯が喉を通るたびに、この幸せが続きますようにと祈った。


「そもそもなんで聖女の役を押し付けられることになったんだ?」

「押し付けられたってどうして思うの?」

「冷静になれば、普段からあの聖女集団には苦労させられっぱなしだと気づいたんだ。」

ガルーダはとても嫌そうなものを見るような顔で、ゲンナリとした口調で話を続けた。

「今回の旅程は特に夜が来て初めての討伐な上に北で距離があったからな。飛鳥だって、あの馬車で酷い目にあっていただろう。聖女が行きたいわけがない。行かなくて済む可能性があるなら、聖女たちはそれを選ぶだろうな。」

ガルーダは豚丼を食べながら、私に聞いてくる。

なるほど...聖女ピンクの喚きっぷりは激しかったものね。

「押し付けられたというか、アクシデントがあってね...」

私はアイロン事件の話をする。

「ピンクの服を着た聖女の代わりだからピンキーか。なるほどな。しかし、間違いなく断言してやる。お前は押し付けられたんだ。」


ガルーダはそう言い切ったところで豚丼を完食する。

私もあと少しで食べ終わりそうだ。


「やっぱり押し付けられたのか。誰にも相談できないし、聖女たちが、祈祷も薬も効果ないから誰がやっても同じって認めちゃうとね。この国の人たち、みんな大丈夫なの?病気の人や怪我の人で治療を受けたい人はたくさんいると思うの。でも、聖女たちが効かないって思っていて、治す術がないのは怖いことよね」


私は病院があって、医者がいて、薬があるところにいた。

それでも治療薬、治療法がない病気はあって恐怖だった。

場合によっては、死を意味するのと一緒なんだもの。

それが常になんて、その絶望感は半端ないはずだわ。


「今までは、聖女たちがいうように、病気が治らないのも薬が効かないのも自分たちが聖女に対して信心が足りなかったからと思い込んでいた。だから、絶望というよりは自分が悪いと思い込んでいたんだよな。

でも、初めてその聖女に変化が訪れたんだ。これから聖女課にピンキーの要望は増えると思うぞ。」


ガルーダは、私の顔を見つめて断言した。

いやいや今日のことだってどうなるのかわからないのに、勘弁して!!

というか、その変化は、なんの力もない聖女シスターズにとっても地獄では?


「ダメよ!今日一回きりよ。だって、なんで回復させることや解毒ができたのか自分でもわからないし、薬はシームルグが作って持たせてくれたものなのよ。同じこともできるかどうかわからないし、シールドだってここの館に入るときに身を守るためにソラリクス様が私に取り付けてくれたシールドが発動しただけ。私が作り出したものですらないのよ」


まさかの再要請の話に、思いっきり首を振る。

そもそも、今回のことだって、まだソラリクスがどうするかわからないのだ。

毎回死刑のリスクの中で、偽聖女を演じるなんてないわ。

うん、絶対ない!


「ソラリクス様には聞いてみるが、飛鳥のことは他の誰にも言わなくていいと言われている。

家に行ってみろと言われて、飛鳥とも話ができて、人を騙そうと思っていた訳ではないことが理解できた。まずは、正直ほっとした。」


ガルーダは、ここにきてやっと微笑んだ。

うぉっ!ちょっと、ソラリクスもだけど、ガルーダも結構イケメンじゃない??

すごく笑顔が眩しいんだけど!!


鍛えているのか体つきもいいし...いや、ダメダメ。

顔の次に体を見るなんて、私ってば痴女じゃないの!


そんな私の心の動揺にはまったく気づかずガルーダは話を続けてくれたので、なぜかほっとする。


「あと、シームルグ殿と話をして、世紀の大悪女ではないことは分かった。なんであんなに大悪女だと思い込んだのだろうな?このことを報告してソラリクス様がどう判断するかだな」

「うん、そうだね。いよいよ、この館にシームルグがいることをソラリクス様は知るのね」


知ったらどうするのだろう?

それは不安としてある。

死んでるんだから、これ以上どうこうはソラリクスだって出来ないと思うけど......


「だが、今回のことはソラリクス様が良いと言っても、ソラリクス様が飛鳥を聖女課所属にさせ続ける限り同じことは起きるだろう。ピンキー派遣の要請をジズ聖女たちが断り続けることが出来ると思うか?」


ガルーダからの問いに「いいえ、ないわね」とがっくりする。むしろ、24時間行かせかねない。


「今日、一斉に全ての部隊に撤収命令をかけたんだ。聖女がごねても緊急で空間移動で帰れって伝えてな」


緊急空間移動で帰るジズたちが、何も言わずに素直に命令を聞くとは思えない。

散々悪態をついたところで、おだてられて従う感じだろうかる


「まずは3分の2、そもそも夕方までに、目的地についていない。」

「えっ!!そんなにみんな遠いところに行ったの?」

「そんなわけがない。今回俺たちのところが一番遠くて厳しい任務だ。」

「それはひどい!どれだけ休憩したらそうなるのよ?」


一番遠い私たちでも昼前には目的地に着いたわよ??

各駅停車しすぎでしょう。私は唖然とする。


「着いたものたちの半分は被害はなかったんだが、もう半分は、やはり普段と違う魔獣が出て怪我を負った者がいた。だが、聖女たちは遠く離れたところで休んでいるか踊っているだけだ。下手をすると疲れたと言って宿で休んで祈祷すらしなかった者もいるらしい。」


えーーっ!せめて、ダメでも止血とか消毒とかあるでしょうよ。踊ってたって治る訳ないって知ってて、あの血まみれの兵たちの前で踊れるのが怖すぎる。

私は、思わず目を見開き、その光景を想像してぶるりと震えた。


「飛鳥ならその反応になるよな。だが、目の前に血だらけの奴がいても、お前みたいに駆け寄ってきた聖女はゼロ。そんな環境でピンキーという見たことがない謎の聖女が、わがまま言わずに兵の命を救い守ってみろ。」


私はさーっと顔が青くなって、持っていた丼を思わず落としそうになる。

それは...予想したくないけど、予想できてしまったわ。


「依頼が殺到するってことね。ああ、私ジズや聖女シスターズに絶対怒られるわよね。バレたら死刑にされるかもしれないのに、目立った行動とった上に、これから兵たちが求める聖女像は、ピンキーってことよね」

私は不安気にガルーダを見つめた。


「とりあえず、できるだけ俺の団に入るか、祈祷が必要ないところに行くかだな。なんかヴェールとか危ういもんじゃなくて、顔をしっかり隠す方法はないのか??」


ガルーダにも聖女たちと同じ話をされるので、例の銀行強盗の姿のような帽子、メガネ、マスクの絵を描いてみる。

だが、ガルーダにも、大笑いをされて終わってしまうのだった






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