31 聖女を騙るは死罪?
ガルーダもフェニックスも、聖女に対して並々ならぬ敬意を持っていたはずだ。
その聖女を騙ったものを許せるのか?いやそれだけじゃない。私の処罰を代わりに背負うってどうして?
「当然だろう。飛鳥は、俺や俺の部下たちの命の恩人だ。俺たちは、君が何者であったとしても忠誠を誓うだろう」
ガルーダはなんのこともない顔で言う。
「いやいや、何考えてるの?聖女を騙る罪って重いのよね?」
「死刑だな」
「ひーーっ!あんたに代わりをされても、この世界でそんなの生きていけないわよ。気持ちだけいただいておく」
私はやっぱり死刑かあと、がっくり肩を落とした。
「ソラリクス様は、いろいろ何か思案しておられたが、別に怒ってもなかったぞ。むしろ変化が来たかも知れないと目を輝かせていた。ただ、夜の魔獣の活発化をどうするかと思っていたな」
「500年夜がなくても、夜行性の魔獣はちゃんと生存していたのね。ずっと昼が来ると思って昼行性の魔獣を減らしているから一時的にバランスが崩れちゃったのね。」
シームルグはそれを聞きながら一緒にうなっている。
「ごめん、二人がかつての任務や今の任務で生態系が気になるのはわかるわ。でも私に取ってはその生態系の崩れよりは、明日の命よ。ソラリクスが思案して怒ってなかったらなんとかなるの?死刑にならない??」
私は懇願するように二人を見ながら涙を浮かべる。
「世の中は、聖女を騙るなんてと死刑を求めるだろうな。」
さらっとガルーダは当然だろうと話す。
ひゅっ!!
私は血の気が引くような感覚を受け、思わず息をのんだ。
さらっと言わないでよ。死刑なんだよ。
ガルーダは、黙り込んだ私を見ながらふーっとため息をつく。
「ただし、ソラリクス様が、処刑しないといえば変えられる。飛鳥がここに来た時に、絵のシームルグと同じでみんながシームルグの生まれ変わりだろうから死刑だと騒いだことがあっただろう。あの時に、ソラリクス様がシームルグと無関係と言ったらみんな納得しただろう。ソラリクス様にはそういう決定をさせる力がある。今回も、むしろ想定していた言い方だったぞ」
「えーっ!私生まれ変わったら殺されるの!」
それをそばで聞いていたシームルグは驚いて叫ぶ。
「ひどくない?私、今の時代のあなたたちに何かしたかしら?ううん、500年前にもむしろカラドリウスにしてやられて、ソラリクスまで奪われたのに!!ひどいわ」
シームルグの髪が怒りで逆立ち、うっとガルーダが言い淀む。
「す、すまない。目の前にシームルグ殿がいるにも関わらず、どうしても同一人物とは思えずつい失礼をした。冷静に考えればそうなんだが、不思議と考えようという気すら起こることがなかったんだ。」
ガルーダはシームルグに頭を下げた。
「そして、飛鳥にもすまなかった。少し、意地悪をしすぎたか?目が腫れているようだし」
私はパンパンに腫れた目をハッと触る。
だめだ!泣いたせいで平凡からドブスになっている。
「今日はソラリクス様に飛鳥の刑をしないように話して、飛鳥との話は後日ゆっくりと思っていたんだ。でも冷静になってみたら、かなりショックを受けていたし、俺を避けて食堂に来られないんじゃないかと思ってな。お前、今日は全然何も飲んでなかったし、食べてなかっただろう。こうやって話になってしまったが、せめて、気にせず食べにくるように誘おうかと思ったんだ」
ガルーダは頭をかきながらそう私に伝えると、シームルグが突然キラキラした目でガルーダを見つめだす。
「やだっ!そうだったの!ガルーダってば優しいのね。飛鳥、私、おじゃま虫よね。いろいろ物申したいことはあるけど、後日ゆっくり言わせてもらうわ。」
そういって意味ありげにふふふと私に笑う。
「ゆっくりしてもらって。大丈夫、飛鳥の恋路の邪魔はしないわ!自分の部屋にいるから。あ、でも!ソラリクスが来たらちゃんと追い返してよね」
そう言ってバフンと消えてしまう。
え?恋路??恋路っていった?
ないないない!!
「シ、シームルグ...!誤解よ!!」
「シームルグ殿!誤解だ!」
そう声をかけたがもう周辺に姿は見えない。
そんなことを言われたら、私たち、もっと気まずいじゃないの。
シームルグは、恋する乙女すぎるわ
ガルーダはゴホンと咳払いをして話を続ける。
「あとは、今まで大聖女カラドリウスを含め、聖女に対して強い思い入れがあったんだが、なんか洗脳が解けたような、自分が聖女に対して敬う気持ちも、信じる気持ちもなかったことに気づいてしまったんだ。それをソラリクス様に正直に伝えた」
「えーっ!あんなにカラドリウスを敬愛していたじゃないの?洗脳って、どうしてそう思ったの」
まさかの発言だった。
今朝までは普通に、聖女の私に対しても丁寧に接していたはずだ。
「その発言は、敵に回す人が多くなる発言なのに大丈夫なの?しかも、ソラリクスは大聖女カラドリウスを愛していたんでしょう?ガルーダ、あなた大丈夫なの?」
ガルーダはサッパリした顔つきをしている。
まるで憑き物が取れたかのような表情だけど、そこまで恩人だとわたしに操を立てなくてもいいのよ。
ましてや、ソラリクスは、この世界を変えることが出来る神、ガルーダをどうにかしようとすることなんて簡単に出来てしまう立場なのよ。
私はこれからのガルーダのことを考えると心配でたまらなくなった。




